日本で売れたゲーム機を販売台数で比較 どのゲーム機が成功かを考察
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が、自社の情報発信サイト「プレイステーションブログ」で、品不足が続くプレイステーション5(PS5)の供給量増加について言及しました。今後は、PS5がどこまで出荷台数を積みあがるかに注目が集まりそうです。そこで気になることがあります。ゲーム機は何万台売れたら“合格ライン”といえるのでしょうか。そして日本で最も売れたゲーム機は……。
ゲームの業界団体が発行する書籍「CESAゲーム白書」には、各ゲーム機の累計出荷数が公開されています。任天堂のゲーム機は、国内・海外の内訳まで詳細に記されている一方、ソニーのゲーム機は国内・海外の内訳が伏せられています。ソニーは決算でも、ゲーム機の地域別出荷数は開示していません(いずれ、ぜひ公開してほしいところ)。
とはいえ、第三者機関などの調査データがあります。メーカーの発表とは基準が異なるため、あくまで「参考」になりますが、イメージをつかむには良いのではないでしょうか。
◇国内で3000万台売れた二つのゲーム機
国内で最も売れたゲーム機は、「ニンテンドーDS」の3299万台です。続いて「ゲームボーイ」の3247万台となります。
そこに割って入ろうとしているのが「ニンテンドースイッチ」です。昨年9月末の時点で国内だけで2696万台を出荷。今後も数字は積みあがるでしょう。しかし、これだけ売れたのにまだ3000万台に届いていないのです。3000万台のハードルの高さが分かりますね。
対して、ソニーのゲーム機で最も売れたのはPS2で、2000万台を超えます。そして国内2000万台の指標も、なかなか大変。「ニンテンドー3DS」は2526万台を売りましたが、「ファミリーコンピュータ」でも1935万台。社会的ブームになった「Wii」でも1275万台に留まっています。
そして、世界で1億1700万台以上を出荷したPS4ですが、日本国内では、強化版の「PS4 Pro」を含めても1000万台弱といったところです。ちなみにゲーム総合情報メディア「ファミ通」が発表している推定の累計販売台数は950万台弱です。
◇ゲーム機の売れた数 あくまで指標の一つ
要するに、ゲーム機が国内でどれだけ売れたら“合格ライン”なの?と問われると、意見が割れるのは必至です。そしてゲーム機の出荷数・販売数は、大きな指標の一つですが、それだけで成功・失敗を判断するのは難しいのです。
なぜなら、ゲーム機やソフトの業績はもちろん、有料サービスを加え、総合的に見て判断する必要があり、それは決算という形で出てきます。そして本業のもうけを示す営業利益では任天堂が上ですが、売上高で行くとソニーのゲーム事業(SIE)が上に来ます。昔であれば、ヒットしたゲーム機を出した企業の業績が独り勝ち状態になり、大変分かりやすかったのですが、今ではそうではないのです。
決算でもこんな状況です。狭い日本市場だけを見て「売れた」「売れない」と判断すること自体、意味がなくなりつつあるのかもしれません。仮に日本で爆発的に売れたとしても、ゲーム市場でメインの欧米で苦戦すれば、ビジネス的に困る話になります。これはPS5の話だけでなく、いずれ登場する各社の後継ゲーム機にも当てはまる話です。
ゲーム機の売れ行きは、価格の安さも影響します。そして、ファミコンの時代は「一家に一台」で、ゲーム機は故障しない限り使い続けるものでした。しかし、今は「一人一台」の時代で、買い替えもしますし、複数台の所有も珍しくありません。ゲームに対するイメージや認知度も、ファミコン時代より上でしょう。こうした背景を考えると、ゲーム機の出荷台数は、増加する素地があるのです。
それでもあえて、国内の“合格ライン”を言え!というのであれば、1000万台と答えるでしょう。しかし、繰り返しになりますが、国内でゲーム機が1000万台売れても、それだけで「よし」とは、思いません。企業の業績が好調であってこそ、意味があるからです。
自分の国でどのゲーム機が売れているのかというのは、気になる話であるのは間違いありませんが、自分の目に見えるものがすべてではありません。目の前のことに一喜一憂しつつも、他のことを広く見る「視点」を併せ持つことが大事なのではないでしょうか。