暑い時期の「解熱鎮痛薬」服用に注意 脱水時には腎臓にダメージの恐れ
頭痛や腰痛などの痛みや、熱があるときに用いる解熱鎮痛薬ですが、暑い夏の脱水時の服用には注意が必要です。腎臓に負担がかかる「解熱鎮痛薬」と「脱水」というリスクが重なって急性腎障害に陥るおそれがあるためです。今年は新型コロナワクチン接種後の熱や痛みに解熱鎮痛薬を服用する人もいるでしょう。腎臓を守りながら安全に薬を服用するにはどうすればよいのでしょうか。
腎臓を守るポイントはリスクを知って予防すること
腎臓の大事な役割のひとつは、血液のなかの老廃物などをろ過して尿を作り、外へ排泄することです。急性腎障害は、何らかの原因によって①腎臓にはいってくる血液の量が減る、②腎臓の細胞がダメージを受ける、③腎臓でできた尿の流れがせきとめられ、腎臓のはたらきが短期間のうちに低下した状態のことをいいます。
多くの場合、原因を取り除くことで、進行を止め、改善させることができますが、放っておくとダメージが進み、心不全や肝不全を起こすなど深刻な状態に陥ったり、慢性腎臓病に移行したりする場合もあります。
腎臓を守るためには早期発見と早期対応が大切ですが、初期の段階でみられる症状は「尿量が少なくなる」「むくみ」「体がだるい」などで特徴的な症状がありません。これでは早期に気づくのは難しそうです。
では、急性腎障害にならないように腎臓を守ることはできないのかというと、そうではありません。誰にでも実践できることがあります。
それは、そもそも腎臓に負担をかけるリスクは何かを知って、リスク自体を避けたり、防いだりすることです。
暑い時期は「脱水」と「解熱鎮痛薬」による腎へのダメージに注意
急性腎障害のリスクには、高齢、複数の医薬品の服用などがありますが、暑い時期に特に注意を要するのが「解熱鎮痛薬」と「脱水」です。
解熱鎮痛薬のうち、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、腎臓に入ってくる血液量を減少させます。なぜ、これが急性腎障害のリスクになるのかというと、腎臓に届く血液の量が減少すると、血液によって腎臓に届けられる酸素や栄養が減って、腎臓のはたらきが低下し傷つくためです。
さて、NSAIDsを飲んでいる人が、夏になって大量の汗をかいたり、夏バテで食欲がなくなって食事を抜くなどして脱水になったらどうなるでしょうか。
脱水になると体のなかの水分量が減り、体をめぐる血液量も減ります。すると、薬の影響で減った血液量がさらに少なくなります。腎臓に届く酸素や栄養がさらに減って、腎臓がうまく機能しなくなり、急性腎障害のリスクが高まります。だから、暑い時期に解熱鎮痛薬を飲むときには特に注意が必要というわけです。
特に、普段は「めったに解熱鎮痛薬を飲まない」という人でも、新型コロナワクチン接種が進んでいる今年は接種後の発熱や接種部位の痛みなどのために、服用の機会があるかもしれません。
急性腎障害のリスクになる「脱水」と「解熱鎮痛薬」が重なることがないように注意して腎臓を守ることが大切です。
腎臓を守りながら解熱鎮痛薬を上手に使うポイント
腎臓を守りつつ、解熱鎮痛薬を上手に使うにはどうすればよいのでしょうか。鹿児島県薬剤師会薬事情報センター所長 薬剤師・井上彰夫さんに伺いました。
自分にリスクがあるかをチェック
「急性腎障害から腎臓を守るには、まず大前提として、自分は腎臓のはたらきが低下するようなリスクを持っているのかを知ることが大事です。それが腎臓を守る早道になります」(井上さん)
厚生労働省が公表している「重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性腎障害(急性尿細管壊死)」は、リスクとして次のようなことを挙げています。
・高齢
・脱水
・発熱している
・食事の摂取量が減っている
・複数の医薬品を服用している
・腎臓、心臓、肝臓などにもともと慢性の病気などがある
特に高血圧などの治療で、降圧薬(レニン・アンジオテンシン系阻害薬)や、利尿薬を飲んでいる人は注意してください。NSAIDs、降圧薬、利尿薬の3種類の併用は急性腎障害のリスクを高める組み合わせだからです。
降圧薬や利尿薬を飲んでいる人、リスクにあてはまる人は、解熱鎮痛薬を飲む際には事前にかかりつけ医や薬剤師に服用の仕方や注意点を確認しておくと良いでしょう。
解熱鎮痛薬は漫然と服用せず、症状があるときに使う
「NSAIDsは漫然と服用しないことが急性腎障害を防ぐために大切です。痛みなどの症状がある際に最小限の服用にとどめることがすすめられます」(井上さん)
なぜならNSAIDsは腰痛などの痛みを緩和したり、熱を下げたりといった症状を和らげる作用はありますが、病気そのものを根本的に治療する薬というわけではないためです。
ただし、医師に処方してもらった薬の場合には、定期的に服用することに治療上の大事な理由がある場合があります。したがって病院でもらった薬は自己判断で調整せずに、医師や薬剤師に必ず相談しましょう。
市販の解熱鎮痛薬を選ぶときのコツ1-飲み薬と外用薬どっちが良い?-
「塗り薬や貼り薬などの外用薬で対処できそうな場合は、飲み薬よりまず外用薬を使用することがすすめられます」(井上さん)
外用薬の場合、飲み薬に比べて全身への影響は少ないとされています。また、成分が皮膚から吸収されて効率よく患部に届き、痛みや炎症を抑えます。
ただし、これは使い方や使う量を守った場合です。適切な量を超えて体中に大量のシップを貼ったりした場合では、血液中に移行する成分の量が多くなるため副作用などが現れるおそれがあります。
市販の解熱鎮痛薬を選ぶときのコツ2-飲み薬の選び方-
解熱鎮痛薬には1つだけの成分が入った薬もあれば、いろいろな種類の成分が1粒のなかに入った製品もあります。
腎臓へのダメージを避けるにはどのような製品を選べばよいのでしょうか。
「複数の成分が入ったものよりは、1種類だけの成分が入った解熱鎮痛薬がすすめられます」(井上さん)
1粒のなかに複数の薬が入っていると、その分飲み合わせなどに注意が必要ですし、好ましくない症状が体に起きる可能性があるためです。
では、解熱鎮痛薬の成分についてはどうでしょうか。
「解熱鎮痛薬には、アセトアミノフェン(商品名:カロナール、タイレノールなど)や、NSAIDsといった種類があります。急性腎障害のリスクを配慮するのであれば、アセトアミノフェンを選ぶと良いでしょう。アセトアミノフェンは急性腎障害のリスクは低いと言われています」(井上さん)
解熱鎮痛薬は頭痛や熱などのつらい症状があるときに助けになる薬です。ただし、脱水などの急性腎障害のリスクが重なりやすい時期には、自分がもともと持っているリスクを踏まえて使用することが大切です。もし、服用に際して心配なことがある場合には、かかりつけ医や薬剤師に相談してください。
【参照】