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結成27年「今、一番仲がいい」。新型コロナで生まれた「やってまえ」と新しい「2丁拳銃」のカタチ

中西正男芸能記者

 日本テレビ「人生が変わる1分間の深イイ話」で、あまりにもヒドい父親ぶりから“ヘドロパパ”という呼び名がついたお笑いコンビ「2丁拳銃」の小堀裕之さん(46)。ツッコミの川谷修士さん(46)の妻で放送作家の野々村友紀子さんが小堀さんを叱責する流れも話題になりましたが、ライフワーク的に行っている100分間ノンストップで漫才をするイベント「百式」(12月12日、東京・よしもと有楽町シアター)を今年も開催します。新型コロナ禍で初めて有料オンライン配信も採用しましたが、新型コロナによって、あらゆるところに大きな変化がもたらされたと言葉に力を込めました。

「コロナのせいで」はイヤ

 小堀:いつもは「百式」で全国に行かせてもらったりもしてるんですけど、今年は東京で1回だけ。その模様を会場のお客さんのみならず、オンライン配信で見てもらえる形も初めてやることになりました。

 修士:100分の漫才というコンセプトは変わらないんですけど、何か仕掛けというか、いつもと違うことも小堀は考えているみたいで。

 小堀:例えば、漫才の中でリモートを取り入れてみたり、音を使ったことをやってみたり、そういう要素は考えてますね。

 今年は「常識が常識じゃなくなった年」だとも思うので、良い意味で「こんなんも、やったったらエエねん!」ということを臆せず入れるというか。

 なんというか「コロナのせいで」というのがイヤで。「コロナがあったから」こんな漫才ができた。そうしたいという気持ちが強いですね。

 修士:来ていただくお客さんも大変だし、ある意味、覚悟を持って来てくださるわけですね。「面白かった」プラス「楽しかった」も感じていただける100分にしたいと思っています。

今、一番仲がいい

 コロナ禍でいうと、僕らは劇場メインの芸人なので、緊急事態宣言の頃は劇場もストップして、何もかも止まりました。ほぼ仕事はゼロになりましたね。

 後輩にもよく言ってきたんです。「劇場があるのが吉本興業の強さや」と。まさかその劇場が止まってしまって、動きが封じられるなんてことがあるとは思わなかったですけど、実際にそうなってしまいましたからね。

 仕事が止まるということは、コンビで会わない時間が長くなるということ。その状況の中、多分、これまで27年やってきた中で、今が一番仲いいと思います。

 普段だったら頻繁に顔を合わせるので、互いにアイデアにしても何にしても「いや、別にそれは今せんでもエエんちゃうか」というトーンになってたんです。だけど、たまにしか会わなくなると、そこが「エエやん!やってまえ」になるんですよね。

 それと、仕事がストップすると、各々でやっていることに打ち込む時間が増えていくんですよね。僕は「THE EMPTY STAGE」という即興劇的なものに力を注いだり、小堀は弾き語りとか落語に力を入れたり。

 そういう個人のことをやればやるほど、そして「2丁拳銃」の仕事から遠ざかれば遠ざかるほど、やっぱり二人での仕事を大事にせなアカン。その思いが強くなっていったんです。そんな話は、実際、コンビでも話しました。

 少しずつ劇場が再開されて、久しぶりに漫才をやると、明らかにアドリブが増えてるんですよね。互いに考えていることを入れて楽しんでるというか。これまでの時間で蓄積されてきた「それは、ナシな」という領域がなくなったというか。「やってまえ!」みたいな。

 そうなると「やっぱり、漫才って楽しいなぁ」になるんです。この感覚が27年経って出てきているということがまた面白いなと思いましね。

 大きな声では言えないことですけど(笑)、劇場の10分出番で、その場の空気でネタを膨らませることなく“素うどん”みたいなネタをして8分で降りてきてたこともありましたけど、今は12分くらいになってますもんね。

 その4分が二人の“遊び”であり、楽しさから膨らませている部分。結果、それが観てくださる方の満足にもつながったらいいなと思っているんです。身内の話ですけど、舞台袖で観ている後輩とか舞台監督さんがしっかり笑っているということは、悪くはないのかなと。

 小堀:あとね、会っていたのが当たり前ではないという感覚にもなりました。だから「またいつ会わなくなるか分からんから、やれるうちにやらんと損や」という感覚にもなりました。

 だからこそ、今あるものをどんどんぶつけますし、互いにその熱量があるから、結果、面白くなるんじゃないかなと思ってるんですけどね。

 修士:まさにソーシャルディスタンスというか、距離を保たないといけない年やったと思うんですけど、それによって、コンビの距離は縮まったといいますか。

 それと、もちろん舞台のことは大切に思っていたんですけど、劇場との距離というか、そこも遠ざかったことによって、より大切に思えましたね。そして、劇場を支えてくださっているスタッフさんへの感謝もさらに強くなりました。すごくシンプルで当たり前のことなんですけど、それをもう一回、思いっきり噛みしめるというか。

ヘドロパパの変化

 小堀:自分も、そして「2丁拳銃」としても見つめ直しの時間になったと思います。

 僕は“近距離戦”の人間だと思うんです。距離をとられたらとられるほど「なんやねん、こいつ」になるといいますか。

 こんなん自分で言うのはアレなんですけど、逆に、自信があったんです。劇場に来てもらって、漫才を目の前で見てもらったら、オレがどんなヤツか分かってもらえるはずやと。

 “ヘドロパパ”と言われてるけど、間近で漫才を見てもらったら「面白いこと、言いよるやん」と思ってもらえる。その自信があったんです。でも、それがコロナで奪われて、今一度、自分の出し方をもっと深く考えたというか。感覚的な話ですけど、そこはありましたね。

 あと、コンビだけでなく、プライベートな時間も変わりましたね。これだけあらゆるものが止まったので、この僕が、なんと家に帰ってましたから(笑)。これはね、すごいことです。ずっと家にいたら、4人の子どもたちともエライ仲良くなって。

 家でギターを弾いて6歳の末っ子と歌ったり、キャッチボールとかもしましたもん。一番上の高校3年の息子ともやりました。思いっきり、今さらながらではありますけど(笑)

 それと、歌を歌ってたら、子どもらから「声、通るんやな」と言われましたね。ママ(妻)にも言われました。「プロの声やなぁ」って。ここにきて、家族に声について認識されるというのもナニなんですけど(笑)、関係性は変わりましたね。シンプルに、家族が仲良くなったと思います。

 ま、今回でだいぶ家族への“貯金”ができたので、また世の中が動き出したら“貯金”を切り崩しながら、自由にしたいとは思っています(笑)。

 修士:根本、何にも変わってへんがな!

(撮影・中西正男)

■2丁拳銃(にちょうけんじゅう)

1974年1月9日生まれで奈良県出身の小堀裕之と、74年5月17日生まれで兵庫県出身の川谷修士が93年にコンビ結成。若手の頃からアイドル的な人気を誇り音楽活動も展開。2000年に東京に進出する。03年には「M-1グランプリ」で決勝進出(4位)。日本テレビ系「人生が変わる1分間の深イイ話」で小堀が家族を顧みない“ヘドロパパ”として紹介され、修士の妻・野々村友紀子に説教される流れが話題となる。ABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞、NHK新人演芸大賞(演芸部門)大賞、上方漫才大賞新人奨励賞など受賞多数。ライフワーク的に開催している100分間ノンストップで漫才をするイベント「百式」を今年も12月12日に東京・よしもと有楽町シアターで開催。同イベントは、有料配信も行われる。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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