スプーンや歯ブラシも有料になる!? プラスチック新法は暮らしにどう影響するのか
プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下「プラスチック新法」)が、2022年4月1日に始まります。プラスチック新法は、プラスチック使用製品の設計から廃棄物の処理までの全てにおいて、プラスチックの資源循環の取り組みを促進するための措置を盛り込んだ法律です。
この法律の施行前からSNSなどでは「レジ袋に続いてコンビニのスプーンやフォークも有料になるって!」「ホテルの部屋に歯ブラシやくしがなくなる!」などのうわさが駆け巡っていますが、本当にそうなるのでしょうか。プラスチック新法が私たちの生活にどう影響するのか詳しく説明します。
プラスチック新法は何を定めているのか
日本ではこれまでも容器包装リサイクル法の制定など、プラスチックごみの増加を抑制するためにさまざまな取り組みがありました。2020年7月1日に開始したプラスチック製買物袋(いわゆるレジ袋)有料化制度もそのうちの一つ。プラスチック新法では、これまでの3R(リデュース、リユース、リサイクル)に加え、Renewable(再生プラスチック・再生可能資源等)に取り組みやすい環境を整えることを目的としています。
プラスチック新法では以下の五つの措置を定めています。
上記の措置に沿って私たち消費者に求められるのは、環境に配慮したプラスチック製品を積極的に選ぶ、事業者などの自主回収や自治体の分別ルールに従ってプラスチック製品の分別・回収・リサイクルに協力する、プラスチックを過剰に使用しないよう心がけることですが、特に私たちの生活に大きく関わるのは自治体の分別ルールが大きく変わる可能性と特定プラスチック使用製品の使用の合理化です。
現在多くの自治体では容器包装リサイクル法に基づき、プラスチック製容器包装を資源として回収していますが、これに加えて、今まで燃えるごみなどとして回収していたプラスチック製品も分別・回収・リサイクルの対象となります。分別ルールの変更は自治体によって異なりますので、今後変更があることを念頭に置いておきましょう。
そしてもう一つ、プラスチックを過剰に使用しないことを目的とした「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」は、お店などでのプラスチック製品の提供方法が変わるとともに、私たち消費者のライフスタイルの変革に協力を求めるものとなっています。
特定プラスチック使用製品の使用の合理化とは
「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」とは、国が特定プラスチック使用製品として定めたものを無償で提供している対象事業者が、提供方法や製品の工夫などの中から有効な取り組みを選択し、提供量の削減に取り組むことです。この「特定プラスチック使用製品」に指定されるものは以下の12品目の製品です。
合理化の手段は「提供方法の工夫」と「提供する特定プラスチック使用製品の工夫」です。具体的には次のような方法が挙げられます。
・紙ストローや木製スプーンを提供する
・スプーンやフォークを有償で提供する
・飲み物にストローをつけず利用が必要な場合にだけ声をかけてもらう
・宿泊施設の部屋に歯ブラシやカミソリを置かず、必要な人がフロントに声をかけたり、バイキング形式で取ったりする
・テイクアウト飲料のふたをストロー不要な飲み口付きのものに変更する
・クリーニング店でハンガーを店頭回収しリユースやリサイクルを行う
対象事業者は、こうした対応の複数を組み合わせたり、実施が容易なものから取り組んだりするなど、対応の仕方は自由です。この法律が施行されたからと言ってすぐさまスプーンや歯ブラシが全て有償提供になるということではありません。
ですが、今までコンビニでプリンやスパゲッティを買ったら、何も言わずに提供されていたプラのスプーンやフォークは、必要かどうかの確認があるでしょう。店によっては有料化もあり得ます。宿泊施設ではすでにアメニティを必要な人だけが、フロントから持っていく方式をとっているビジネスホテルもありますが、それがスタンダードになるかもしれません。私たち消費者は、使い捨てプラスチック製品の提供を辞退したり、繰り返し使用できる製品を使用したりするなど、プラスチックを過剰に使用しないよう心がけることが重要になります。
プラスチック新法施行の背景
プラスチック新法が施行される背景には、CO2の排出抑制や海洋プラスチック問題もありますが、アジア諸国の廃プラスチック輸入規制強化の影響が大きいと言われています。
今までは国内で排出されたプラスチックごみの多くを、資源としてアジア諸国に輸出していました。しかし近年、中国のほか、タイやベトナム、マレーシア、インドネシアなど東南アジアの多くの国で輸入禁止などの規制が続々と強化されています。そのため、今後はより一層国内処理の必要性が高まるとともに、プラスチックごみの排出を抑制する必要に迫られているのです。
2018年のUNEP(国連環境計画)の報告書『シングルユースプラスチック』によると、日本人1人当たりのプラスチック容器包装廃棄量は、アメリカに次いで世界第2位。日本は世界的な脱プラスチックの流れから一歩遅れを取っていると言えるでしょう。
プラスチックごみの削減には法規制なども必要ですが、プラスチックのライフサイクル全般に関わる事業者、自治体、消費者、それぞれの協力が不可欠です。新法の趣旨を理解し、循環型社会へ移行するため各々ができることに取り組んでいきましょう。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】