「さっさと寝よう」戦争訓練を無視する北朝鮮国民
韓国の鬱陵島(ウルルンド)では今月2日午前9時前、空襲警報が発令された。北朝鮮が発射した弾道ミサイルが島の方向に飛来してきたとの判断からだが、韓国メディアは訓練と思い込み、住民の多くが避難しなかったと報じている。日本の内閣府の2017年の調査でも、Jアラート発令後に、対象地域の住民の8〜9割が避難しなかったことが明らかになっている。
そんな状況は、ミサイルを撃つ側の北朝鮮でも同じようだ。
デイリーNK内部情報筋によると、今月12日の18時、江原道(カンウォンド)の川内(チョンネ)郡、黄海南道(ファンヘナムド)の載寧(チェリョン)郡、黄海北道(ファンヘブクト)の沙里院(サリウォン)市、南浦(ナムポ)市の温泉(オンチョン)郡に空襲警報が鳴り響いた。これは、民間防衛部門の戦時戦闘準備状態を検閲(監査)せよとの指示に基づく抜き打ち訓練だった。
ところが、何も知らされていなかった各地域の住民は、5〜10分間鳴り響くサイレンに驚き、何が起きているのかわからず、慌ててウロウロするばかりだったという。
(参考記事:「米国には絶対に勝てない」言ってしまった北朝鮮元軍人の悲惨な運命)
訓練に関する報告書によると、空襲警報のサイレンが鳴動した後、第3放送(有線ラジオ)で「空襲警報です」との警告が発せられたが、各機関や企業所などの非常連絡網がまともに働かず、事前の通告もなかったため、何事もなかったかのように日常生活が続けられたという。
地域別の情報を見ると、川内では、第3放送で空襲警報が発せられた場合、自宅の照明を消し、30分以内に組織ごとに決められた区域に避難するようになっているが、住民はそうした手順が書かれた戦時退避案内書の存在すら知らず、通常通り自宅にとどまった。
また、載寧では、空襲警報発令後、一度防空壕や指定された区域に避難することとなっているが、発令1時間後に点呼を取ったところ、住民のわずか1割しか避難していなかったことが明らかになった。「避難せよ」との連絡は伝えられたが、9割の住民は玄関のドアを締め切って、「オンドル(床暖房)を温めて、避難せずにさっさと寝てしまった」(情報筋)とのことだ。
さらに、沙里院では、「何の話もなかったのに急にサイレンが鳴った」、「組織の布置(布告)なしに動けないのに、個人がどうやって動けるのか」など、指示がなかったことから動かないという受動的な態度を取ったという。
一方の温泉郡でも、サイレン鳴動と共に、住民が金日成主席と金正日総書記の肖像画を持って家の外には出たものの、誰に従うべきか、どこへ行くべきかわからず、1時間もの間、寒空に震えながら立ち尽くしたという。
報告書は、空襲警報と住民退避案内書の熟知が行き渡っていないとして、これら4つの地域に落第点を与えた。また、住民が警報の類に慣れきって安易な態度を取ったことは、関係当局が「全民武装化、全国要塞化」という朝鮮労働党の政策を唱えるばかりで、実践していなかったとして、今月末までに実態把握と集中指導に乗り出すことにしたという。
中央民防衛部は、各道、市、郡の民防衛部に、警報が鳴れば1時間以内にすべての照明を消して、家から避難し、防空壕や避難区域に集結する訓練を12月から実施すると通告し、各地域に民防衛部と住民を緊張させている。また「戦争は予告されない」として、いつどこにいてもサイレンが鳴ればすぐに動くように、住民と民防衛退院を徹底的に準備させるべきだと、地方の各単位に強く認識させるべきだと強調した。
北朝鮮国民が防空訓練に真面目に取り組まないのは今に始まったことではなく、以前から指摘されてきたが、一向に改められる兆しはないようだ。