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もと阪神・穴田真規選手にとって、初めての都市対抗1次予選敗退…

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
都市対抗1次予選の決勝、3点を追う9回裏にネクストで素振りをする穴田真規選手。

社会人野球でプレーを続ける、もと阪神タイガースの選手たちが『第88回 都市対抗野球大会』(7月14日~東京ドーム)の1次予選に挑んでいます。滋賀県には藤井宏政選手が所属するカナフレックスと、ことし野原祐也監督が就任したクラブチーム・OBC高島があり、4月8日から行われた滋賀1次予選に出場。また穴田真規選手がいる和歌山箕島球友会も4月8日と15日の大阪・和歌山1次予選に臨みました。滋賀の結果はのちほどご紹介します。まずは穴田選手から。

大阪・和歌山1次予選は和歌山箕島球友会をはじめとするクラブチーム(履正社学園を除く)同士の戦いで、そこを制した1チームが進める近畿2時予選に、ようやく企業チームが出てきます。阪口哲也選手がいるパナソニックもしかり。昨年、2次予選で大阪ガス相手にあと一歩と迫りながら敗れた箕島球友会だけに、2次で勝ってこそ!の思いは強かったのですが…。その前に、まさかの結果となりました。

《大阪・和歌山1次予選 2回戦》

では、4月8日に行われた初戦(日本生命貝塚グラウンド)の結果を書いておきましょう。

八尾ベースボールクラブ-和歌山箕島球友会

八尾 002 000 0 = 2

箕島 230 050 X =12 ※7回コールド

◆バッテリー

【八尾】柴田‐山崎‐川咲‐内田 / 布内

【箕島】松尾(6回)‐桐原(1回) / 水田‐中原

◆三塁打 箕島:水田

◆二塁打 箕島:穴田2、岸 八尾:水口

松尾投手が3回にヒットと四球などで走者を出し、タイムリー二塁打を浴びたものの他はしっかりと抑え、6回3安打2失点。箕島の攻撃は1回、2回、5回と長打に相手エラーや四球が絡み、大量点を奪って快勝しています。穴田選手は3番サードで出場。1回にタイムリー二塁打、5回は2死満塁で見逃し三振でしたが、5回の1死満塁では右中間へ走者一掃のタイムリー二塁打!3打数2安打4打点の活躍です。守りもノーエラーだったとか。

《大阪・和歌山1次予選 準決勝》

6番・野田選手は三塁打と二塁打で貢献!
6番・野田選手は三塁打と二塁打で貢献!
7回にきっちりバントを決めた穴田選手。
7回にきっちりバントを決めた穴田選手。

1週間後の4月15日、大阪ガスの今津総合グラウンドに場所を移して行われた準決勝と決勝。準決勝の第2試合が始まるなり大粒の雨が降り出し、その後も晴れたり曇ったり降ったり。しかも風が強くて寒い、最悪のコンディションでした。

泉州大阪野球団-和歌山箕島球友会

泉州 200 010 000 = 3

箕島 030 000 14X = 8

◆バッテリー

【泉州】小野(7回)‐作本(1回) / 樋口

【箕島】高橋(9回) / 水田

◆三塁打 泉州:服部 箕島:野田

◆二塁打 泉州:関 箕島:森下、野田、岸

これで1死三塁となり、ベンチも盛り上がり…
これで1死三塁となり、ベンチも盛り上がり…
続く岸選手が勝ち越しのタイムリー二塁打!
続く岸選手が勝ち越しのタイムリー二塁打!

箕島先発の高橋投手が1回に二塁打、三塁打、内野安打で計2点を失います。しかし打線は2回、野田選手の三塁打と水田選手の犠飛で1点、さらに2四球と二塁打で2死満塁として、ルーキー・夏見選手が逆転の2点タイムリー!

