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「カネロvs.GGG 第3戦を秋に」という声があるが…

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
今のところ、カネロの1勝1分け(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 サウル・"カネロ"・アルバレスがESPNの取材に応じ、「9月にリングに復帰したい」という意思を述べた。ご存知のように5月2日にWBOスーパーミドル級王者、ビリー・ジョー・サンダース戦が決まっていたが、新型コロナウィルスの影響でキャンセル。2020年になってから、カネロはまだリングに上がっていない。

 しかし、「9月復帰」と言っても、この危機がどうなるかは誰にも分からない。

 現在のアメリカにおいて、行政機関や地域が再稼働し始めたのは、バージニア州、サウスキャロライナ州、オクラホマ州、アラスカ州内の数都市だけだ。この4州にしても、州内の全てが動き始めた訳ではない。

 ボクシングの世界戦が最も多く行われるネバダ州は5月以降の活動はまだ検討中。次いでボクシング興行の多いニューヨーク州、ニュージャージー州、カリフォルニア州も、ロックダウン中である。

 ゴールデンボーイ・プロモーションズのエリック・ゴメスは「カネロvs.GGG3は、ファンが熱望している」と鼻息荒くアナウンスしながらも「まだ活動は出来ないから、どうなるか分からない。でも、実現に向かっている」と付け加えた。両陣営は、この秋に両者の第3戦を実現させることに合意したそうが…。 

 コロナウィルスが全世界を覆い尽くす前、GGGのトレーナーであるジョナサン・バンクスも確かに「IBF指名挑戦者のカミル・シェルメタ戦の次は、カネロだ!」と語っていた。

 現役選手の<待てない気持ち><苦しい状況>は理解できるが、2万人規模のアリーナに観客を呼ぶことの危険性を考えねばならない。東京五輪も「再延期は絶対にない」と組織員会会長が語ったが、コロナウィルスの終息が不透明な今、断言していいものか。

 新型コロナウィルスの被害が比較的軽いカンザス州は、1918年に大流行したインフルエンザが発生した地でもある。当地の農場で、人間と鳥が豚を介してウィルスに感染したことが発端となった。が、今回、そこそこの状態に被害が抑えられたのは、過去から学んだから? と問われれば、必ずしもそうではない。

 「確かに自宅待機は辛いけれど、再始動は再始動でコロナウィルスをもらってしまう恐怖感がある。何が正解かなんて誰にも分からないよ」

 カンザス州在住の元プロボクサーで現自動車整備工の言葉が、虚しく響く。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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