冬の低山ハイキングにぴったりな東伊豆「巣雲山」登山で360度の大パノラマ風景に感嘆♪
△マイナー登山道をあるく△(0010)
東伊豆・宇佐美の街の後背に位置する山稜。冬でも雪の心配が少なく登山が楽しめる低山ショートハイキングコース。
<趣意>
あまりメジャーではないマイナーな登山道。ちょっと気になってはいたもののなかなか行く機会のなかった山道を歩いてみました。
<巣雲山の魅力>
(1)360度を見渡せる抜群の展望
山頂は広いススキ原となっており、周囲に高い樹木など視界を遮るものがほぼないため、東西南北くまなく展望が大きく広がっています。東は丹沢や横浜方面、西には駿河湾と富士山、南には天城山などの山並み、北には箱根の山々を見渡すことができます。
(2)冬でも温暖な気候
伊豆半島に位置し海にも近いので気候は比較的温暖で冬でも降雪や積雪の心配はあまりありません。また標高600mに満たない低山であり、むしろ冬ならでこそ気軽にハイキングを楽しむことができます。
<概要>
巣雲山 (すくもやま)
所在地: 静岡県伊豆市、伊東市
伊豆東部火山群の火山活動により形成されたスコリア丘。
標高は約581m。
<登山コース>
伊豆の登山では注目されることがあまり多くない巣雲山。じつは山頂からの眺めが素晴らしいとのことで行ってまいりました。JR伊東線「宇佐美」駅を起点に大丸山を経由し巣雲山に登頂して登りとは別コースでふたたび「宇佐美」駅に戻る周回ルートです。
■宇佐美駅からまず大丸山を目指す
「宇佐美」駅からスタート。駅舎のある東側の改札を出て左手に線路沿いを進み踏切を渡ります。さらに宇佐美中学校そばの杉本公園の裏手に出ます。擁壁に沿って丘陵への坂を上がっていくと高台に拓かれたミカン畑が広がっていました。
このルートは伊東市により”みかんの花咲く丘コース”として指定。丘陵地帯のミカン畑のなかの舗装道路をゆっくりと上がっていきます。しばらくして背後を振り返れば眼下に宇佐美の街並みと相模湾の光景を目にすることができました。
四、五十分ほどでしょうか。ミカン畑が切れて森になると舗装道路も終わり山道となります。巣雲山を示す道標に従い道を進み、ツバキの林を過ぎると”どっこい処”と名付けられた展望地にやってきました。ベンチもあって休憩にぴったり。
■富士見展望ひろばから大丸山を経由して巣雲山の山頂へ
大丸山まではさらにおおよそ30分。斜面を上がっていくと相模湾の見晴らしがどんどんと開けていきます。太平洋の大海原を実感。富士見展望ひろばという東側に開けたテラス状のスポットが”みかんの花咲く丘コース”一番の眺望でしょうか。しかしこの日は晴れてはいたものの雲が多く、西側の富士山は隠れてしまっていました。一方、東の海の方は目を凝らせば房総半島と思しき遠景を目の当たりにできます。素晴らしい見通しです。
富士見展望ひろばから先へ大丸山の山頂へ向かいます。いったん下ってから山頂へ登り返しです。大丸山は小さなピークで樹木に囲まれて眺望などもとくにありません。さらに先へ、巣雲山を目指して進みます。
大丸山からすこし下ると右手に伊豆スカイラインの道路が見えてきます。このあたりが阿原田峠。ここからスカイラインに並行するように尾根に付けられた登山道を進みます。伊豆らしく常緑照葉樹も多い様々な樹木が混在した雑木林の緩やかな尾根道です。
やがて胸のあたりまで丈のあるササダケの上り坂に入ってくるとその先が巣雲山です。山頂はなだらかでたいへん広いススキ原になっています。かつては茅場として麓の人々に利用されていたそうです。
■大パノラマ風景が広がる巣雲山頂上
「スクモ」とは籾殻のことを指すそうで、かつて長者さんが籾殻をこの地に捨てて積もらせやがて山になったという伝承が山名の由来のようです。まさに「チリも積もれば山となる」といったところでしょうか。実際は火山活動で噴き上げられ冷却されたマグマの岩塊が火口付近に堆積して円錐台形に形成されたものをスコリア丘(噴石丘)といい、一応、火山の仲間だそうです。
周囲の樹木は切り払われたためでしょうか、視界を遮るものがありません。四方八方、360度を見渡すことができます。西には駿河湾と富士山、北には箱根の外輪山、南には天城山などの南伊豆の山並み、東は丹沢そして遠くに見える高層ビル群は横浜でしょうか。
これだけの大パノラマ風景を得られる地は伊豆においても希少なロケーションといえるのではないでしょうか。広い大地と大きな青空もあいまってとても開放的で晴れ晴れとした気持ちにさせてくれます。