穴田選手は自打球の影響でベンチスタートでしたが、3回の守備から3番サードで出場。5回にその穴田選手のエラーで先頭を出し、犠打とヒットで追いつかれてしまいます…。でも7回に中前打とボークで二塁へ進んだ夏見選手を、しっかり投犠打で三塁へ。続く4番・岸選手が中越え二塁打で還して勝ち越し!8回には内野安打2本を含む3安打と、2四球などで4点を取って引き離しました。穴田選手は四球です。

完投の高橋投手と、失策を語る?穴田選手

終わったのが14時前で、次の決勝は14時半開始。選手たちは汗と雨で濡れた体を拭き、大急ぎでお昼ご飯を食べていたので話は無理かなと思ったのですが、完投勝利の高橋道岳投手は「大丈夫ですよ」とのことで、少し聞きました。今季初完投?「きょうが今季初先発だったんです」。どのへんで最後までいけそうと?「いや~もう1回、1回が必死でした(笑)」

準決勝で完投した高橋投手。穴田選手と同学年の投手リーダーです。
準決勝で完投した高橋投手。穴田選手と同学年の投手リーダーです。

立ち上がりにいきなり長打連続で失点してしまったものの「1回が終わったところで、みんなに声をかけてもらって、やるだけと気持ちを切り替えられた」と言います。また5回に追いつかれた時は「…しんどかった」と本音がポロリ。だけど以降もよく粘りましたね。最後に「何とか仕事を果たせたのでよかったです」と、心底ホッとしたような笑顔。決勝はスタンドで声援を送った高橋投手です。

3回の守備から出場した穴田選手。エラーもあったけど…
3回の守備から出場した穴田選手。エラーもあったけど…

穴田選手は7回が勝ち越し点につながる犠打、8回は四球を選んでダメ押しのホームを踏みました。なので表情は明るかったですね。ただし5回にいったん追いつかれたのは穴田選手のエラーから。「バットが折れて、そのカスが目に入ってん」。そこまで破片は飛んでいないでしょう。「ほんまやて!カスが入って目をやられてん。だから」と、こっちを指差して「松嶋菜々子に見えるもん」とニヤニヤ。……真剣に聞いて損しました。カスが入ったのも「うそ」だそうですよ。ご安心ください。

《大阪・和歌山1次予選 決勝》

穴田選手が入団した2014年から見ている1次予選、決勝はすべて同じ相手なんですよね。ことしもやっぱりNSBベースボールクラブになりました。そうそう、1次で敗退した2013年もNSBとの決勝で負けています。そのあと3連勝で、昨年は10対1の圧勝。という油断はなかったはずですが…

NSBベースボールクラブ-和歌山箕島球友会

NSB 320 000 010 = 6

箕島 210 000 000 = 3

帽子を飛ばして力投・先発の松尾投手。
帽子を飛ばして力投・先発の松尾投手。

◆バッテリー

【NSB】西原(9回) / 田村

【箕島】松尾(2回)‐寺岡(7回) / 水田

◆三塁打 箕島:岸田

◆二塁打 NSB:山本

1回無死三塁、穴田選手のショート野選で…
1回無死三塁、穴田選手のショート野選で…
三塁打を放った先頭の岸田選手が生還します。
三塁打を放った先頭の岸田選手が生還します。
2死満塁で水田選手がタイムリー!
2死満塁で水田選手がタイムリー!

8日の2回戦で好投した松尾投手が先発。ところが1回に連続四球などで1死満塁とし、連続タイムリーで3点を失います。その裏、箕島も先頭・岸田選手の三塁打と四球に続いて穴田選手が遊ゴロ、これが野選となって1点。さらに2死満塁で7番・水田選手がタイムリーを放ちました。1点差に迫った直後の2回、タイムリー二塁打と犠飛で2点を追加され、松尾投手はこの回で降板。

2回裏は2死一塁の場面で穴田選手が左前打し、次の岸選手は二飛。と思ったら捕れずに落ちて、タイムリー内野安打。5対3となりました。3回から寺岡投手が投げ、4回と5回に1四球ずつ与えるも無失点。7回に1安打(併殺)されただけで、5イニングをしっかりと抑える好投。8回に2四死球とボークなどで2死一、三塁としてタイムリーを許しましたが、9回はクリーンアップを三者凡退で締めています。

ただし箕島打線も同じような攻撃で、3回から7回まで全部3人ずつ(5回に岸選手が相手エラーで出たけど併殺)という内容。8回に2死からヒットと四球があったものの無得点。9回は代打・富樫選手と2番・夏見選手のルーキー2人が左前打して2死一、二塁となり、打席は穴田選手!初球がフルスイングの空振り、1つボールを見て、次は見逃し。カウント1‐2からの4球目にバットが出て空振り三振。試合が終わりました。

