マルシュロレーヌの歴史的な偉業は、残念ながらJRA賞特別賞にも選ばれず
年度代表馬はエフフォーリア
1月11日、2021年度のJRA賞の各賞受賞馬が発表された。
概ね予想された通りの結果となり、受賞した各馬はそれに見合った成績を残していると納得出来る反面、受賞を逃した馬の中にも選定されておかしくないと思える面々がいた。筆者はフリーランスの立場のため、投票権がないのだが、記者クラブ所属の有資格者の中には相当頭を悩ませた方も数多くいた事だろう。
例えば年度代表馬。こちらは3頭に投票があったが、296の有効投票数に対し277票を得て選定されたのがエフフォーリア(牡3歳=以下、全て21年における年齢、美浦・鹿戸雄一厩舎)。他ではラヴズオンリーユー(牝5歳、栗東・矢作芳人厩舎)に18票、マルシュロレーヌ(牝5歳、栗東・矢作芳人厩舎)に1票が投票された。
日本馬として史上初めて1年のうちに海外GⅠを3つも制したラヴズオンリーユーがもう少し票を集めるかと思ったが、結果的にはエフフォーリアが圧倒的な支持を得た。ラヴズオンリーユーの功績は年度代表に選定されても文句のないモノであったが、香港の2000メートルはルーラーシップやネオリアリズムなど日本国内でGⅠを勝てなかった馬でも勝利した事のあるレース。19年には同様にウインブライトが2競走を制していた。このように過去のデータ的には決して高い壁とは思えない点が図らずも評価を下げてしまったのかもしれない。
また、ブリーダーズCフィリーアンドメアターフ(GⅠ)の2着馬マイシスターズナットや香港カップ(GⅠ)の2着馬ヒシイグアスがいずれもGⅠではほとんど実績のない馬だった点もラヴズオンリーユーにとっては不運だったかもしれない。天皇賞(秋)(GⅠ)でヒシイグアスに決定的な差をつけたばかりかコントレイルやグランアレグリアも撃破したエフフォーリアの方が評価されるのも自然といえるだろう。日本馬として史上初めてブリーダーズCを優勝した点はもっと評価されて良いと個人的には思うのだが、かといってエフフォーリアが選定されないとなるとそれはそれでどうかと思うので、ラヴズオンリーユーにとっては時の運が向かなかったと考えるより仕方がない。
残念だった選外
一方で残念だったのはマルシュロレーヌだ。こちらはブリーダーズCディスタフ(GⅠ)を優勝。ダート王国アメリカでダート部門のブリーダーズCを制しながらも、最優秀4歳以上牝馬にも同ダート馬にも選定されなかった。テーオーケインズ(牡4歳、栗東・高柳大輔厩舎)の実績は立派であり、最優秀ダート馬に選定された事に文句はないのだが、私個人に投票権があればおそらくこの部門はマルシュロレーヌに投票しただろう。
ブリーダーズカップの歴史やそれがいかに権威のあるレースであるかは文字数がかさむのでまた別の機会に記すが、一発で年度代表馬級と思えるレースとして凱旋門賞(GⅠ)以外ではブリーダーズCクラシック(GⅠ)と同ターフ(GⅠ)等があると、あくまでも個人的には考えている。ディスタフは牝馬限定という点でこれらのレベルと比較すると確かに少し落ちるのは事実だが、とはいえ北米のダートGⅠであり、それもブリーダーズCである。過去にも何頭もの日本馬が跳ね返されてきた北米の牙城と言って過言でないダートGⅠ。その更に頂点であるブリーダーズCを制したという歴史的偉業はもっと称えられて然るべきだと思う。
せめて特別賞にでも選ばれれば、ブリーダーズCが世界中で威厳のあるレースであり、それを勝つ事がいかに偉業であるかを知らないライトファンにもアピール出来ただけに、残念でならない。