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ウクライナ空軍、ロシア軍によるイラン製神風ドローン奇襲24機を全て破壊・15機はキーウを襲撃

佐藤仁学術研究員・著述家
破壊されたイラン製軍事ドローン「シャハド136」(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

2022年10月にはロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃して、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物に攻撃を行っている。一般市民の犠牲者も出ている。11月に入ってからはイラン製軍事ドローンでの攻撃が激減したことから、英国国防省はイラン製軍事ドローンの在庫が枯渇したのではないかとの見解を示していた。

12月に入ってからはロシア軍はイラン製軍事ドローンで電力施設にも攻撃を行いオデーサ近郊の150万人以上の市民生活に打撃を与えていた。さらにクリスマスシーズンも年末も大晦日でもロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」を大量に投入してウクライナ全土に攻撃を行っている。1月の新年が明けてからも大量のイラン製の軍事ドローンによるウクライナへの攻撃は終わっていない。ウクライナ軍も迎撃を行っているが、ロシア軍のウクライナでの攻撃を支えている兵器の1つがイラン製軍事ドローンである。ロシア軍は毎日イラン製軍事ドローンでウクライナに攻撃を続けている。

そんななか、2023年1月26日の夜にはロシア軍が24機のイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」で奇襲を行っていたが、24機全てを迎撃して破壊したとウクライナ空軍が公式SNSで発表していた。またウクライナ軍によると、24機のうち15機が首都キーウに攻撃をしかけてきた。

▼ウクライナ空軍によるイラン製軍事ドローン24機全てを破壊したことの報告

▼ウクライナ軍による報告で24機のうち15機がキーウを襲撃していた

ロシア軍のイラン製軍事ドローンをめぐる動向

米国の国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバン氏は2022年7月11日にホワイトハウスの記者会見で、イラン政府がロシア軍に対してウクライナ紛争で使用するためのドローン数百機を提供する可能性があると語っていた。7月からロシア軍に攻撃ドローンの訓練も行っていた。米国のシンクタンクの戦争研究所は、イラン政府がロシア軍に対してイラン製の攻撃ドローン「シャハド129(Shahed129)」を46機提供しているとの調査結果を発表していた。米国CNNの報道によると、ロシア軍はイランでウクライナでの戦闘のために、イラン政府が提供した攻撃ドローンの操縦訓練を行っている。CNNによるとイラン製の攻撃ドローン「シャハド129」のほかにイラン製の監視・偵察ドローン「サーエゲ(Shahed Saegheh・Shahed191)」もロシア軍に提供されるということだった。つまり2022年7月からイラン政府がロシア軍に軍事ドローンの提供で協力していたと見られている。

ロシアのプーチン大統領は2022年7月19日にイランを訪問し、最高指導者ハメネイ師、ライシ大統領と会談していた。ハメネイ師はイランとロシアの中長期的な協力関係をプーチン大統領に呼び掛けていた。

2022年8月には米国国防総省のパット・ライダー報道官は「イランの飛行場からロシアに向けて軍事ドローンが輸送された。ロシア軍はイラン政府からイラン製の軍事ドローン数百機をこれから調達する予定。入手した情報によると、今回輸送されたイラン製の軍事ドローンはすでに多くの不具合(numerous failures)が生じている」と語っていた。

2022年9月からイラン製のドローン「シャハド136」と「マハジェル6(Mohajer6)」がウクライナでの攻撃に使用されるようになった。ロシア軍が以前に使っていたロシア製の軍事ドローンに代わって多くのイラン製ドローンで攻撃を行っており、ウクライナ軍によっても迎撃された写真や動画も公開されている。また2022年9月にウズベキスタンで開催されていた第22回上海協力機構首脳会談で、イランのライシ大統領とロシアのプーチン大統領は会談し、NATOの脅威は欧州だけでなく世界共通の脅威であると語っていた。

2022年7月にイランを訪問したプーチン大統領
2022年7月にイランを訪問したプーチン大統領写真:代表撮影/ロイター/アフロ

2022年9月の上海協力機構首脳会談でのイランのライシ大統領とロシアのプーチン大統領
2022年9月の上海協力機構首脳会談でのイランのライシ大統領とロシアのプーチン大統領写真:代表撮影/ロイター/アフロ