「あそこで打てないのが僕…」

穴田選手、決勝ではピッチャーを助ける好守備も。
穴田選手、決勝ではピッチャーを助ける好守備も。
9回1死から代打のルーキー・富樫選手が左前打
9回1死から代打のルーキー・富樫選手が左前打
2死後に同じくルーキー・夏見選手も左前打
2死後に同じくルーキー・夏見選手も左前打
しかし穴田選手は空振り三振で試合終了…。
しかし穴田選手は空振り三振で試合終了…。

この試合後はさすがに取材もしにくくて、西川忠宏監督も「何ででしょうねえ。わからないんですよ。この頃、ずっと負けていなかった相手に負けたり。ずっと勝ち続けていた頃と変わっていないのに。なぜ勝てないのかなあ」とおっしゃいます。「松尾はずっと調子よかったんですよ。寺岡はよくなくて、でも2次に合わせてくれたらと。なくなりましたけどね」と寂しげ。9回ウラ2死一、二塁で穴田選手が三振した場面は「2つ目のストライクを見逃したところで、ああ無理かなと思った」と、ここは苦笑いでした。

その穴田選手は、痛めていた足のアイシングをしながら話をしてくれたんですけど、見れば左足の内側に内出血のあとが。2日前の練習中に自打球を当てたもので「走るのメッチャ痛かった!」と言いながら、しっかり走っていましたね。守備も踏ん張っての送球はナイスだったし。それにしても9回は…。「最後になって真っすぐばっかり来た。あそこで打たれへんのが僕やな」

疲れ切った顔で寂しそうに微笑みます。昨年のシーズン終了時に考えたという自身の進退。ことしが最後と思っているかもしれませんね。だから、できるだけ早く気持ちを立て直して、まず今週末の『JABA子規記念杯野球大会』(松山)で打ってください。これは昨年優勝した大会なので、弾みをつけて6月17日から始まる『全日本クラブ野球選手権』の予選に臨みましょう。

寺岡投手、さすがのロングリリーフ

4番を打つ岸翔太選手は「タイミングもポイントも悪くないのに打ち上げてしまった。きょうも、今まで得意にして打っていたピッチャーやのに。なんでやろ」と苦悩の表情です。とはいえ準決勝では勝ち越しのタイムリー二塁打もありましたし、クラブ選手権の予選は期待していますよ。

復調の兆しが見えた寺岡投手。次は先発で!
復調の兆しが見えた寺岡投手。次は先発で!

3回にリリーフ登板して最後まで投げた寺岡大輝投手は開口一番「決勝で先発できなかったのは、春からの僕の調子の悪さ」と自身を責めます。あまりよくないと聞いていたけど、この日は彼らしいピッチングでした。「7イニングで1失点というゲームを作れたのは、ことし初めてですね。フォアボールはあったけど、それなりにできたのも初めて。投げていて“あ、戻ってきたかな”、“復調のきっかけになるな”と思ったけど、でも2次予選にいけないので」

西川監督も2次予選を任せられたらと期待されていたみたいですね。そう言ったら

「決勝で先発できなかった時点で、負けたのは僕のせいです。どれだけゲームを作っても…」

という返事。おととし大車輪の活躍で、和歌山箕島球友会をクラブチーム日本一に導いた寺岡投手。これはまさにエースの自覚と責任から出た言葉でしょう。

試合後の整列は一様に険しい表情でした。
試合後の整列は一様に険しい表情でした。

滋賀は阪神OB同士の対決

冒頭で少しご紹介したように、藤井宏政選手の所属するカナフレックスに加え、ことし野原祐也監督が就任したクラブチーム・OBC高島も滋賀県ということで、応援しなければならないところが増えましたね。しかも都市対抗の滋賀1次予選は出るチームが少ないので、直接対決は必至だなあと思っていたら…予感的中です。

《滋賀1次予選・1回戦》

4月8日から甲賀市民スタジアムで行われた滋賀1次予選、まずOBC高島は1回戦コールド勝ちの好スタートを切りました。

OBC高島-瀬田クラブ

高島 501 120 3 =12

瀬田 301 000 0 = 4 ※7回コールド

◆バッテリー

【高島】那珂‐川上‐濱崎‐三宅 / 村上

【瀬田】川嶋‐天本 / 瀬津

◆本塁打 高島:松浪3ラン

◆三塁打 高島:濱西、辻田

◆二塁打 高島:森 瀬田:彦坂

《滋賀1次予選・準決勝1》

準決勝2試合と決勝が予定されていた翌9日ですが、雨のため開始を大幅に遅らせて準決勝2試合のみを行い、決勝は10日に延期となっています。OBC高島は7回、四球や松浪選手の二塁打などで1死満塁とし、三浦選手と中野選手が連続タイムリー。森選手の犠飛で計4点を奪って試合を決めました。

