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新型コロナ:行動制限の緩和が進む中、私たち一人ひとりの感染対策の考え方はどうあるべきか?

忽那賢志感染症専門医
(写真:アフロ)

今年は「3年ぶりに行動制限のないゴールデンウィーク」ということで、久しぶりに旅行や会食を楽しんだ方も多いのではないでしょうか。

新型コロナの流行から2年以上が経過し、ようやく社会も活気を取り戻しつつあります。

とは言え、まだ完全に元通りの生活とは言い切れません。

これから私たちはどういったことに気をつけながら生活をして行けばよいのでしょうか?

新規感染者数は減少傾向

日本国内での新規新型コロナ感染者数の推移(Yahoo!JAPAN 新型コロナウイルス感染症まとめより)
日本国内での新規新型コロナ感染者数の推移(Yahoo!JAPAN 新型コロナウイルス感染症まとめより)

日本国内での新型コロナ感染者数は、2022年2月上旬をピークとした第6波を経て、3月下旬からは横ばい〜微増傾向となりましたが、4月下旬以降再度減少に転じています。

第6波では1日あたりの新規感染者数が10万人を超えたこともありましたが、現在は1日2万人程度まで減少しています。

ただし、感染者数だけを見ると2021年8月頃の第5波のピークと同程度であり、今も決して少ないとは言えない状況です。

日本での新型コロナによる致死率の推移(Our World in Dataより)
日本での新型コロナによる致死率の推移(Our World in Dataより)

一方、「新型コロナに感染した方のうち亡くなられる方の割合(致死率)」は徐々に低下してきており、現在は0.37%になっています。

これは、新型コロナに感染した300人のうち1人が亡くなる計算になります。

一時期はこの致死率が5%を超えることもありましたが、ここまで大きく下がってきた理由としては、

・より多くの人に検査が行われるようになった

・ワクチン接種が広がり重症化する人が減った

・治療の選択肢が増え、早期治療が可能となった

などが挙げられます。

このように、新型コロナは少しずつ脅威ではなくなってきていますが、まだまだ侮ることができない感染症であることには変わりありません。

実際に、第6波では過去最大の死亡者数となり、いくら重症化する割合が減ったとしても感染者数が増えすぎてしまえば、重症化する人数としては大きくなってしまうことになります。

今後は、重症者・死亡者が増えすぎないようにある程度感染者数を抑制しながら、社会機能を維持していくことを目指すことになります。

そのためには、メリハリをつけた感染対策を一人ひとりが身につけることが重要になります。

メリハリをつけた感染対策とは?

新型コロナウイルス感染症の感染経路(Nature Reviews Microbiology volume 19, pages528–545 (2021))
新型コロナウイルス感染症の感染経路(Nature Reviews Microbiology volume 19, pages528–545 (2021))

新型コロナの感染経路は3つです。

・接触感染:ウイルスで汚染した物、感染した人の手などに触れることで自分の手などにウイルスが付着し、その汚染した部位で目や鼻など粘膜に触れる

・飛沫感染:会話などで発生する飛沫を浴びる

・エアロゾル感染:特に換気の悪い屋内では飛沫の飛ぶ距離(1-2m)を超えて感染が起こり得る

基本的にはこの3つの感染経路を意識した感染対策が重要です。

接触感染に対してはこまめな手洗い、飛沫感染やエアロゾル感染に対してはマスク着用と3密を避けることで感染を防ぐことができます。

この2年の間に、どういった状況で感染が起こりやすいのか分かってきました。

それは特に屋内でのお互いがマスクを外した場面であり、具体的には家庭内や会食などです。

家庭内でのマスク着用は現実的ではありませんが、常に部屋の換気を心がけることは重要でしょう。

また、会食は人が多く集まるほど、時間が長くなるほど感染するリスクが高くなり、感染者が増えやすくなります。

・なるべく少ない人数で

・あまり長時間にならないように

・マスク会食の徹底

といったことがクラスターを生まないためには肝要になります。

過剰な感染対策はやめていく時期

過剰な感染対策の一例(筆者撮影)
過剰な感染対策の一例(筆者撮影)

一方で、これまで過剰にやりすぎていた感染対策については見直す時期にきています。

これだけ長期化してきたコロナ禍において徹底すべき感染対策に集中するためには、不要な対策は削ぎ落としていくことが継続性の上では必要です。

マスクもずっと着けている必要はありません。

屋外で人との距離が保たれている状況ではマスクを外して空気を味わうようにしましょう。

環境の消毒もやりすぎていないでしょうか。

例えば、机やイスなど一日になんども消毒していませんか。

全く無駄とは言えませんが、何かに触った後に自分の顔を触る前に手洗いをすることを習慣付けることの方が大事です。

量販店などでレジの店員さんが手袋を着けているのをときどき見かけますが、あれも不要です。

毎回手袋をつけ直すか手洗いをしていれば良いのですが、そうでなければ汚れた手袋をずっと着けていることになりますので、かえって不衛生です。

同様に、ホテルビュッフェなどでビニール手袋を着けることを求められることがありますが、あれもビニール手袋を着けていれば安心というわけではなく、こまめな手洗いの方が大事です。

また、エレベーターのボタンとかに抗菌シートが貼られているのを見かけることもありますが、あれも謎です。手洗いの方が大事です。とにかく手洗いが大事なのです!

そろそろ過剰な感染対策はやめて、本当に必要な感染対策に集中すべき時期にきています。

やっぱりワクチン接種は超大事!

2022年3月〜4月の年齢別・ワクチン接種歴別の新規罹患率(第16回新型コロナウイルス感染症対策分科会 資料3より)
2022年3月〜4月の年齢別・ワクチン接種歴別の新規罹患率(第16回新型コロナウイルス感染症対策分科会 資料3より)

最後に、オミクロン株に対して感染予防効果が落ちていると言えども、ワクチンの効果は絶大です。

ワクチン接種をしている人は、していない人と比べて重症化しにくいことはもちろんですが、感染しにくいことも明らかです。

図は年代別・ワクチン接種回数別にみた新規罹患率の比較になりますが、いずれの世代においてもワクチン接種回数が多いほど感染しにくくなっていることが一目瞭然となっています。

自分自身を、そして周りの人を守るためにも、引き続きワクチン接種をご検討ください。

新型コロナはゆっくりと脅威ではなくなってきていますが、まだまだ流行は続きます。

メリハリをつけたスマートな感染対策を続けながら、上手に付き合っていきましょう。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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