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まるで真夏 厳しい暑さ継続と台風13号が夏台風のように西進して三連休の沖縄へ

饒村曜気象予報士
フィリピンの東にある台風13号の雲(9月12日15時)

危険な暑さと大気不安定

 令和6年(2024年)9月前半は、西日本から東日本の太平洋側は、太平洋に中心を持つ高気圧に覆われ、暖かくて湿った空気の流入が続いています(図1)。

図1 地上天気図(上段:左は9月11日9時、右は12日9時)と予想天気図(下段:左は13日9時の予想、右は14日9時の予想)
図1 地上天気図(上段:左は9月11日9時、右は12日9時)と予想天気図(下段:左は13日9時の予想、右は14日9時の予想)

 東北地方には前線が停滞し、この前線より北側の北海道や東北北部では、秋の気配がみられますが、前線の南側の西日本から東日本太平洋側では真夏が続いています。

 暖かくて湿った空気の流入は、日射によって熱中症になりやすい湿った暑さになりますが、同時に大気を不安定にさせますので、局地的に積乱雲が発達し、落雷や局地的豪雨がセットで続いています。

記録的暑さの昨年を上回る熱中症警戒アラート

 9月12日に全国で一番気温が高かったのは、京都府・園部の37.8度、次いで大分県・日田の37.4度と、7月末から8月のように、40度前後までは上昇していません。

 とはいえ、9月としては気温の高い日が続いており、9月12日に最高気温が35度以上の猛暑日を観測したのは119地点(気温を観測している全国914地点の約13パーセント)もありました(図2)。

図2 猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(9月13日以降は予想)
図2 猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(9月13日以降は予想)

 また、最高気温が30度以上の真夏日は632地点(約69パーセント)、25度以上の夏日は838地点(約92パーセント)もあり、まだまだ夏が続いている地点が多く残っています。

 気温が高いだけでなく、湿度も高いことから、熱中症になりやすい状態が広い範囲で、記録的に長く続いています。

 気象庁と環境省は共同で、全国58地域(都府県毎、ただし北海道・鹿児島県・沖縄県は細分)に対して熱中症警戒アラートを発表しています。

 9月13日も千葉県と西日本の11地域に対して発表されました(図3)。

図3 熱中症警戒アラートの発表状況(9月13日)
図3 熱中症警戒アラートの発表状況(9月13日)

 熱中症警戒アラートが発表となっている地域は勿論、発表がない地域でも、暑さ指数が31以上の「危険」となる地域が西日本から富山県・福島県まで広がっています。

 暑さ指数31以上のところは、高齢者においては安静状態でも熱中症が発生する危険性が高い地域です。外出はなるべく避け、室内の涼しい所に移動してください。

 熱中症警戒アラートの発表回数は、9月13日までで、のべ1596地域と、早くも記録的な暑さだった昨年を30パーセント以上も上回っています(図4)。

図4 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)
図4 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)

 例年であれば、9月に入ると、熱中症警戒アラートの発表は殆どなくなります。

 記録的な暑さだった昨年もそうでした。

 しかし、今年は、9月に入っても熱中症警戒アラートの発表が続いています。

 それだけ、今年は、熱中症になりやすい湿った暑さの日が多く、しかも長く続いているといえるでしょう。

 ただ、来週になれば、熱中症になりやすい危険な暑さは収まると思われますが、そのきっかけとなるのが、日本の南海上を北西進している台風13号です。

台風13号の北西進

 令和6年(2024年)は、台風の発生が遅く、第1号がフィリピン近海で発生したのは、5月26日でした。

 台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降、台風1号が一番遅く発生したのは、平成10年(1998年)の7月9日で、令和6年(2024年)は、史上7番目の遅さということになります。

