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新元号「令和」 欧米メディアは「日本の右傾化」を懸念

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
令和にはどんな意味が込められているのだろう?(写真:西村尚己/アフロ)

 新元号が「令和」に決まったことが発表された。

 しかし、新元号の決め方やその意味について、欧米のメディアの中には「日本の右傾化」と結びつけている記事も散見されたので、抜粋してみた。

英・デイリーテレグラフ

 明仁天皇の退位は、平和を成就するという意味を持つ30年間の平成という時代、つまり、バブル経済の崩壊や3.11の地震や津波、原子力危機が起きた時代に終止符を打つだろう。

 日本の新時代の元号を決めるのに、伝統を打ち破って、中国の書ではなく日本の書を使うという判断は、安倍保守政権の国粋主義的傾向と結びついているように見える。

 安倍政権では、中国との間に緊張が生まれ、領土争いをめぐる紛争がほとんど絶え間なくおきてきた。また、安倍首相は2020年までには日本の平和憲法を修正するという決意表明を頻繁にしてきた。

Japan chooses new imperial era of 'Reiwa' from Japanese rather than Chinese source for first time(日本、新天皇時代の令和を、初めて、中国の書からではなく日本の書から選ぶ)

英・インディペンデント

 安倍晋三タカ派政権は、新時代の名前を付ける義務があるが、中国の書に由来する名前は避けるのではないかと推測されていた。

Reiwa': Japan unveils name of new era as Emperor Naruhito ascends to the throne(日本、徳仁天皇の即位のため、新時代の名前を発表)

英・デイリーメール

 新元号の語源は、国家の威信の増強を狙う安倍首相の保守的アジェンダを映し出している。彼は、停滞している経済を復活させると公約して人気の波に乗ったが、団体の調和や日本の歴史や文化の誇りといった伝統的価値観の回復という保守的アジェンダも前から支持してきた。

 また、同紙は、上智大学の中野晃一教授の「安倍首相は、新元号で、日本はルーツや伝統を誇りにしてほしいと呼びかけている。彼は日本に誇りを持ってほしいんです。そして、新元号はそんな訴えをするいい機会だと考えたんでしょう」というコメントも紹介している。

Japan unveils the name of its new imperial era: Reiwa, meaning 'beautiful peace and harmony'(日本、新天皇時代の名前を発表 令和は美しい平和と調和を意味)

米・CNN

 テンプル大学アジア研究ディレクターのジェフ・キングストン氏のコメントを紹介。同氏は、CNNに、

「“多くの学者が、令和の意味や安倍首相の説明にすっきりしないものを感じている”と話している。新しい元号は、日本の政治の右傾化を映し出している。和という字は、徳仁皇太子の祖父、裕仁天皇時代の昭和の和と同じだが、その文字を選択したのは、安倍首相が、日本の戦争という過去について、ポジティブな論調を推し進めようとしているからだろう。これまで使われて来た中国の書ではなく、元号のインスピレーションを得るのに日本の書を選択したことは、明らかに、安倍首相の保守的政治基盤へのアピールだ

と話している。キングストン氏は、安倍首相の歴史修正主義を懸念しているかのようだ。

Reiwa': Japan announces dawn of a new era(令和:日本が新時代の夜明けを発表)

 安倍晋三首相は記者会見で、令和について、「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ意味が込められている」と説明したが、耳に心地よい美しい解釈の裏には、別の意味も込められているのだろうか?

 海外メディアは、令和が意味するところについて様々な解釈をしているが、筆者の元には、あるジャーナリストから、新元号について、「命令されることで和む日本人にふさわしい元号だ」という皮肉なメッセージも届いた。上からの命令には“イエス”と言って和を図ることで安心を得ようとする日本人だとでも言いたいのだろう。

 個人的には、令和という名前については「変わらない日本」を見た気がした。令を「秩序」、和を「調和」と解釈するなら、秩序も調和も、日本が昔から変わらずに重視し、世界からも評価されてきた日本人が誇るべき価値観だ。そこに、新しさや次世代感はあまり感じられない。

 あるいは、日本が誇りにしてきた価値観を、世界から秩序や調和が失われている今こそ、世界に広げていこうという願いが込められているのだろうか?

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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