Yahoo!ニュース

ウォリアーズファンの看護師を激励したステフィン・カリーが貫くトップアスリートの姿勢

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
新型コロナウイルスが蔓延すす米国で積極的に声を上げ続けるステフィン・カリー選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【カリーがオークランドの病院勤務の看護師を激励】

 ESPNなどの米メディアが報じたところによると、ウォリアーズのステフィン・カリー選手が、オークランドの病院で働く看護師に自らTV電話をかけ、新型コロナウイルスと立ち向かう医療従事者を激励した。

 ESPNはツイッター上に、カリー選手と看護師らが触れ合う動画を投稿としている。

 動画を見てもらえば分かるように、連絡を受けた看護師とその仲間たちがカリー選手から連絡を受けたことに「本物よ」と喜ぶ一方で、カリー選手は「皆さんの献身的な働きに感謝しきれないです」と励ましている。

【きっかけは看護師が投稿したツイート】

 今回の激励電話のきっかけになったのが、看護師がインスタグラム上に投稿した画像だった。

看護師がインスタグラムに投稿した画像(インスタグラムより)
看護師がインスタグラムに投稿した画像(インスタグラムより)

 彼女は医療ガウンの胸元を開きながら、その下にウィリアーズのジャージーを着込んでいる画像を公開。画像には彼女が病院で懸命に働き続ける中、強烈な疲労感に襲われたことから、自分を奮い立たせるためウォリアーズのジャージーを着込むようになった経緯や、新型コロナウイルスの対策方法に関する熱いメッセージが添えられている。

 この話を聞きつけたカリー選手が彼女に感銘し、彼女を激励するとともに謝意を伝えるため、自ら行動を起こしたというわけだ。

【社会的責任という面での日米格差】

 以前本欄で、同じプロリーグでも社会的責任という捉え方が日米でかなり違うことを指摘させてもらった。それは選手個人レベルでもかなり違っているように思う。

 つい先日、日本プロ野球選手会が「新型コロナウイルス感染症拡大防止活動基金」というクラウドファンディングを立ち上げ、現役選手やOBから寄付を募り始めた。すでに4700人近い人が賛同し、6000万円を超える寄付が集まっているようだ。こうした選手会独自の活動に心から賛辞を送りたい。

 だがその一方で、日本のトップアスリートの中でカリー選手のように、新型コロナウイルスに対する注意喚起を行い、医療従事者を激励するような声を個人レベルで上げている人がどれだけ存在するだろうか(本田圭佑選手ら海外で活躍するアスリートは積極的に声を上げているが…)。残念ながら決して多いとはいえない。

【政治家以上に影響力のあるトップアスリートの声】

 彼らの声は、時として下手な政治家や医療専門家以上に人々の元に届くと信じている。それほど影響力を持っている存在なのだ。

 日本も非常事態宣言を迎えてしまった今こそ、個々のアスリートたちも前面に出て、人々を叱咤激励して欲しいと切実に願っている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事