Yahoo!ニュース

関ジャニ∞ 7人と豪華アーテイストとの個性が”セッション” 新作『ジャム』に感じるバンドとしての未来

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

関ジャニ∞のニューアルバム『ジャム』が、新規ファンを取り込み、好アクション

ここ数年、その“音楽力”を磨いてきた関ジャニ∞の“修行”の証とでもいうべきアルバム『ジャム』が6月28日に発売され、好調だ。デイリーランキングで1位を続けており、その数字も過去のどの作品をも上回る勢いで、SNS上では「今回初めてジャニーズのアルバムを買った」「初めて関ジャニのアルバム買ったけど聴き応えがある」といったコメントが多く見られ、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系/以下『関ジャム』)やフェスを通して、彼らの魅力に触れ、関ジャニ∞というバンドに、そのアルバムに興味を持った新規ファンの開拓ができている事が大きい。

2015年5月10日よりテレビ朝日系で放送中の『関ジャム 』が先日放送100回目を迎えたが、彼らがこの番組で様々なアーテイスト、プロデューサー他の表現者から吸収し、感じた事、影響を受けた事が、このアルバムには詰まっている。もちろんこの番組だけではなく、7人が映画、ドラマ、舞台、CM他、とにかく色々な場所で得た事、感じた事が音楽と溶け合い、『ジャム』というアルバムに昇華されている。ここに関ジャニ∞の強さがある。

関ジャニ∞というバンドに創作意欲を刺激された、名だたるアーティストが楽曲を提供

『関ジャム』で共演したり、関係性を築き上げたアーティスト、プロデューサーから提供された作品とや、メンバーのオリジナル曲などで構成された、濃く、厚く、そしてロックでポップな一枚に仕上がっている。関ジャニ∞のバンドとしてのポテンシャルの高さに興味を持って、この作品を手に取ったであろう音楽ファンも、コアファンも納得のクオリティの高さだ。

それにしても作家陣の豪華さはその名前を見るだけでもワクワクしてくる。前作『関ジャニ∞の元気が出るCD!!』(2015年11月)では、OKAMOTO’S、KANA-BOON、サンボマスター、峯田和伸(銀杏BOYZ)、宮藤官九郎など、様々なクリエイターが楽曲を提供しているが、今回も、ニセ明、水野良樹(いきものがかり)、岡崎体育、蔦谷好位置、BEGIN、UNICORN、レキシ(池田貴文)など、人気アーティスト、プロデューサーが大集結し、アルバムを彩り豊かなものにしている。もちろん番組で共演したからというノリだけで楽曲を提供したわけではなく、関ジャニ∞メンバー全員の、その音楽と真摯に向き合う姿勢に感銘を受け、作家としての創作意欲を掻き立てるものを、関ジャニ∞というバンドに感じたからだ。

ニセ明×菅野よう子、水野良樹×本間昭光、いしわたり淳治×蔦谷好位置等、強力タッグが実現

ニセ明作詞・作曲「今」は、前向きな歌詞と高揚感のあるメロディを、菅野よう子の疾走感のあるゴージャスなアレンジが包み、7人の声と相まって、聴き手の心を躍らせる。作詞いしわたり淳治、作曲・アレンジ蔦谷好位置という超人気クリエイターがタッグを組んだ「DO NA I」は極上のパーティーチューン。「えげつない」は注目のアーティスト・岡崎体育が手がけたヒップホップチューンで、メンバー同士の“フリースタイルラップバトル”は必聴だ。UNICORNが提供した「S.E.V.E.N転びE.I.G.H.T起き」は、ライヴでメンバーのバンドアンサンブルが炸裂して、盛り上がっているところが目に浮かんでくるロックナンバー。

美しいロックバラード「夢への帰り道」はBEGINからの贈り物だ。前向きな歌詞を切ないメロディに乗せ、想いを込めて歌う7人の表現力がさらに切なさを増幅させる。いきものがかり水野良樹が作り上げた「青春のすべて」は、変わっていくものと、変わらないもの、を鮮やかに描いた、新鮮さとどこか懐かしさを感じさせてくれる美しいバラード。本間昭光の、アナログの温もりを感じさせてくれるような優しいアレンジが、7人の歌をより強調し、光と影をしっかり感じさせてくれる今までにはないタイプの一曲に仕上がっている。

このように、楽曲を提供したアーティスト、クリエイターが関ジャニ∞の7人を独自の解釈と研究で、外から見た関ジャニ∞像を提示し、これはメンバーにとってもファンにとっても新鮮だったのではないだろうか。そしてその楽曲達は、関ジャニ∞というバンドグループの、さらにディープな部分を引き出し、メンバーはまた新たな武器を手に入れた。

7人の個性とアーティストの個性が絡み合い、熟成された『ジャム』

このアルバムに感じる“強さと新鮮さ”は、豪華なアーティストからの提供曲に感じる、それぞれのアーティストのカラー、特性と、メンバーの個性が色濃く出ているオリジナル曲から感じる“らしさ”とが、いい“塩梅”で絡み合い生まれてきたものだ。丸山隆平・安田章大・錦戸亮・大倉忠義による「ノスタルジア」(初回限定盤Aのみ)、横山裕・渋谷しばる・村上信五が歌う「Answer」(初回限定盤Bのみ)のユニット曲は、曲調は違えど30代半ばを迎えたメンバーのリアルな想いが詞に投影されている。安田が作詞・曲を手がけた「Never Say Never」(全盤種収録)もハードなロックサウンドに乗せ、これからも突き進むのみという意志表示を歌にし、さらに安田は「JAM LADY」(通常盤のみ)では、スカ、ロック、ヒップホップなどのフレーバーを取り込んだゴキゲンなパーティソングを聴かせてくれ、その幅広い音楽性を見せてくれる。渋谷が手がけた、生々しいバンドサウンドが印象的な「生きろ」(通常盤のみ)、錦戸が作った「Traffic」(通常盤のみ)は、バンドが持つグルーヴが際立っていて、疾走感が気持ちいい。

このように7人それぞれの個性がしっかり主張し、リアルな姿を浮かび上がらせ、アーティストが提供した楽曲が、スポットライトのような強い光となって、さらに7人の姿をハッキリと映し出している。

番組で経験した”セッション”が『ジャム』へと昇華

7人は『関ジャム』で様々なアーティストと共演し、緊張感の中で音楽を通して心と心で会話をし“ジャム”楽しんだ。それはその瞬間にしか生まれない刹那的なものかもしれないが、『ジャム』にはそこで生まれた繋がりが、しっかりと作品として残っている。個性と個性とが絡む、そういう意味では血が通った一枚、想いが幾重にも重なっている一枚になっている。

関ジャニ∞オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

田中久勝の最近の記事