ミスタードーナツはセブンをパクリで訴えることができるのか?
セブンイレブンがドーナツの販売を始め、ミスタードーナツとのガチンコ勝負になりそうなのは周知かと思います(参照記事)。ドーナツの外観を見ると、セブンのドーナツはミスタードーナツにそっくりです(たとえばこちらの記事参照)。ミスタードーナツとしてはあまりおもしろくないかもしれないですね。
ドーナツに限らず料理や食品の外観を知的財産権で守ることはできないのでしょうか?(念のため書いておきますが、本記事は、ミスタードーナツは訴えるべきとか、セブンはけしからんとか言いたいのでなく、単に法律的にどのような手段があるか考えてみているだけです)。
まず、特許権について考えてみましょう。食品の製法特許は数多くありますが、食品の外観を特許で保護するのは困難です。特許はあくまでも技術的アイデアを保護するものであるからです。
著作権はどうでしょうか?作品として観賞の対象となるほどの芸術的な料理をするのでもない限り、料理が著作物となることはないでしょう。少なくとも、ドーナツのように大量生産される食品が著作物とされる余地はまずありません(たとえば、ペコちゃん焼のように食品に絵が描いてあれば話は別ですが)。
では、料理や食品の外観はまったく保護され得ないのかというと、意匠権という道があります。意匠権は、大量生産される物品の意匠(工業デザイン)を保護する権利です。ドーナツは工業デザインというイメージではないですが意匠権で保護され得ます。実際、物品を「ドーナツ」とした意匠登録が何件か(正確には4件)存在します。下図は山崎製パンの意匠登録1461622号公報の一部です。
ただし、意匠権は公知になっていれば登録されません(特許と同じです)。なので、今既に売っている商品をミスタードーナツが意匠登録したとしても登録されることはありません。次回新たな独自形状の新商品を作る時に(正確には公表から6カ月以内に)意匠登録出願しておくならば登録される可能性はあります。
さらに、商標権でも立体商標制度を使えば食品の形状・外観を保護できる余地はあります。ただし、商品の形状そのものを登録商標にするのは、消費者に対する商品識別力が相当強くないと不可能です(ひよこまんじゅうの立体商標登録が識別力なしということで無効になったのは有名です)。公知であっても商標登録はできますので、ミスタードーナツが、自社のドーナツの形状を見ればほとんどの消費者がミスタードーナツを思い浮かべることを立証できれば登録の可能性は原理的にはありますが、なかなか難しいかと思います。
また、不正競争防止法における商品等表示による保護も考えられますが、これも同様に著名性を確保(あるいは周知性と混同の立証)していないといけないので実際の権利行使は難しいでしょう。
まあ、一消費者としては味で勝負していただいて、おいしいドーナツがいろいろなところで食べられるようになるのが一番うれしいんですけどね。