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ハノイ戦に挑む浦和「次の監督にACLを渡したい」スコルジャ監督の思い 選手たちの士気 #浦和レッズ

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
今季限りで浦和レッズを離れるマチェイ・スコルジャ監督(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24のグループステージJ組最終第6節、浦和レッズ対ハノイFC戦は12月6日の日本時間21時にベトナム・ハノイ市でキックオフされる。

 浦和は第5節終了時点で2勝1分2敗、勝点7でJ組2位につけている。今回のACLは、東西両地区の全16グループの1位チームに加え、東西各8グループの中で2位の5チームのうち、成績上位の3チームのみがノックアウトステージに進める。浦和は1位になる可能性が消滅しているため、ノックアウトステージに進出するためにはハノイ戦勝利が最低条件。そのうえで、今月12、13日に行われる他組の結果を待つことになる。

 浦和は11月25日にJ1アビスパ福岡戦、同29日にACL武漢三鎮戦、12月3日にJ1北海道コンサドーレ札幌戦を行い、ハノイ戦は札幌戦から中2日で国外アウェイマッチという超強行軍。浦和はハノイにホームで6-0と圧勝しているとはいえ札幌戦での浦和の選手たちの動きは明らかに重く、フィジカルコンディションを考慮すると決して簡単な試合にはならないだろう。ハノイはこの間に監督が交代しており、戦い方そのものも前回とは異なってくる。

負傷中に自分の良さが何であるかを再認識したという伊藤敦樹
負傷中に自分の良さが何であるかを再認識したという伊藤敦樹写真:森田直樹/アフロスポーツ

■負傷による離脱を経験し吹っ切れた様子のある伊藤敦樹

 ただ、今の浦和には厳しい条件をすべてクリアするだけの高い士気がある。

11月12日のヴィッセル神戸での左ひざ負傷から札幌戦で復帰したMF伊藤敦樹は、「まだグループステージ突破の可能性はある。可能性を信じて闘いたい」と意気込む。

 今秋は日本代表戦を含めた連戦の影響でコンディションが下降している様子が伺え、持ち味である前線への飛び出しが鳴りを潜めていたが、札幌戦では開始2分にペナルティーエリア深くまで侵入して好機をつくるなど、ハツラツとした動きを見せた。戦線離脱中にスタンドから試合を見て、「ああいう動きでチャンスをつくったり、ゴールやアシストをしたりすることが自分の武器だと改めて感じたし、それがチームとして足りてないものだとも感じていた」と語った伊藤。コンディション的にはまだ上昇途中とみられるが、札幌戦後の取材エリアではどこか吹っ切れたような表情もあり、「そこで自分の強みも出せる」と語るようなプレーをハノイ相手にも出していくだろう。

現在リハビリ中のキャプテン酒井宏樹もACLをつないできた立役者だ
現在リハビリ中のキャプテン酒井宏樹もACLをつないできた立役者だ写真:ロイター/アフロ

■「リカルド監督がACLを残してくれたように、私も次の監督にACLを渡したい」

 J組第4節の浦項スティーラーズ戦で退場処分を受けたマチェイ・スコルジャ監督は、第5節武漢戦に続いて今回もベンチに入れないが、今季限りで浦和を去ることが決まっている指揮官は強い覚悟でチームを束ね、ハノイ戦を見守る。

 スコルジャ監督は札幌戦後の会見で、「我々はACLでグループ突破ができると信じて、次の試合を勝ちに行かなければいけない。これはクラブにとって、非常に大事なところだ。リカルド(ロドリゲス)監督がACLを残してくれたように、私も次の監督にACLを渡したい。ハノイで勝てると信じているし、札幌戦では他会場の結果が我々を助けることはなかった(※3位の可能性があったが4位フィニッシュ)が、そういった運もあればと思っている」と語った。

 就任1年目の今季、1月のトレーニングキャンプからわずか3カ月あまりの期間でJリーグやYBCルヴァンカップを戦いながらチームをまとめ上げ、迎えたACL2022決勝戦では浦和にとって最大のライバルであるアルヒラル(サウジアラビア)を負かして3度目となるアジアタイトルをチームにもたらした。

 得点力不足に苦しみながらもJ1では年間を通じて上位争いに顔を出しながら4位。今季、7年ぶり6度目のJリーグベスト11に選ばれたGK西川周作が「監督が持つ勝たせる力を、一緒にやりながら感じていた」と語ったように、マネジメント力は卓越していた。

2021年度天皇杯で優勝した浦和レッズ
2021年度天皇杯で優勝した浦和レッズ写真:長田洋平/アフロスポーツ

■2021年から繋がっているACL

 スコルジャ監督が「リカルド監督から受け継いだ」と言及したように、今季参戦中のACLはここ数年間の浦和に係わった指揮官や選手たちがつないできた舞台だ。起点はコロナ禍にも苦しんでいた2021年の天皇杯優勝。準決勝(セレッソ大阪戦)の宇賀神友弥や小泉佳穂、大分トリニータとの決勝戦での江坂任、槙野智章のゴールなどで手にしたこのタイトルで浦和はACL2022の出場権を獲得し、ACL2022で優勝したことでACL2023/24の予選ラウンド出場権を得て、そこを勝ち上がったことで今に至っている。その事実を意識している選手たちが多くいることもエネルギーになるだろう。

■カンテ「最後にベストな試合を見せたい」

 惜しまれつつ今季限りでプロサッカー選手を引退するFWホセカンテはハノイ戦の前日会見で「ACLのグループステージ突破の可能性を残した状態で臨めることをうれしく思う。最後にベストな試合を見せたい」と並々ならぬ意欲を見せた。浦和がすべての力を結集させて臨むハノイ戦。誰もがグループ突破を信じて闘い抜く。

埼玉スタジアムでの自身ラストマッチとなった武漢三鎮戦でゴールを決め、感極まる表情を見せていたホセカンテ
埼玉スタジアムでの自身ラストマッチとなった武漢三鎮戦でゴールを決め、感極まる表情を見せていたホセカンテ写真:森田直樹/アフロスポーツ

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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