Yahoo!ニュース

ウクライナ国内で進む「AI技術搭載のスマート軍事ドローン」製造

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「ドローン製造企業がウクライナ国内で80以上まで増加」

2023年9月に欧州のメディアのラジオ・フリー・ヨーロッパがウクライナでの軍事ドローンを開発している会社を動画で報じていた。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。ウクライナ軍では監視・偵察目的で導入した民生品ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍の上空から落下させてダメージを与えている。小型民生品ドローンに爆弾を搭載して標的に突っ込んでいく、いわゆる神風ドローンによる攻撃もよく行われている。

そして世界中の多くの国々からもドローンを輸出したり、軍事支援で提供してもらったりしているが、ドローンは戦場で見つかってしまうとすぐに破壊されてしまうので、足りていない。そこでウクライナでは多くのドローンが国内で製造されている。

ラジオ・フリー・ヨーロッパが紹介していたドローン製造会社は2022年6月に設立されたばかりで、創業者のドミトロ・コヴァルチュク氏は「我々は敵軍よりも早くスマートな軍事ドローンを先に開発しようとしています。スマートな軍事ドローンを所有している方がこの戦争に勝ちます」と語っていた。

そしてAI技術を搭載したドローンを紹介していた。AI技術を搭載して航行するのでGPSに頼らなくても航行できるため、ロシア軍に上空でジャミング(電波妨害)などで機能停止されにくいドローンを開発した。また搭載しているカメラの精度も向上して地上の様子が鮮明に見えるようになった。

創業者によると設立当初の1年前には1か月に3機の製造しかできなかったが、現在では1か月で120機のドローンを製造している。また今ではドローンの製造(組立)だけでなく部品もウクライナで製造している。

また同氏は「現在、モスクワまで飛行できるドローンも開発しています」と語っていた。同氏は「ロシア軍がウクライナに侵攻してきた時にはウクライナ国内には5~7つのドローン製造企業しかありませんでしたが、現在では80以上まで増加しました。多くの企業がAI技術の搭載などスマート軍事ドローンの開発を進めています」とコメントしていた。

ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍もイラン製軍事ドローン「シャハド」でウクライナ軍に突っ込んできたり、ウクライナ軍と同じように民生品ドローンに爆弾を搭載してウクライナ軍に爆弾を投下して攻撃を行っている。そのため両軍によって上空のドローンの迎撃と破壊も頻繁に行われている。ウクライナ軍は2023年9月の1か月だけでロシア軍のドローンを600機以上破壊している。ドローンは監視・偵察用も攻撃用も何台あっても戦場では足りない。

▼ウクライナ国内でのドローン製造を伝えるラジオ・フリー・ヨーロッパ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事