『悪の帝国』ヤンキースが元MVP選手を緊急補強したワケ
『悪の帝国』の異名を持つニューヨーク・ヤンキースが、お得意のスター選手の大型補強に成功した。
今回獲得したのは、オールスターに5度選ばれ、ピッツバーグ・パイレーツに在籍していた2013年には打率.317、21本塁打、84打点の成績でMVPにも選ばれたアンドリュー・マカッチェン。
昨オフに9年間プレーしたパイレーツからサンフランシスコ・ジャイアンツへトレードされた。
MVPを獲得した2013年を挟んで、2012年から14年までは3年連続で打率3割、20本塁打、80打点以上を記録。3年続けてMVP投票で3位以内に入ったマカッチェンは、リーグ屈指の選手だった。
31歳の今季は新天地のサンフランシスコで、打率.255、15本塁打、55打点を記録。全盛期の輝きこそ失ったが、頼れるベテラン選手としてチームを支えていた。
実はヤンキースは7月末のトレード期限前にもマカッチェンの獲得を検討していたが、そのときはヤンキースのケガ人も少なく、ジャイアンツの要求も高かったので話は流れてしまった。
しかし、シーズン終盤になり、ヤンキースはケガ人を多く抱えて選手層が薄くなり、マカッチェンの補強に踏み切った。プレーオフに選手登録するのは、8月31日までに新チームへ加入させる必要があり、ウェーバーを経て、登録最終日に元MVP選手を獲得した。
若き主砲、アーロン・ジャッジを右手首の骨折で失っているヤンキースは、ジャッジの代役を探しており、最高の代役を射止めた。
ジャッジの骨折は当初、3週間で復帰と見られていたが、5週間経った今も復帰の目処は立っていない。ヤンキースは指名打者のジャンカルロ・スタントンにライトを守らせることでジャッジの穴埋めをしてきたが、スタントンもハムストリングスに軽い張りを訴えており、ヤンキースはスタントンの身体的負担を軽減するため早めに指名打者へ戻したいと考えていた。
ジャッジがライトを守っていたときには、ヤンキースの右翼手は打率がメジャーで10位、出塁率は5位、長打率は2位だったのが、ジャッジ離脱後には右翼手の打率は最下位で、出塁率と長打率もメジャーで下から2番目と貧打に苦しんでいる。
アメリカン・リーグの東地区で首位のボストン・レッドソックスに8.5ゲーム差と引き離されてしまったヤンキース。ワイルドカード争いでは3位のシアトル・マリナーズに8.5ゲーム差をつけているので、プレーオフ出場は安泰だと思われるが、ワイルドカード枠での出場ではプレーオフに入ってからの道のりは険しい。
プレーオフまでにジャッジが戦列復帰を果たせば、マカッチェンをレフトに回し、調子を落としているブレット・ガードナーをベンチに置くこともできる。
ワイルドカード枠からワールドシリーズまで勝ち上がっていくためには、マカッチェンの経験、打力と守備力は大きな助けとなるはずだ。