2022年10月にウクライナ軍は「ロシアにはまだ約300機のドローンが残っています。さらにロシア軍は数千機のドローンを購入する予定があります」と公式SNSで伝えていた。また、ロシア軍はウクライナ攻撃と欧州からの軍事支援阻止のためにキーウに近いベラルーシにもイラン製軍事ドローンを配置すると報じられていた。

そして2022年10月には首都キーウへの攻撃にイラン製の軍事ドローンが多く使用されていた。イラン製の軍事ドローンはロシア軍のウクライナ侵攻のために開発されたものではなく、イランにとっては敵国であるイスラエルを標的にして使用することを念頭に開発されたものだ。そのためロシア軍がウクライナで使用しているイラン製の軍事ドローンの攻撃力、破壊力についてはイスラエルのメディアも強い関心を示している。

同じく2022年10月には米国国務省の報道官のネッド・プライス氏が「イラン軍の兵士がロシア軍が支配しているウクライナのクリミアに入ってロシア軍に攻撃ドローンのトレーニングをしている」と記者会見で述べていた。だがイラン政府はロシア軍への攻撃ドローンの提供は否定していると報じられていた。

2022年11月5日にはイランの外務大臣のアブドラヒアン氏が、ロシア軍がウクライナに侵攻する数か月前にイラン政府はロシア軍に攻撃ドローンを提供していたことを初めて公式に認めたと国営イラン通信が報じていた。それに対してウクライナのゼレンスキー大統領は「イラン政府がロシア軍に少数しか提供していないはずはない。キーウにも大量の軍事ドローンでの攻撃がある。イラン政府はまだ嘘をついている」と批判していた。

2022年11月に入ってからもロシア軍はイラン製軍事ドローンでウクライナ軍や民間施設や社会インフラに攻撃を行っていた。米国メディアのワシントン・ポストが2022年11月に、イランの軍事ドローンをロシアで生産していくことに両国が合意したと報じていた。さらに2022年11月17日からイラン製軍事ドローンの使用が報告されていないことからイラン製軍事ドローンは枯渇したのではないかという予測を英国国防省が発表していた。2022年11月の英国メディア、ザ・ガーディアンの報道によると、ロシア兵に「シャハド136」の操縦方法を教えていたイラン人軍事顧問をウクライナのクリミアでウクライナ軍が10月に殺害した。

2022年12月になってからロシア軍ではイラン製の軍事ドローンによる攻撃を再開し、ウクライナの民間施設やエネルギー施設を攻撃しており、オデーサなど主要都市では電力供給が停止されてしまい150万人以上の市民生活にも大きな影響が出ている。また首都キーウにもイラン製軍事ドローンで襲撃をしている。そして12月17日に、ウクライナ国防省情報局のスポークスマンのアンドリ・ユソフ氏が、ロシア軍がイラン製軍事ドローンを追加で調達したことを地元メディアで伝えていた。12月20日には英国下院でウォレス国防大臣が「イランはロシアにとって最大の軍事支援者になっている。ロシア政府はイランから300機を超える神風ドローンの提供を受けた見返りに、ロシアは中東と国際社会の安全保障を損なう"高度な軍事部品"をイラン政府に提供する計画がある」と語っていた。12月に入ってからイラン製軍事ドローンによるウクライナ全土への攻撃が相次いでいる。

2023年1月にはウクライナ軍情報部が、ロシア軍は1750機のイラン製軍事ドローンを調達しており、そのうち約660機を既に使用しているとの見解を発表。

イランの兵器のほとんどは1979年まで続いた王政時代にアメリカから購入したもので、現在はアメリカとの関係悪化による制裁のためアメリカから購入できないので、特にドローン開発に注力している。イランの攻撃ドローンの開発力は優れており、敵国であるイスラエルへも飛行可能な長距離攻撃ドローンも開発しているので、イスラエルにとっても脅威である。イスラエルのガザ地区の攻撃の際にはパレスチナにドローンを提供してイスラエルを攻撃していたと報じられていた。またイランでは開発したドローンを披露するための大規模なデモンストレーションも行ってアピールもしていた。

ウクライナのインフラ施設などにイラン製ドローンで攻撃
ウクライナのインフラ施設などにイラン製ドローンで攻撃提供:Press service of the State Emergency Service of Ukraine/ロイター/アフロ

▼イラン製軍事ドローン「シャハド136」解説動画

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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