衛星画像で知るマウイ島の山火事--広範囲に焼失の痕跡が残る
米ハワイ州のマウイ島で現地時間の8月8日早朝から大規模な山火事が発生した。マウイ郡政府の発表によると、火災は中部の街プカラニに近いクラ地区で8日の未明に発生した。同じく8日の早朝6時半すぎ、ハワイの南側を通過していたハリケーン「ドーラ」の影響による強風にあおられて、西側の海岸沿いの街ラハイナでも火災が発生。午前中に鎮火したとされた火災は、午後になって再び発生した。中部の海岸沿いの街キヘイの付近でも8日中に火災が発生し、主に3カ所での大規模な山火事が重なって被害が大きくなった。確認された死者は日本時間8月14日の段階で96人となり、1959年にハワイ州となって以来、最も死者数の多い自然災害となっている。
暫定的な評価では、プカラニ周辺のクラ地区火災で約270ヘクタール、ラハイナ地区火災では約880ヘクタールとなっている。ラハイナの北側のカアナパリでも0.4ヘクタールの被害が報告されている。停電や断水、交通機関の運休など生活面への影響も大きい。
広範囲にわたる被害の全容を把握するには時期尚早ではあるものの、人工衛星を利用して、離れた場所から現地に負担をかけずに広域を安全に観測し被害を推定することができる。現地時間8月13日午前に観測された最新の衛星画像を元に、被害の規模を可視化する。
気象衛星が捉えた火災発生地点
画像はハワイ州現地時間の8月13日午前11時ごろ(日本時間8月14日午前6時ごろ)に欧州の地球観測衛星Sentinel-2(センチネル2)が撮影したマウイ島の画像に、NASAの火災情報システムFIRMS(北米速報版)の過去7日間の火災情報を重ねたもの。FIRMSは、米国の気象衛星が赤外線で観測した熱源情報を火災として報告している。画像では、気象衛星Suomi NPP、NOAA-20が観測した火災地点を表示している。2機の気象衛星は12時間ごとに観測し、375メートル四方のエリアに一定以上の大きな熱源があれば火災と判定する。条件が良い場合は最小で7、8メートル四方の火災を捉えられる。
FIRMSの火災データからは、火災が集中したエリアが把握できる。西側のラハイナ地区火災、中部のキヘイ地区の火災は集中しているが、中部の北東側アップカントリー地区の火災はプカラニに近いエリアとクラに近いエリアの2カ所に分かれているようだ。ハワイ州政府知事室の発表によれば、8月8日の最初の火災はアップカントリー地区のマウイ鳥類保護センター付近で発生したと見られるという。ハワイ州知事室はマウイ鳥類保護センターに設置されたカメラが撮影した8月7日深夜に森林の中で見える炎と、翌朝の消火活動の動画を公開している。人的被害に加え、自然保護区への影響も懸念される。
続く画像は、現地時間の8月8日午前11時頃にセンチネル2が撮影したプカラニ周辺の画像から、火災が起きていると見られる場所を強調表示したもの。赤外線を強く放射している場所を火災と推定している。グレーの斜線で囲った部分は、炎は上がっていないが焼失したと見られるエリアだ。この時間は、ラハイナ側の火災はいったん鎮火したとみられていた時間で、火の手は上がっていないことが推察される。
センチネル2による現地8月8日と13日午前の画像から、火災によって被害を受けたと推定されるエリアを面的に把握することができる。画像は近赤外と短波赤外の観測データを画像化したもので、黄土色のエリアは焼失が推定される部分だ。焼失したと見られるエリアは8日画像にはほとんどなく、13日になって広がっていることがうかがえる。FIRMS火災情報とも一致している。
キヘイ周辺の推定焼失エリア
ラハイナ周辺の推定焼失エリア
マウイ郡の発表では、8月13日午前の段階でアクティブな火災は見られないという。FIRMSの当日データとも一致しており、現在は延焼している段階ではないと考えられる。現地8月14日には、西側地区へのアクセスを住民や医療関係者などから優先的に許可していくという。