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史上初めて40本塁打&40盗塁を同時達成した大谷翔平に「ヒリヒリするような9月」で期待したい牽引力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
同僚から手洗い首服を受けて充実した表情を浮かべる大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【史上6人目の「40-40クラブ」を達成】

 何ともド派手な快挙達成の瞬間だった。

 4回裏の第2打席に先頭打者として内野安打で出塁に成功すると、ムーキー・ベッツ選手がライトフライに倒れた後、フレディ・フリーマン選手に投じられた初球の間に二塁まで走り抜き、まず40盗塁を達成。

 そして3対3の同点で迎えた9回裏2死満塁の場面で、自身3本目となる満塁本塁打を右翼席に運び、サヨナラ打で40本塁打に到達した。

 すでに日本メディアで大々的に報じられているように、MLB史上6人目の「40-40クラブ」に名を連ねることになった。

【40本塁打と40盗塁を同時達成したのは史上初】

 ちなみにこれまでの達成者は、1988年のホゼ・カンセコ選手(42本塁打&40盗塁)、1996年のバリー・ボンズ選手(42本塁打&40盗塁)、1998年のアレックス・ロドリゲス選手(42本塁打&46盗塁)、2006年のアルフォンゾ・ソリアーノ選手(46本塁打&41盗塁)、2023年のロナルド・アクーニャJr.選手(41本塁打&73盗塁)の5選手だ。こちらも各所で報じられている通りだ。

 ただ大谷選手の40-40クラブ達成の仕方は、他の5選手とかなり違っている点がある。まず40本塁打と40盗塁を同じ試合で達成したのは、今回の大谷選手が史上初めてのことだ。

 さらに40-40クラブを達成するのに要した試合数でみると、ソリアーノ選手(147試合)を除き残り4選手がシーズン終了間際の150試合以上をプレーして達成しているのに対し、大谷選手は8月下旬のわずか126試合目で達成してしまったのだ。

【打者専念でも歴史的な快挙を目指す大谷選手】

 MLB公式サイトで歴史や記録関連の記事を執筆しているサラ・ラングス記者はX上に、「ショウヘイ・オオタニは50本塁打&50盗塁のペースを維持している。1シーズンに同時達成した選手は誰もいない」という内容の投稿を行っているように、残りシーズンで大谷選手は新たな歴史的快挙と向き合っていくことになる。

 またラングス記者によると、40本塁打&20盗塁を達成したシーズン数が大谷選手は3回目となり、4回を記録しているロドリゲス選手に続き単独2位となっている。

 これまで二刀流選手として数々の歴史を塗り替えてきた大谷選手だが、打者に専念する今シーズンでさえもMLBの歴史を塗り替えようとしているのだ。

 これまで40-40クラブを達成したシーズンにMVPを獲得した選手はカンセコ選手とアクーンシャJr選手の2人だけだが、前人未踏の50-50クラブを達成するようなことになれば、史上初めてDH選手としてMVP受賞を大きく引き寄せることになるだろう。

【大谷選手が初めて経験する「ヒリヒリするような9月」】

 まさに様々な歴史的快挙が期待されるシーズン終盤になりそうだが、8月に入り打撃が下降している現状を心配する声も挙がっていたのも事実だ。

 だが個人的にシーズン終盤の大谷選手に大きな期待を寄せている。というのも、彼が長年渇望してきた「ヒリヒリするような9月」を迎えようとしているからだ。

 試合後にヒーローインタビューに立った大谷選手が「それ(40-40クラブ)自体が目的になるというよりも、(チームが)勝つための手段としてそうした記録がつくれたというのは大きなことかなと思います」と話しているように、現在の大谷選手にとっては個人記録よりもチームの勝利にどれだけ貢献するかに意識が向かっている。

 つまり今シーズンの大谷選手は、これまで経験したことがない充実したメンタリティーでシーズン終盤を向けようとしているのだ。そんな大谷選手がこのまま打撃不振を続ける姿がどうしても想像できないのだ。

 ヒーローインタビュー中にテオスカー・ヘルナンデス選手とミギュエル・ロハス選手から大量の水を浴びせかけられても、子どものようにはしゃいでいた大谷選手。そして「最後に打てて勝てたことがここまでドジャースに来てからの今もところ一番の思い出になっているかなと思います」と満足そうな表情を浮かべている。

 その様子をみて、彼がシャンパンファイトに興じる姿を夢描いたファンも多かったはずだ。きっと9月の大谷選手は、もっとたくさんの思い出を積み重ねていってくれることだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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