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小柳津林太郎が語る「仕事論」【新春特別対談 小柳津林太郎×倉重公太朗】前編

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

倉重:「倉重公太朗の労働法の正義を考えよう」、今回は二代目バチェラーで現在は実業家の小柳津林太郎さんにお越しいただいています。よろしくお願いします。

小柳津:よろしくお願いします。

倉重:お願いします。(拍手)自己紹介をよろしいですか。

小柳津:サイバーエージェント(CA)という会社に入社して、今年まで勤務していました。CAでは、子会社の社長なども経験させて貰いました。

CAを退職してからは、会社を立ち上げ、顧問業、オンラインサロン業、芸能活動、9月からは株式会社GHOSTを立ち上げて、人生を豊かにするプロダクトとサービスの開発に着手しております。今取り組んでいることは全て新しいチャレンジになるので、飽きることなく毎日忙しくしています。

倉重:まさにハイブリッドですね。多分、そういう働き方が性格に合っているのでしょうね。

小柳津:そうです、サラリーマンをやりながら新しいチャレンジを何個もやっていくほうが、長丁場で見たときに良いと思うんですよね。生活を支えるお金は稼ぎつつも、生涯現役をテーマに自分のライフワークとしていそしめる「志事」を定年退職時までに見つけている人材をどれだけ増やせるかが重要だと思っています。

倉重:まさに、人生100年時代の働き方ですね。ところで、小柳津さんといえば、やはり2代目バチェラーという人生の転機があった訳ですが、これはどういう経緯で?

小柳津:友人の他薦です!「林太郎さんに絶対合う番組があります」と言われました。最初は断ったのですが、「1回だけで良いから話を聞いてみてほしい」と言われました。

僕をよく知る長年の友達のおすすめだったので、Amazonに行き面談をしたところ、トントン拍子で、ぜひ出てほしいとなったのですが。まさか3カ月会社を休まなければいけないと思っておらず、すごく悩みました。

倉重:3カ月の休みを取るのはキャリア的に悩みますよね。

小柳津:そうです。その当時は長年ゲーム事業にコミットしていて一応、スタッフ部門の責任者でしたから。

倉重:たくさん動いているプロジェクトもありますよね。

小柳津:そうです。ただ、私は元々俳優志望だったこともあって、バチェラーは壮大なプロジェクトでたくさんの人が関わっているので、そんなチャンスは2度とないだろうと思って。決断しました。サイバー社は当時12年勤めていたので144カ月です。そのうちの3カ月と思えば、気持ちが若干楽になりました(笑)

倉重:3カ月ぐらい好きに使わせてくれよと。休むこと自体で言えば、例えば、妊娠、育児、介護なども何カ月も休むこともあり得ますよね。

小柳津:はい、広報の方に、「男版の育休だと思えばいいですよ」と言われました。「なるほど、そういう捉え方があったのですね。では、行ってまいります」という流れです。

倉重:行っている間のところは、バチェラー2を見て頂くとして、帰ってきてから、また「働く」ということに対する意識の違いみたいなのは、変わってきましたか。

小柳津:はい。元の部署に戻ったら、自分の後任の人間がきちんと役割を担って頂いていたので、自分が新しいチャレンジをしても良いかなと思えました。本当に、前職の仲間達には感謝しかありません。

倉重:これは育休あるあるですね。戻った時には別の人が仕事を回しているので、自分の戻る場所はどうなる、という。

小柳津:そうです。これはやはり戻ってきた時に、他の人が空いた穴を埋めてくれているので、戻るよりかは、新しいところで新しいチャレンジをする方が自他共に良いと思った次第です。ということで、ゲーム管轄から絶賛注力中のAbemaTVに自ら異動志願しました。

倉重:なるほど。育休からの復帰を男性で実際に体験されたのは貴重ですね。

小柳津:そうですね。私は、仕事に対するスタンスとして、指示されるのがあまり好きではありません。自分で勝手に仕事をつくって、価値を生む。AbemaTVでもそういうスタンスで頑張ろうという決意でした。

倉重:今度はAbemaTVのお仕事に行かれて、どうですか、働くことに対する意識は変わりましたか。その前にバチェラーで大きな物語の主役になってから、また一サラリーマンとして働くのは、すごくギャップがありそうですが。

小柳津:そこからやはり、普通にサラリーマンとして働く以外に、メディア、広告の出演のオファーが増えました。

倉重:CMにも出ていましたね。

小柳津:広告のキャスティングをする側からキャスティングされる側に少しずつ変わりはじめました。AbemaTVでも出る側のお仕事が増えていきました。サラリーマンの本業50%副業50%になりはじめました。

倉重:そうなってくると、バチェラー出演前とは随分ステージも変わるので悩みも増えるのではありませんか?

