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妻に絶対に言えない秘密!~「認知したい子ども」はいますか?

竹内豊行政書士
生前に認知ができない人には、「遺言認知」という選択が残されています(写真:アフロ)

妻以外の間に子どもがいる

小原和也さん(67歳)は妻・江梨香さん(60歳)に絶対に言えない秘密を抱えています。実は、妻以外の女性との間に15歳になる男の子がいるのです。

その女性は妊娠がわかったときに「自分で育てるからなにもしてもらわなくていい」と言いました。子どもが生まれてから和也さんが援助を申し出ても「産むのを決めたのは私だから」といって頑なに断り続けました。

認知をしたいが妻にバレては困る

和也さんはせめて認知をしたいと思っています。認知をすれば法律上親子関係になるので死後に財産を残してあげることができるからです。しかし、認知をしてしまうと戸籍にその事実が載ってしまいます。そうなったら妻にバレてしまいます。

結局、認知しないまま死亡

和也さんは「責任を果たしたい」という気持ちと「今の生活を壊したくない」という気持ちの間でどうしたらいいのかわからなくなってしまいました。そうこうしているうちに、和也さんは不慮の事故で亡くなってしまいました。結局、和也さんは男の子に一切財産を残すことはできませんでした。

認知をすると戸籍に載る

婚姻関係にない男女の間に生まれた子(「婚外子」といいます)の父は、その子を認知することができます。そして、認知によって法律上の父子関係が生じ、相続権や扶養義務など法律上の親子としての権利義務が発生します。そして、認知した父と認知された子の両者の戸籍に、「認知をした・された」の事実が記載されます。

遺言で認知ができる

「生前に認知をしたことが表立っては困る」という方には、遺言で認知する方法があります(民法781条2項)。遺言による認知の効力は、遺言の効力発生と同時(つまり、遺言者の死亡の瞬間)に発生します。

民法781条(認知の方式)
認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
2 認知は、遺言によっても、することができる。

遺言の効力が発生したら、認知の届出を遺言執行者が任務に就いた日から10日以内に役所に対して行わなければなりません(戸籍法60条)。

戸籍法60条(認知)
認知をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 父が認知をする場合には、母の氏名及び本籍
二 死亡した子を認知する場合には、死亡の年月日並びにその直系卑属の氏名、出生の年月日及び本籍

そのため、遺言で認知をするには、遺言執行者を書いておいて、その人に遺言書を託しておくことを忘れてはなりません。

認知を遺言でするには

認知を遺言でしたい方のために、文例をご紹介しましょう。

第〇条 遺言者は、( 本籍 )・( 住所 )・(  氏名  )(  年 月 日生)を認知する。
2 遺言者は、遺言執行者として次の者を指定する。
     住所 (                        )
     職業 (           )
     氏名 (           )
     生年月日 (  年 月 日生)

死後も「いい人」であり続けるのは無理

なお、遺言で認知をすれば、生前に家族に婚外子の存在が発覚しないで済みますが、死後に家族は衝撃を受けることになります。死後にもいい人であり続けることは無理筋です。その点は覚悟しておいてください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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