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ナイキの信頼を失墜させたドラフト1位選手が八村塁に続きジョーダン・ブランドのメンバー入り

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今年2月にシューズの底が抜け左ひざを負傷したザイオン・ウィリアムソン選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ナイキがウィリアムソンとの契約締結を発表】

 ナイキは23日に公式リリースを出し、2019年NBAドラフトで全体1位指名を受け、すでに来シーズンの活躍が期待されているザイオン・ウィリアムソン選手が同社の人気ブランド「ジョーダン・ブランド」のメンバーに加わったことを発表した。

 ウィリアムソン選手はリリース上で、以下のようにコメントを寄せている。

 「ジョーダン・ブランドのファミリーに加われ、信じられないくらいの喜びを感じている。子供の頃から夢見てきた、このリーグ(NBA)に入り、マイケル・ジョーダンがもたらしたようなインパクトを与えたいという夢は今も続いている。彼は自分が尊敬する特別なアスリートの1人だ。この新たな旅(ジョーダン・ブランド入り)に興奮し、幸せを感じていることを言葉で言い尽くすことができない」

 ナイキでは早速SNSを通じて、プロモーションビデオを公開している。

 ちなみに今年のNBA新人選手でジョーダン・ブランドの一員に加わったのは、八村塁選手に続いて2人目のことだ。

【ナイキの信頼を失墜させたウィリアムソン】

 今年のNBA新人選手の中で最も注目を集めるウィリアムソン選手だけに、彼のシューズ契約先がどこになるのか、大きな関心事になっていたのは間違いない。だが単にウィリアムソン選手が若手有望選手というだけでなく、同選手とナイキの間で今年2月に“曰く付き”のアクシデントが起こっていたことも人々の関心を増していた。

 昨シーズンは名門デューク大学に在籍していたウィリアムソン選手は、同校がナイキと提携しているためナイキのシューズを使用していた。そして2月20日のノースカロライナ大戦で、ウィリアムソン選手がドリブルから切り返しをしようとした瞬間、左足のシューズの底が抜け、そのまま倒れ込んでしまうアクシデントが起こった。

 これが原因でウィリアムソン選手は左ひざを痛め、そのまま負傷退場することになり、さらに長期欠場を余儀なくされることになった。元々ノースカロライナ大戦は全米から注目を集める名門校対決だったこともあり、この負傷シーンはあっという間に全米中を駆け巡ることになった。

 シューズの底が抜けるという衝撃的なシーンに、ナイキの信用度が完全に失墜。翌21日の株式市場で、ナイキの株価は11%も急落する事態に陥っていた。

【イメージ回復に必死だった?ナイキ】

 ただシューズの底が抜けるというアクシデントはナイキの品質というよりも、ウィリアムソン選手の計り知れない脚力がもたらしたものだといっていい。

 このアクシデントが起こった当時、ナイキのシューズを使用しているBリーグ在籍の外国籍選手数人と話をしたのだが、皆がウィリアムソン選手のようなアクシデントに遭遇したことがないと笑い飛ばしていたほどだ。

 だがナイキにとっては、このアクシデントは笑って済ませられるものではない。社のイメージを回復するためにも、何とかNBA入りしたウィリアムソン選手と契約するのがこの夏の最大の目標だったのは明白だ。

 今回の契約締結について、契約期間や契約金額等の詳細は明らかにされていない。だが米メディアの報道によれば、他社もウィリアムソン選手との契約に乗り出しており、アディダスの幹部は10年総額1億ドル(約110億円)の契約を予測していたほど、壮絶な争奪戦が繰り広げられた模様だ。

 いずれにせよ、ウィリアムソン選手と八村選手が同じジョーダン・ブランドを使用しNBAのコートに立つことは、日本人にとって楽しみでしかないだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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