新型肺炎ショックで中国の成長率は今年5.5%に減速 英シンクタンクが分析
[ロンドン発]新型コロナウイルスによる肺炎が中国を中心に死者563人、感染者2万7705人を出している問題で、イギリスの国立経済社会研究所(NIESR)は5日、中国の経済成長率は今年0.4%ポイント減速し、世界の成長率も0.1%ポイント押し下げるとの見方を示しました。
NIESRで世界マクロ経済を担当するバリー・ネスビッツ氏は2002~03年に中国南部を中心に大流行し、死者774人、感染者8096人を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)が中国や世界に与えた影響を参考に試算しました。
ネスビッツ氏は「SARSの大流行、特に2003年には消費が落ち込み、成長率を押し下げた。今回も人の移動、物流、ホテル、映画館の売上、小売を押し下げるだろう」と指摘。
「これは健康ショックであって経済的ショックではない。健康ショックが経済に与える影響を考えると、感染者の99%は中国に集中している」
「香港や韓国など中国に地理的に近い地域や国は直接の影響を受けるだろう。しかし感染の広がり、中国当局の封じ込めの効果が分からないので正確なところは分からない」
世界経済見通しは下のグラフの通りです。今年、中国の実質国内総生産(GDP)成長率は6%を割り込む(5.9%)と予想しています。
これに新型コロナウイルス・ショックが加わると、中国の成長率は5.5%、世界の成長率は3%に落ち込んでしまう恐れがあります。
しかし2002~03年当時に比べると中国の経済規模、人の移動量、サプライチェーンの広がりは比較にならないほど大きくなっています。中国は今や世界経済の中で支配的なプレーヤーです。
米紙ニューヨーク・タイムズから数字を拾ってみました。
・中国のGDPは1.7兆ドルから14兆ドル近くに
・国民1人当たりのGDPは1500ドルから9000ドルに
・世界貿易のシェアは5.3%から12.8%に
・米半導体メーカー、インテルの収入の28%は中国から
・移動体通信の設計開発会社クアルコムの収入の47%は中国から
・中国は世界経済の成長の約3分の1を占め、アメリカ、欧州、日本を合わせたより大きい
世界経済を定量分析するオックスフォード・エコノミクスは中国の成長率は昨年の6.1%から5.6%に落ち込み、世界の成長率も1.2%ポイント下がって2.3%になるとみています。
中国本土での事業の一時的な閉鎖を発表する国際企業が続出。米アップルは少なくとも9日まで中国本土の全ての小売店を閉じました。米スターバックスは中国本土の約2000の小売店を一時的に閉鎖。スウェーデンの家具量販店IKEA(イケア)も全小売店を一時閉鎖しました。
新型コロナウイルス肺炎の大流行が中国当局の“集団隔離”政策によっても鎮圧できない場合、アジア諸国の中国からのインバウンド観光は大打撃を受け、今年、東京五輪・パラリンピックを開催する日本への影響も避けられません。
(おわり)