貧困率は16.1%から15.6%へ改善 一方、悪化した数字も
貧困率は16.1%から15.6%へ改善 一方、悪化した数字も
さきほど(6月27日)、厚労省が2015年の国民生活基礎調査の結果を発表しました。
国民生活基礎調査は、貧困率(相対的貧困率)を出している調査として有名であり、いわゆる「日本は6人に1人が貧困」というのも、この調査をもとにしています。
さて、今回の調査結果をまとめると、貧困率は16.1%(2012年)から15.6%(2015年)へと若干減少しました。
子どもの貧困率は16.3%(2012年)から13.9%(2015年)へと、こちらは大きく減少しました。
ひとり親家庭の貧困率は、54.6%(2012年)から50.8%(2015年)と、こちらも減少しています。
2012年と比べて、貧困率、子どもの貧困率、ひとり親家庭の貧困率ともに、すべて減少していると言えます。
これは、歓迎すべきことですし、特に子どもの貧困率の減少幅は大きく、2013年に成立した「子どもの貧困対策の推進に関する法律」の成立が少なからず影響を与えているかもしれません。
貧困ライン=122万円
一方で、「貧困ライン(貧困線)」に関しては、122万円と2012年と2015年では、変化がありませんでした。
貧困率は貧困ライン以下の人の割合を指すものです。
※等価可処分所得は、収入から税金と社会保険料等を引いた可処分所得を世帯人数の平方根で割って算出する金額
たしかに、数字は改善していますが、生活が苦しい人は相変わらずたくさんこの日本に存在していることになります。
そして、貧困率は2010年時ですがOECD平均が11.3%ですので、ヨーロッパや北米等の先進諸国と比べても高い水準です。
中央値(日本社会の真ん中)は18年で43万円減
また、貧困ラインは等価可処分所得の中央値の半分という算出の仕方をします。ですので、貧困ラインの倍の金額が日本の中央値になります。
2012年の中央値は244万円、2015年は245万円でした。1万円増加したものの、果たして、生活に十分な金額と言えるでしょうか。そして、中央値の金額がこの水準であることに僕は初めて知った時に驚きました。
貧困ラインの年次推移を見てみると、1997年には149万円だったものが、2015年には122万円になっています。貧困ラインの倍の金額が中央値ですから、中央値をみると、1997年に298万円だったものが、2015年には245万円になったことがわかります。
この18年間に中央値が43万円下がっているということです。これは月に5万円弱。相当大きな数字であると言えるでしょう。
短期的には貧困率はやや改善しましたが、1990年代の後半から現在までに、所得の低い人たちが急速に増加していることがわかります。
「貯金がない」が14.9% 母子世帯は82.7%が「生活が苦しい」
同調査には、貯蓄額についての項目もあります。
2012年には全世帯のうち16%が「貯蓄がない」と回答していましたが、2015年には14.9%へと改善しました。一方で、母子世帯についてのみ見ると、2012年に「貯蓄がない」と答えたのは36.5%であったにも関わらず、2015年には37.6%へと増加しています。
貧困率等の数値ではやや改善しているものの、母子世帯など、むしろ悪化している数値があることは注意しなければなりません。
生活が「苦しい」と答えた人が56.5%いるというのも衝撃的な事実ですが、一方で、ここ数年の傾向でもあるのです。(母子世帯は82.7%が「生活が苦しい」と回答)
日本の貧困率は、若干の改善をしているとはいえるものの、母子世帯などではまだまだ厳しい状況であるほか、国際的な水準を考えても、まだまだ高い状況にあります。
そして、なにより、貧困ライン自体が122万円と、「相対的貧困」でありながらこの金額では生存が厳しい「絶対的貧困」に近づいていることも大きな問題です。
政府としての「本気」の貧困対策が必要
高齢化がすすみ、先日発表された日本総研のレポートによれば、2035年には高齢者世帯の27.8%にあたる562万世帯が経済的に困窮するか、その予備軍となってしまう恐れがあり、かつ、そのうち394万世帯は生活保護を利用する際の基準となる「最低生活費」より収入が低く、平均寿命に至る前で貯蓄が底をつくと言われています。
若干の改善で安心せず、そして、貧困状態の人への支援としての雇用施策、住宅政策等、より手厚い支援を考えていく必要があります。
子どもの貧困率が減少したことはよかったことですが、気を緩めずに「本気」で対策をしていく必要があります。