学校図書館の図書購入費は横ばいなのに新聞の購読数は増え続けるわけ
学校図書館は「主体的・対話的で深い学び」をめざす2020年からの教育改革のなかで重要な役割を課されている。
各教科や総合的な学習の時間における調べ学習などで児童・生徒たちがそれぞれ自ら学び、アウトプットのための準備に必要な場として、ここ20年以上にわたって司書教諭・学校司書の配置のための法改正をはじめ、さまざまな整備がなされてきた。
学校図書館の図書購入費・雑誌購読・新聞購読の推移
ところが肝心の学校図書館の経費や図書購入費の推移を見ると、増えるどころか微減傾向の横ばいである。
少子化の影響やむなしということもあろうが、こうしたことから雑誌の購読割合や平均購読誌数も徐々に減少してきている。
ところが、学校図書館への新聞の整備はむしろ充実してきている。
国の学校図書館整備等5か年計画で学校図書館への新聞配備予算が措置されてから8年目に入り、9年前の調査から新聞購読の割合は小学校で20.3ポイント、中学校で18.8ポイント増加した。
金額で言うと、2017年度からの第五次学校図書館整備計画において、学校図書館への新聞配備に5か年で150億円の財政措置が図られている。
新聞は学力向上に資する。では雑誌は?
その背景は先に述べた教育改革があり、それと重なるが、例のPISA(OECDが行う学習到達度調査)の「読解力」スコア向上のためという目的もある。
たとえば朝日新聞は以下のような記事を書いている。
新聞を読む頻度と総合読解力の得点は、相関が強い。日本では、「読む」(月または週に数回)グループは531点なのに対し、「読まない」(「まったくか、ほとんどない」~「月に1回ぐらい」)グループは506点。25点もの差があった。
ただ、日本で新聞を「読む」と回答した生徒の割合は57・6%で、00年調査よりも12・3ポイントも減った。先進国・成績上位国17カ国の中でちょうど中間だった。(「朝日新聞」2010年12月8日「経験の活用、日本の宿題 OECD国際学習到達度調査」)
では雑誌はPISA型読解力に寄与しないという調査結果が出ているのか?
出ていない。
OECDが32カ国の15歳の子どもの読解力と「夢中度」に関する調査を行い、2002年に公表した結果(OECD PISA database,2001)によると、読書の夢中度が高くなるほど読解力の点数は上がる。逆もしかりで、夢中度が低いと読解力の点は下がる。
これはいわゆる書籍に限らず、マンガや新聞、雑誌を読んでいる子どもの読解力は、本(書籍)に次ぐ高さだという結果が出ている。
要は、楽しんで読んでいるかぎりは何を読んでいてもいい。
つまり、少なくとも日本の教育政策でも重視されているPISA型読解力向上という観点からすれば、読書推進活動において新聞を雑誌やマンガより優遇し、特権化する理由はない。
ないが、学校図書館の予算は増えず、雑誌は予算が削られ徐々に減り、しかし新聞は小中学校で劇的に配備されるようになっているのは、消費税の軽減税率同様、新聞業界によるロビイング(政・官への働きかけ)が成功したからである。
時代が求める能力に即した予算配分を
新聞以外で学校図書館関係の予算が増えているのは「図書以外の資料購入費」(電子器機や視聴覚資料など)くらいのものだ。これは「メディアセンターとしての学校図書館」という期待に応え、調べ学習のための多様な資料を用意するという潮流から必要とされていると理解できる。PISA2018で日本の子どものデジタルデバイスの使用能力に難があったために大幅に読解力のスコア・順位が下落したことを思えば、学校図書館もデジタル資料のハード・ソフトを充実させ、使いこなせるよう教育していくべきだろう。
もちろん、予算が潤沢にあれば新聞も雑誌も図書もそれ以外の資料も揃えればよい。なにより全体の額が増えるように出版界、教育界などが働きかけていくべきであることは間違いない。
ただ、この10年で小中高の平均蔵書冊数はろくに増えておらず、「学校図書館メディア基準」で設定されている最低基準冊数にすら小中では達していない(「学校図書館」2019.12,19p)。
しかも、調べ学習用の資料――当然ながら小説などの読み物と比べると高額である――すら十分に買えない、あるいはそれを買うと読み物が十分に買えない学校も少なくないし、学校司書の配備は一応進んだが非正規雇用・複数校兼務とせざるをえない自治体も多数ある。
そんななか、果たしてこういう予算配分が最適なのだろうか、と問いかけておきたい。