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<今さら人に聞けない>PS5 Proって ぶっちゃけどうなの?

河村鳴紘サブカル専門ライター
動画「PS5テクニカルプレゼンテーション」で公開された「PS5 Pro」

 ソニーの家庭用ゲーム機「PS5」(約8万円)が今月2日から値上げされ、さらに強化版の「PS5 Pro」(約12万円)が11月7日に発売されることが発表されました。4年前にPS5が約5万円(税抜き)だったことを考えると、その値段の変化に驚かされます。SNSでも大きな話題になり、私の元にも問い合わせがありました。そこでそれらの質問に答えてみます。

ーーPS5 Proをわざわざ出す意味はある? そもそもグラフィックがどのくらい進化したか分からない。

 公開されたPS5 ProとPS5の映像を比較しても、普通の人には差が分からない……というのは、その通りでしょう。従って「PS5でも十分」という考えも、もっともだと思います。皆さんが「高い」と思うように、関係者も「高い」と思っているのですから。

 ただしPS5 Proの性能について、ダメ出しをするような人は、ほぼいないでしょう。問題視しているのは、皆が一番敏感になっている価格設定で、日本の感覚からすると「ありえない」から。……とはいえどれだけ批判しても、すぐ価格は変わるわけではありません。結局、欲しくて買える人だけ買うと割り切るしかないでしょう。いずれにせよ、日本のコアユーザーのPS5に対するイメージがマイナスになっています。

ーーSIEは日本の企業なのだから、日本だけ特別に安くできない?

 同社のホームページにもありますが、SIEは米国、日本、英国以外にも世界に拠点のあるグローバル企業で、本社は米国です。今回の動画発表も英語でしたし、発表時間も米国合わせです。なぜ米国に合わせるのかといえば、米国が家庭用ゲーム機の主戦場で、権限が強いから。

 そして日本だけ特別扱い(安くする)と、その価格差を第三者に利用され、海外に流れてしまう可能性もあります。また日本以外からのゲームユーザーから批判が来るでしょう。世界的な商品になると「日本だけ特別扱いする」というのは、厳しいわけです。

ーー「ゲーミングPCを買う方が良い」という声は本当か?

 「ゲーミングPCが良い」という発言の本質は、PS5とPS5 Proの価格の高さに対する反発です。ゲーミングPCの方が良いかは、ゲームに対する考え方や好み、生活環境、経済力(可処分所得)などの条件で変わり、人によってケース・バイ・ケースです。PS5など高性能タイプの家庭用ゲーム機の利点は、同性能のゲーミングPCに比べて格段に安いこと、そしてPS5用ソフトの動作の方が圧倒的に安定していることです。

 PCはカスタマイズできる利点がありますが、トラブルを原則自分で解決しないといけません。スペックや仕組みをよく理解しないと、せっかく購入したソフトがうまく遊べないということも起こりえます。ゲーミングPCを選ぶのであれば、自分で勉強して試行錯誤をする、もしくは詳しい人に助言を受け、最後は自身の責任で判断しましょう。「12万円の予算でゲーミングPCを作ったけれど、性能が思ったものと全然違う」と後悔しないように願っています。

ーーPS5本体が買えないと、ソニーのソフトは遊べないのか。

 そんなことはありません。現在はPS5以外でも遊べる戦略を打ち出して、今後はマルチプラットフォームを推し進める流れにあります。今年からはPS5とPCで同時に発売をして、大ヒットを飛ばしたソフトもあります。

 また「LEGO Horizon Adventures」のように、タイトルによっては、ニンテンドースイッチに出す予定のものもあります。PS5を買わずともソニーのゲームソフトには触れられるものもあるわけです。

ーーPS5本体を安く手に入れる方法はない?

 中古での購入ですが、現時点ではそれほど価格は下がっていません。サポートの問題もありますし、自己責任で判断してください。買うにしてもネットより、店員の顔が見えて信用(実績)のある近所の店舗の方が、良いのはいうまでもありません。

 もう一つは「時期を待つ」という手段もあります。一部のシンクタンクによると、現在は円高基調ではあり、場合によっては1ドル120円の可能性に触れているものもあります。それが実現すれば、日本市場の値下げが期待できますが、不確定要因です。こちらも自身で判断するしかありません。

・急速に進む円安修正~今後のシナリオを展望する(ニッセイ基礎研究所)

ーー日本で12万円のゲーム機が売れるって、ソニーは本気で思っているの?

 もちろん売れるとは思ってないでしょう。今回の値上げ・価格設定は、外部要因であり、ソニーがコントロールできるものではないので、割り切っているのではないでしょうか。最大のターゲットは、ゲーム市場の主戦場である欧米です。PS5シリーズの売れ行きが欧米で伸び悩めば、何かの手を打つ必要はあると思います。

 いずれにせよ、円安の弱点を実感できたかと思います。ある意味、経済の勉強にはなったのではないでしょうか。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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