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BMW新型X2が示す、SUV市場の今後

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
筆者撮影

 BMWの新型X2が発表された。このモデルはすでに同社が販売しているX1をベースにしたモデル。X1はいわゆる典型的なSUV(ただしBMWはこの手のモデルをSAV=スポーツアクティビティビークルと呼ぶ)だが、このX2は比べると、低いルーフを持つクーペ的なボディが与えられており、X1の派生モデルに位置づけられる。またそのキャラクターは、X1よりもさらにパーソナルな用途に向けたものとされている点が特徴。今年の2月に筆者自身がこのYahooニュース個人で公開した、BMWの新型X2海外試乗での記事にもそれは記されている。

フルラインナップ体制になりつつある、BMWのXシリーズ群

 BMWはかつて、5シリーズ相当のクロスオーバーSUVであるX5というモデルを送り出したことで乗用車だけでなくSUVの世界に足を踏み入れた背景を持つ。X5はアメリカでのヒットを皮切りに世界中で人気を得て、アッという間にBMWの基幹モデルと言ってよい存在となった。そこでBMWは即座にX3と呼ばれる、人気モデルである3シリーズをベースにしたモデルを送り出し、これも人気モデルとなった。さらにその後は1シリーズ相当のX1と呼ばれるモデルを送り出し、SUVにおいてもラインナップを多数揃えてきた。

出典:またもや市場を掘り起こす!? BMWのコンパクト・クーペSUV「X2」に試乗

 こんな具合にして、今や自動車メーカーにおいてはすべてのモデルレンジで、SUVが必須のラインナップとなりつつあるため、BMWのように派生モデルを次々に展開する例も珍しくない状況だ。というのも最近の自動車市場においては、すべてのモデルレンジにおいて、ベーシックなハッチバックやセダン、ステーションワゴン等のモデルよりもSUVの方が販売台数が多くなりつつある状況だからである。

例えばSUV大国であるアメリカ市場では、トヨタやホンダといったブランドでは長らくカムリやアコードといったセダン及びステーションワゴンがこれまでの販売の主力であった。販売台数的にも年間40〜50万台を販売しており、同社の稼ぎ頭といえるモデルであった。しかしながら近年ではSUVが販売台数を急速に伸ばしており、例えばトヨタでは昨年の北米市場の販売実績はカムリよりもSUVのRAV4の方が多かったほどである。

またスバルは同社の基幹モデルとしてコンパクトカーのインプレッサを擁しているが、現在ではインプレッサをベースとしたコンパクトSUVのXVが販売台数も多く、このモデルが主役となっているような状況である。

こうした状況に対応するドイツメーカーの動きは早い。SUVでフルラインナップを築こうとするのはもちろん、さらにニッチといえる市場の開拓にも余念がなく、あらゆる隙間を埋めるように派生モデルを続々と送り込む。例えばBMWは今回このX2を発表し、すでにこの先アナウンスされているフラッグシップのX7が登場すると、同社のSUVに与えられるXの名を冠したモデルは実に、X1/X2/X3/X4/X5/X6/X7といった具合でフルラインナップ体制となる。しかも奇数モデルは一般的SUV、偶数モデルはその派生クーペモデルといった具合で、隙間をしっかりと埋め尽くす戦法である。

 この戦略はBMWにおいては何もSUVだけではなく、全カテゴリーでその傾向。通常モデルでも、1/2/3/4/5/6/7シリーズがあり、さらにこの後は8シリーズが登場すると言われている。そしてメルセデス・ベンツやアウディもこうしたフルラインナップおよびニッチモデルで隙間を埋める戦略が当たり前になりつつある。

このような状況をみつつ、最近の自動車市場をみてみると、現在はまず自動車市場自体でSUVがスタンダードになりつつある傾向であることは先にセダンやステーションワゴンなどよりも売れてきていると記した通りだ。そしてこの波は日本市場にも確実に届きつつあるのが実際で、2019年にはトヨタはRAV4を日本市場に復活させるというし、ホンダもCR-Vを再投入する構えだ。

 そうした中で登場したBMWの新型X2を見ると、SUV市場はさらに進化しつつあり、SUVと言うカテゴリーの中で多様化、細分化が起こっていることを物語っているといえるだろう。

またこのクラスでは、つい先ほど紹介したばかりのボルボXC40なども存在しており、今後はSUVカテゴリーの中でさらに多様化が起こり市場はより混乱を極め、激戦となるだろうことが予測される。

果たしてこうした状況に対して、日本の自動車メーカーがどのようなプロダクトで対抗するかが注目される部分でもある。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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