集英社の『週刊少年ジャンプ』に連載されている漫画「逃げ上手の若君」が２０２４年７月６日から、アニメとして放送されています。「逃げ上手の若君」の主人公は、南北朝時代の武将・北条時行（鎌倉幕府第１４代執権・北条高時の子。幼名は亀寿）です。同アニメの「ラスボス」とも言える存在が、鎌倉幕府の有力御家人でありながら、幕府に叛いた武将・足利尊氏です。尊氏は『太平記』（鎌倉末から南北朝時代の動乱を描いた軍記物語）によると、病中であり、なおかつ父・貞氏の喪中であるにもかかわらず、後醍醐天皇方の討伐のため、上洛を命じる幕府（北条高時）に「遺恨」を抱き、反逆の思いを抱いたとのこと。

　そうとは知らない高時は、有力御家人の工藤高景を遣わして「上洛の延引はならぬ」と何度も督促したといいます。尊氏は謀叛心を抱いていたので、敢えてその命令に逆らわず「即日、上洛致します」と返答したのでした。尊氏は「女性、幼い子息」まで残らず上洛させる積もりだとの噂が幕府に伝わります。

　北条得宗家の執事・長崎入道円喜はこの噂を訝しく感じ、主君・高時に「足利殿の子息と御台（正室・赤橋登子。北条守時の妹）を鎌倉に留め、尊氏には起請文（誓約書）を書かせるべきです」と提案。高時もそれに納得します。そして、尊氏に使者を派遣し、その件を伝えるのでした。その要求を聞いた尊氏は心中「鬱陶」（不快）の思いが充満したそうです。しかし、その憤りを表には出さず「やがてご返事申すべし」と言い、使者を返したといいます。怒りの感情を顔に出さなかった尊氏。やはり、なかなかの武将と言えるでしょう。