小柳津:はい。その頃、悩んでいたこととしては、僕自身バチェラーに続く、より大きなチャレンジとはいったいなんなのか?起業することなのか?俳優に転向することなのか?ということです(笑)サイバーエージェントという会社は大好きだったので、会社のために貢献したいという気持ちは人一倍あったのですが、人生悩みはじめましたね。とにもかくにも、「オワコン」になることを一番恐れていました。

倉重:そんな葛藤があったのですか。

小柳津:一サラリーマンのままでバチェラー並のチャレンジができるのかと考えたら。

倉重:サラリーマンのままででは難しいかもしれませんね。

小柳津:新しく子会社を作って事業チャレンジするか、起業するか、それとも芸能の道一本で行くかと。それともハイブリッドという道があるのかなと、その時に初めてハイブリッドな働き方を意識しました。

倉重:新しい働き方ですね!長年勤めた会社を辞めるというのは不安はなかったですか?

小柳津:副業があったのと、それなりのビジネス経験と人脈があったので、生きていく上ではなんとかなるだろうと思っていました。

倉重:ちょうど副業は、今まさに副業解禁と政府も言っています。どんどんやってくださいという流れの中で、だんだん本業と副業のバランスの取り方が難しいと思う人は、結構多いと思います。読者中に、今現在悩んでいる人もいるのではないかと思います。その辺のバランスの取り方を、ぜひ小柳津さん、お聞かせください。

小柳津:バランスを取ろうとしていても、やはり大きい会社で社員としてやっている以上、組織の大方針に沿っていく必要があると思っています。

倉重:そうですね。目立った活動をすると「あの人ね」と悪く言われたりするんですよね。

小柳津:オフィスを不在にしながら撮影しているので、「あいつはどこにいるんだ!?」と周囲にハテナを与えてしまうので、これはそろそろ進退を決めなければと思いました。

倉重:そんな空気になったのですね。

小柳津:やはり一社員でやっていると周囲との折り合い含め、迷惑をかけることもあり、難しいと思いまして……会社には愛がありましたが、辞めることにしました。

倉重:そこまでですか。やはりあれだけのドラマの世界にいると現実とのギャップに悩むこともありますよね。

小柳津:ある種、自分の迷いに対してブレーキを掛けました。

倉重:よくそこで辞めると決断できましたね。そこで我慢して、もっと辛くなっている人とか結構います。そこで辞めようと思える人は、今の日本では少ないです。迷っている人は、大勢いると思いますので、ぜひ、そういう方にアドバイスをお願いします。

小柳津:日本はやはり真面目な国なので、本当に辛いと思えば、ちょっと休憩すれば良いと思います。一人で抱え込まず誰かに相談することが得策だと思います。追い込まれると、一本道しか見えないのですが、実は道は無数にあるのです。その選択肢が見えなくなるからこそ、客観的に選択肢を見出してくれそうな人に相談するがベストだと思っています。

倉重:そうですよね。ちなみに、退職については上司の方や先輩に止められなかったですか。

小柳津:止められなかったです。あいつは止めても仕方がないというキャラだったので。元を辿れば、長らくCAの役員を目指してやっておりましたが、数年前に、役員改選で一喜一憂するのが違うなと思いはじめていました。上にあがる以外にも道はあるだろうと思いはじめました。会社は好きですし、後輩たちにも「役員になることだけが道ではないよ」という、アップorアウトではなく、斜め上を格好よく走る先輩でありたいなと思ったんです。今回はたまたま僕がはみ出てしまったというイメージですね。

倉重:その考え方はすごく大事です。やはり終身雇用型の働くという概念しかないと、結局、その会社の中で、出世できなかったり、ポストがなかったりで、役員になれなかったりすると、もう人生が終わったみたいな、そう覚えるような感覚の人がいますが、そうではないということですから。小柳津さん自身は、辞めてから何をやろうと決めていたのですか?

小柳津:長らく一つの会社で走ってきたので、まずは休憩しつつ、次何のチャレンジをするかをふらふらと模索することにしました。

5カ月間はフラフラしつつ、多少恋愛しつつです(笑)

倉重:恋愛もですか(笑)

小柳津:はい。それはさておき、様々な人と会って、次どういうビジネスをやるかという構想を立てる中で、起業する前に一瞬転職も頭によぎったのですが、そもそもマルチな活動を許容できる会社なんて、正社員だと難しいだろうと一瞬でその選択肢は捨てました(笑)

倉重:それは難しいですね。

小柳津:いくつかオファーもらいましたし、もちろん条件とかすごく良かったのですが、お金ではないと思いました。

倉重:せっかくバチェラーに次ぐチャレンジを!ということでCAを辞める決断をしたのですから、単なる転職ではもったいないですね。

対談協力:小柳津林太郎(おやいづ りんたろう)

1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、サイバーエージェントに新卒入社。マーケティングプランナーを経て、入社3年目で子会社「CyberX」の社長に就任。29歳のときには米国子会社の立ち上げにも関わる。2018年、Amazon Prime Videoが手掛ける婚活サバイバル番組『バチェラー・ジャパン』に2代目バチェラーとして登場、人気を博す。その後、AbemaTVアナウンス室部長などを経験し、2019年に独立。現在は、DMMオンラインサロンにて、「ハイブリッドサラリーマンズクラブ」の運営や、”Stay Gold TV”というYouTube チャンネルの立ち上げ、複数社の顧問業に従事している。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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