日経新聞の株式欄がゼロになった東証システム障害
KNNポール神田です。
■富士通が設計するシステムがダウンした
日本独自の特注システムが、東証のシステムを支えてきた
このような経緯で、東証は日本製の富士通の特注システムとのつきあいがある。
■2020年10月2日の日経新聞の株式欄は取引がないページが続いた…
もちろん、これは東証で前日、株式の取引がまったくおこなわれなかったことを表しているページとなった。電子版でもこのとおりだ。
1年のうちでも、四半期の始まりでもあり、各種制度の変わり目の節目でもある10月1日はリリースも多く、この日を期に昨年、消費税は10%となり、今年は酒税も変わった。世界でも三番目の市場である東証マーケットのこの日のシステムダウンは手痛い。
過去にもシステムダウンは発生しているが、一番大変なのは、自然災害でいうところの『台風』などと違い、『地震』同様に予測不可能なところだろう。セキュリティ面などでの堅牢性は幾度にも守られているが、今回のような制御用のメモリでのエラーが原因となると、再現性が見つけにくく、どんな状態の時に発生するのかの検証が非常にむずかしい。
当然、システムダウンの原因が追求できないと世界的なマーケットの信頼性をもそこなう可能性が高い。それでなくても、日本の株式市場は、前場と後場に別れて取引時間が短いということもあり、海外からの個人投資家にとっては日本時間の昼休みまで計算しなければならないというデメリットもある。もしも世界の市場に前場と後場で昼休みを取られていたら、マーケットは一日に2回立ち上がりと終わりを迎えなければならない。
これは、グローバルという視点よりも、今までと変わらないことの良さを日本がずっと享受してきたからではないだろうか。すべて『日の丸システム』の中でグローバルの中では、異質なマーケットとなっているのだ。昼休みは交代で取ればよいのではないだろうか?
それと同時に、売りも買いも、事前に自動で大量の注文を受けているからこそ、東証側は売買システム『アローヘッド』を簡単にリスタートすることができなかった。
■不幸中の幸いは、米株式相場が上昇し、香港市場が祝日で、トランプ感染の発表前
それに加えて、トランプ大統領夫妻のPCR検査要請反応の前だったことも幸いだったと付け加えておきたい。それでも、今後、同様のことが起きた場合のリセット対応策では、ロボット投資などが自律的にリセットに対応してくるだろうし、属人的な予約はすべてキャンセルされるなどの不公平を生む可能性もでてくることだろう。
■今までと何も変わらないものを提供しつづけるところにDXはない
筆者は日本経済新聞を10代の頃から愛読してきている…。祖父の時代から回し読みをしながら、20代からは自分で契約しているのでかれこれ40年近いサブスリプションだ。
株を覚え始めた頃には、四季報と日経の朝刊の株式欄を見ながら、電話で証券会社に注文を行っていた。そして、ネット証券の時代になってからは、新聞に掲載された機能の株式欄と電話はまったく不要となった。取引のコストも格段と下がるようになった。
価格を設定しておけば、売買の注文も自動化することができるようになった。
さらに、GoogleSpreadsheetで気になる価格をスクレイピングしてきて分析するプログラムなどもノンプログラマーでもできるようになった。ユニークなのは、PAYPAYのポイントの『ボーナス運用』でポイントを運用することもできるようになった。Tポイントで得られたポイントで国内投資ができる『ネオモバ』などもある。そう、ポイントで得られたものを消費にまわしてしまうだけでなく、本来はなかった『あぶく銭』として投資運用することによって、お金に働かせる利息の金融だけでない投資の世界も知るきっかけが生まれることだろう。ポイント発行体企業としてもポイント退蔵益をまとめた運用に回し、手数料分も回収できる。ポイントの外部換金のスピードを遅らせながらも、自社の短期負債を投資資金として活用できるのだ。
ひとつのテクノロジーが生まれると、それをレバレッジとして新たなビジネスモデルが誕生する。
日経新聞の電子版のテレビ・ラジオ欄をクリックしてもテレビ番組が再生されるわけでもない…。
EPG(電子番組ガイド)が地上波デジタル放送で提供されてもう何年たつのだろうか?
テレビを見るのに、朝刊をひろげて番組を予約するなんてことは誰もしていないにもかかわらず、毎日紙面がさかれている。いや、話題になった番組だけ、全録マシンから再生するなんてことができる時代にだ。
そう、昨日の株式欄とテレビ・ラジオ欄が紙に印刷され続ける時代を決別をしない限り『新聞』というメディアはDXできない。