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金正恩の「財宝」を盗み続けた犯罪グループの残酷な末路

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

 北朝鮮において、金(ゴールド)の個人の所有は禁じられている。すべては国家の所有であり、つまりは独裁者である金正恩総書記とその一族の「財宝」も同然なのだ。

 横領が発覚すれば重罪に処せられるが、ましてや密輸などすれば、公開処刑を免れないほどだ。それでも、密輸に手を出す人が後を絶たない。リスクは高くとも、それを上回るリターンがあるからだ。

 金の密輸が発覚し、処刑を逃れるために脱北し、韓国まで逃げおおせる人もいる。

 北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)の大鳳(テボン)鉱山で採掘された金を密輸していた一団が摘発された。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

 両江道検察所は今月初め、大鳳鉱山から過去2年間で数十トンの金鉱石を手に入れ、金を抽出して密輸していた一団を逮捕した。検察所は、今回の事件の規模の大きさから、6人の検事を投入して、捜査を進めていた。

 逮捕者が何人かについて、情報筋は触れていないが、相当数に上るものと思われる。というのも、大鳳鉱山はその重要さから警備が極めて厳しいからだ。

 武装した保衛隊員が24時間体制で、坑道の入口で警備を行い、出入りするすべての人員と車両に対して事細かくチェックを行う。作業を終えて退勤する労働者に対しては、金の持ち出しを防ぐために、徹底的な身体検査も行う。さらに、安全員(警察官)、保衛員(秘密警察)も配置され、何重もの監視網が築き上げられている。

 それでも、少量の金を持ち出しては、業者に密売する労働者もいると情報筋は述べているが、これだけ大規模な密輸・密売は内外の協力者なくしては、なし得ないことだ。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

「今回の事件は、規模が大きいという点で、鉱山の幹部や裁判官が介入しているか、バックにいる可能性を排除できない」(情報筋)

 また、事件の摘発が、首都・平壌で10日に行われた非常防疫総和会議の前だったことから、既に逮捕された者、今後逮捕される者を含めて、関連者全員が重罰に処せられると情報筋は見ている。

 厳重な取り締まりにも関わらず、金の密輸は多発しており、先月にも摘発事例があった。

「現在、中国から入ってくるカネのほとんどは、金などの金属を密輸した代金だ」と情報筋は語っている。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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