<朝ドラ「エール」と史実>劇中では「おめでたい男だよ」と批判されたが…古関裕而と実在の弟の関係は?
「おめでたい男だよ。兄さんさ、自分がどれだけ恵まれてっか分がってんの?」弟の浩二に批判される裕一。弟との確執は、朝ドラ「エール」で何度も描かれる主要なエピソードのひとつです。
モデルとなった古関裕而にも、弘之(ひろし)という弟がいました。では、このふたりのあいだにも確執があったのでしょうか。
弟・弘之は図案家でクリエイター
資料を見るかぎり、兄弟間でそのような問題はなかったようです。物語を盛り上げるために、ここは完全に創作したのではないかと思われます。
その傍証もあります。古関家の資料によれば、弘之は「図案家」になったようです。つまり、兄弟そろってクリエイターだったわけで、「兄だけ勝手にやって」という不満も生じにくかったのではないでしょうか。
また実家の呉服店も、第一次世界大戦後の不況期に閉店しています。その後、場所を移してささやかな商店をやっていましたが、それもまもなく閉店。ですから、跡継ぎ問題も深刻ではなかったはずです。ここでも、兄弟が対立する理由は見当たらないわけです。
たしかに、古関は弟についてほとんど語っていません。ただ、その内容は、けっして否定的なものではありませんでした。たとえば古関は、太平洋戦争の末期、福島にあった弟の家にこどもたちを避難させたといいます。
もしこのエピソードがドラマでも採用されるならば、戦時下に、弟がまた出てくるはずです。その答え合わせは、本放送の再開後にやることにしましょう。