■巣雲山から宇佐美駅に戻る
山頂で一休みして下山開始です。下りは別ルートの”峰コース”を利用して宇佐美駅に戻ります。雑木林のなかを下り、生仏の墓、行者の滝を通過。”峰コース”の途中ではこの地の噴火由来と思われる火山灰に起因する赤土の地層を目にすることもできます。
スギなどの針葉樹が増えてきてしばらくすると簡易舗装の林道に出ました。巣雲山ハイキングコースの標柱が立っており、登山道はここで終わりです。山頂から30分程度のため正直ちょっと拍子抜け。
林道から先は別荘地の間の道をひたすら下っていきます。大きな竹林を抜けて道路の傾斜が緩んでくると宇佐美の市街地に出てきました。花岳院、圓應寺の前を過ぎると往路に通った宇佐美中学校そばです。歩きはじめに渡った踏切をまた渡り線路脇の側道を進めば宇佐美駅。今回はここがゴールです。
[行程表]
※標準的タイムによる目安(休憩含まず)
「宇佐美」駅→ ミカン畑丘陵への登り口(10分)→ 登山道の始まり(40分)→ 富士見展望ひろば(40分)→ 大丸山頂上(15分)→ 巣雲山(40分)→ 車道終点(30分)→ 花岳院(50分)→ 「宇佐美」駅(25分)
コースタイム/ 4時間10分程度
標高差/ 550m程度(宇佐美駅:12m、大丸山:503m、巣雲山:581m)
<登山コースの補足>
丘陵のミカン畑の間は道が複数に分岐していて分かりにくいところもありますのでスマートフォンの地図アプリなども利用した方が分かりやすいです。
住宅地に入ると進路が分かりにくいためスマートフォンの地図アプリなども利用した方が分かりやすいです。
山道に入ると道標が要所に設置されているので迷うことはあまりないと思います。
伊豆スカイライン内は歩行禁止です。
●水場やトイレなど
水場は登山道上にはありません。
トイレは巣雲山の山頂から伊豆スカイラインの駐車場に下りるとあります(徒歩5分程度)。また富士見展望ひろばから大丸山へ向かってすこし下りたところにあります。
●エスケープルート
巣雲山への山道に入る手前までに宇佐美駅へ向かう分岐路があります。
[難易度・危険個所など]
とくに大きな難所や危険個所などはほとんどありません。
●静岡県 山のグレーディング
体力度/ 2 (1→10)
難易度/ A (A→E)
[アクセス]
●往路
JR伊東線「宇佐美」駅から徒歩
●帰路
JR伊東線「宇佐美」駅まで徒歩
[付近の山]
城ヶ崎海岸
幕山
沼津アルプス
伊豆三山
達磨山・金冠山
真鶴半島
天城山
<私的な雑感>
巣雲山は四方に開けた山頂で360度全周の眺望に恵まれた冬にぴったりな低山ハイキングコースという印象です。
登山コース自体はそれほど特徴があるわけではないかもしれません。何かの花が美しい、スケール感のある瀑布などの傑出した見所は正直ありません。大丸山の富士見展望ひろばからの相模湾の眺めはとても素晴らしいですが、これは伊豆のほかの山でも見ることができるかと思われます。
しかし巣雲山の山頂で見られる360度の大パノラマは他ではちょっと見当たらない希少な景観ではないでしょうか。頂上にはほぼ樹林がなく視界を遮るものがほとんどありません。ほかの登山者への気兼ねなくどこでも素晴らしい景色をゆっくりと眺め続けることができます。おそらく夕日や日の出の絶景も拝むことができそうです。
難点としては舗装道路歩きが長いことでしょうか。登りに利用した”みかんの花咲く丘コース”ですと約3分の1、下山の”峰コース”の場合は半分以上が舗装道路です。その区間は畑や住宅地(別荘地)であったりします。登山の気分は削がれますし、登山靴での舗装道路歩きはちょっとツラい…。登山者からの人気があまりなく、メディアで紹介されることも多くないことが分かるような気がします。
とはいえ、気候温暖な伊豆半島という地であり、冬でも雪の心配をあまりすることなく、低山ハイキングを楽しむことができる点でも貴重であると思われます。
そういうわけで、巣雲山は、ガッツリ登山を楽しむというよりも、伊豆への小旅行のつもりで伊東や熱海の温泉とセットでショートハイキングを楽しむにはちょうどよいコースではないかなーと感じました。
<関連記事>
大噴火の迫力を感じる漆黒の岩礁「城ヶ崎海岸」 冬でも快適にトレッキングを満喫できるおすすめコース (Yahoo!ニュース)
<参考リンク>
伊豆・伊東観光ガイド (伊東観光協会)
伊豆半島ジオパーク ※公式サイト
富士箱根伊豆国立公園 (環境省)
静岡県 山のグレーディング (静岡県)
(2025年1月8日 上町嵩広)