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2027年以降の実質年俸額は4000万ドル!マニー・マチャドとの契約延長に潜むパドレスの配慮と思惑

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
パドレスとの契約延長に合意したマニー・マチャド選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【マチャド選手の引き留めに成功したパドレス】

 今シーズン終了後にオプトアウト権を行使しFAになることを明らかにしていたマニー・マチャド選手がその考えを翻意し、11年総額3億5000万ドルでパドレスとの契約延長に合意した。

 現地時間の2月28日にパドレスから正式発表され、記者会見に臨んだマチャド選手は、「残りの野球人生でこのユニフォームを着続けることを光栄に思う」と話し、41歳で迎える2033年シーズンまで保証された大型契約に合意したことを喜んでいる。

 マチャド選手がオプトアウト権行使を明らかにして以来、ピーター・サイドラー・オーナーは同選手の残留を最優先事項とし、両者で取り決めていた契約交渉期限を過ぎても粘り強い交渉を続け、契約合意に持ち込むことに成功した。

【米メディアが報じていた希望額に届かない年俸総額】

 すでに本欄でも報告しているように、今回の年俸総額は契約延長に合意した選手としてマイク・トラウト選手(4億2650万ドル)、ムーキー・ベッツ選手(3億6500万ドル)に次ぐ大型契約であり、パドレスが十二分にマチャド選手を評価していた証といっていい。

 ただマチャド選手がオプトアウト権行使を明らかにしてから、一部メディアから「彼は今シーズン終了後に10年総額4億ドルの大型契約を狙っている」と報じられており、それが事実だとするならば今回の契約延長は契約期間では上回っているものの、年俸総額では希望額に達していないことになる。

 そこでAP通信が報じた契約内容の詳細を確認してみると、マチャド選手のプライドに配慮したパドレス側の気遣いを感じさせるものだった。

【契約交渉の焦点になったと考えるべきAAV4000万ドル】

 前述したマチャド選手の希望契約内容が報じられた際、個人的に納得させられるものがあった。

 というのも、今オフにアーロン・ジャッジ選手がヤンキースと9年総額3億6000万ドルの大型契約に合意し、野手として初めてAAV(いわゆる平均年俸額)4000万ドルに到達することになった。これによりMLBでは、トップ野手の新たな称号、ステータスとしてAAV4000万ドルが加わることになったのだ。

 元々マチャド選手は2018年オフの大物FA選手として10年総額3億ドルでパドレスと契約。当時としてはMLB史上初めて年俸総額3億ドルに到達した選手だった。

 その数週間後にブライス・ハーパー選手が、マチャド選手を上回る13年3億3300万ドルでフィリーズと契約合意しているが、AAVに関してはマチャド選手が優っていた。

 そしてパドレス加入後は期待通りの活躍を続け、今では絶対的なチームリーダーとして、悲願のワールドシリーズ制覇を目指すパドレスに必要不可欠なピースになっている。

 マチャド選手としてもそうした自負があるだけに、ジャッジ選手に近い評価を受けたいと考えるのは当然のことだと感じたためだ。

【契約金4500万ドルを加えた総額3億5000万ドル】

 そこで契約内容の詳細をチェックしてみると、今回の年俸総額3億5000万ドルは、契約金4500万ドルを加えたものだということが明らかになった。

 この契約金は一括支給されるものではなく、まず今シーズンに1000万ドルが支払われ、残り3500万ドルは2027年から2033年までの7年間で500万ドルずつに分けられ支給されることになっているようだ。

 また年俸額3億500万ドルに関しても、シーズンによって支払い額が変化しており、今シーズンから3年間は1300万ドルに止まり、2026年が2100万ドル、そして2027年から2033年までが3500万ドルとなっている。

 つまりマチャド選手が受け取る実質年俸額は、今シーズンが2300万ドルで、2024年と2025年が1300万ドル、2026年に2100万ドルに上がり、2027年から最終7年間は4000万ドルという計算になる。

 ジャッジ選手は9年契約なので2031年に契約が終了するが、マチャド選手は2033年まで4000万ドルを受け取れるのだ。ジャッジ選手のAAVに届いていないとはいえ、マチャド選手を納得させるには十分な契約内容だといっていいだろう。

【マチャド選手のAAVを抑えたのはソト選手と大谷選手のため?】

 この支払いシステムには、さらなるパドレスの思惑が隠れているように見える。

 結局ジャッジ選手に匹敵するようなAAVにしなかったのは、今後の戦力補強を見据え、ぜいたく税対象額を含めチーム年俸総額に余裕を持たせるための措置だと考えられる。

 すでに米メディアが指摘しているように、パドレスは2024年オフにFAになるフアン・ソト選手との契約延長を目指すとともに、今シーズン終了後にFAになる大谷翔平選手の獲得にも熱心だと言われている。

 彼らと契約を結ぶようなことになれば、今回のマチャド選手の契約内容並みかそれを上回る大型契約になるのは必至で、そのためにもマチャド選手のAAVをある程度抑えておく必要があったわけだ。

 とりあえずパドレスが今後もチーム強化に邁進していくことは間違いなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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