 強いエルニーニョ現象が終息した年は、台風1号の発生が遅いという傾向がありますが、今年、令和6年(2024年)も非常に強いエルニーニョ現象が終息した年です。

 そして、5月31日には、南シナ海で台風2号が発生したのですが、その後は、約2か月にわたって台風の発生がありませんでした。

 台風3号が発生したのは7月20日で、フィリピンの東海上でした。翌21日には南シナ海で台風4号が発生しました。

 7月も平年に比べて台風発生数が少なかったのですが、8月は平年並みの6個発生し、9月1日21時に台風11号がフィリピンの東で、9月5日15時に日本の東で台風12号が発生しました。

 そして、9月10日21日にマリアナ諸島で台風13号が発生しました。

 この台風13号は、西日本から東日本太平洋側に猛暑をもたらしている高気圧に北上を妨げられ、北西進しながら発達して南西諸島に接近する見込みです(図5)。

図5 台風13号の進路予報と海面水温(9月13日0時)
図5 台風13号の進路予報と海面水温(9月13日0時)

 台風が発達する目安の海面水温は27度以上ですが、台風13号が進むとされる海域は29度以上もありますので、台風13号は発達しながら北西進する見込みです。

 台風13号は、三連休の14日(土)から15日(日)にかけて、強い勢力で沖縄地方と奄美地方に接近する見込みです。沖縄地方と奄美地方では、猛烈な風が吹き、猛烈なしけとなる所がありますので、暴風や高波に厳重に警戒してください。

 気象庁は暴風域に入る確率を、3時間ごとに予想していますが、これを見ると、台風13号が最も接近する時刻がわかります。

図6 暴風域に入る確率(上から、沖縄県・南大東村、鹿児島県・奄美市、沖縄県・名瀬市)
図6 暴風域に入る確率(上から、沖縄県・南大東村、鹿児島県・奄美市、沖縄県・名瀬市)

 例えば、沖縄県南大東島の南大東村で、一番確率が高いのは9月14日昼前(9時から12時)ですので、この頃に台風13号が最も接近すると考えられます。

 また、鹿児島県奄美大島の奄美市や沖縄県沖縄本島の那覇市では14日夜のはじめ頃(18時から21時)に最接近と考えられます。

 早目の台風対策、明るいうちの台風対策をお願いいたします。

まるで夏の台風

 筆者は、昔、9月の台風の経路を統計調査したことがあります。

 それによると、9月は8月に比べて太平洋高気圧が南下し、その周囲を回るように台風が移動しますので、日本へは北東進して接近するものが多くなります(図7)。

図7 9月の台風の平均経路
図7 9月の台風の平均経路

 台風13号は、日本列島を覆う太平洋高気圧に行く手をはばまれ、北西進して大陸に向かう予想となっていますので、これは、秋の台風というより、夏の台風に近いといえます。

 また、日本の南海上には台風13号だけではありません。あちこちで積乱雲が発生しており、熱帯低気圧や、熱帯低気圧が発生する可能性のある低圧部(周囲より気圧が低い領域であるが中心がどこにあるかわからない領域)の発生が予想されています(図8)。

図8 予想天気図(9月14日9時の予想)
図8 予想天気図(9月14日9時の予想)

 つまり、日本の南の海は、まだまだ夏で、次の台風発生の可能性が高い状態が続いているのです。

 日本に大災害をもたらした台風の多くは、台風13号のようにマリアナ海域で発生する台風です。

 ただ、今回の台風13号は、過去の大災害をもたらした台風と違い、熱帯低気圧の段階から、5日先まで、進路予報や強度予報が発表となっています。

 精度が悪く、24時間先の予報がやっとの時代には、大災害となっても、被害、特に人的被害が減らせるのが現在です。

 ただ、これは、精度が良くなっている台風予報を使ってのことです。最新の台風情報の入手につとめてください

タイトル画像、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図6の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:環境省ホームページ。

図4の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

図7の出典:饒村曜・宮澤清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計 月別発生数・存在分布・平均経路、研究時報、気象庁。

図8の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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