OBC高島-甲賀健康医療専門学校

高島 000 000 400 = 4

甲賀 000 000 000 = 0

◆バッテリー

【高島】永井‐川上‐濱崎 / 村上

【甲賀】北野‐辻尾‐横山‐小東‐上迫‐中根‐北川 / 池

◆二塁打 高島:佐竹、松浪 甲賀:池

《滋賀1次予選・準決勝2》

これが初戦だったカナフレックスは2回、日比野選手の3点タイムリー三塁打など打者一巡で11得点!計18安打で23点を挙げ、7回コールド勝ちです。

カナフレックス-湖南BBC

カナ 0 11 3 0 5 0 4=23

湖南 0 0 0 0 0 0 0= 0 ※7回コールド

◆バッテリー

【カナ】岩崎‐中村‐作元 / 千葉‐福田

【湖南】高橋‐中村‐黒田‐濱田‐宮原 / 牧田

◆三塁打 カナ:日比野、新谷

◆二塁打 カナ:藤井、安田2

《滋賀1次予選・決勝》

10日の月曜日に順延された決勝戦は、カナフレックスとOBC高島の顔合わせとなりました。0対0のまま終盤まで進み、8回にOBC高島は佐竹選手の中前打と犠打で1死二塁として、2死後に今崎選手の右前タイムリーで先制。9回は2死から村上選手、白石選手、佐竹選手の3連打で1点を追加しました。OBC高島の先発・那珂投手は3安打完封勝利です。

OBC高島-カナフレックス

高島 000 000 011 = 2

カナ 000 000 000 = 0

◆バッテリー

【高島】那珂 / 村上

【カナ】大西‐宮城 / 千葉

◆二塁打 高島:辻田

カナフレックス、3年ぶりの1次予選敗退

2015年、2016年と滋賀1次予選を勝ち抜いていたカナフレックス。でも1年目の2014年の準決勝で敗れたOBC高島に、今度は決勝で3連覇を阻止されました。OBC高島はその2014年以来3年ぶりの優勝で、5月11日に京都太陽が丘球場で行われる京滋奈予選へ出場します。

普通は県単位で1次予選を行い、次は近畿や東海といったブロックでの2次予選。これを突破すれば都市対抗野球全国大会となるところが、京都、滋賀、奈良の場合は1次のあと近畿2次の前に、カナフレックスの方々は「1.5次」と呼んでいた京滋奈予選があります。3チームのうち2チームが近畿へ進める、という状況の年もありながら…カナフレックスは2度とも勝てませんでした。

その1.5次対策も練って臨んだ今季、カナフレックス・梁川マネージャーは「これが実力です」とひとこと。昨年は藤井宏政選手が三菱重工神戸・高砂の、また大西健太投手がNTT西日本の補強選手として都市対抗本大会へ出場し、ことしはチームで!と意気込んでいただけに悔しさは相当だったでしょうね。

一方、野原祐也監督で新たなスタートを切ったOBC高島は3年ぶりの京滋奈予選進出です。「選手たちが一丸となって頑張ってくれました!次に向けてまた頑張ります」と野原監督。佐竹誠人主将は「一番いい試合ができました!」と決勝を振り返っています。バッティングの状態もチームの雰囲気もすごくいいそうで、期待が膨らみますね。京滋奈予選では大和高田クラブやミキハウスという強豪が相手と予想されます。カナフレックスの分も頑張って、ぜひ近畿2次へ進んでください。

なお、きょう4月18日はカナフレックスが鳴尾浜にやってきて阪神ファームと練習試合を行います。どうやら藤井宏政選手はケガをしているみたいで…昨年もそうでしたよね。あの時は代打で出て足が痛いのに二塁打を放っています。ことしも出てほしいとは思いますが、あさって20日(カナフレックスは21日が初戦)からはJABA長野大会、5月2日からはJABAベーブルース杯と、社会人日本選手権出場をかけた公式戦が続くので、無理はしないでもらいましょう。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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