冬枯れが始まる里山「渋沢丘陵」ハイキングで穏やかな森歩きを愉しむ(神奈川・秦野市)
△東京近郊ハイキング・レポ△(0008)
丹沢山塊の南麓に東西へ広がる丘陵地帯。標高200m程度の稜線歩きのハイキングをファミリーで楽しめる人気のコースです。
<趣意>
東京とその近郊のハイキングで個人的なお気に入りのコースをピックアップして紹介いたします。
<こんな方にオススメ>
(1)冬に低山ハイキングを楽しみたい
(2)登山のついでに桜のお花見もしたい
(3)里山歩きや森歩きが好き
<概要>
渋沢丘陵 (しぶさわきゅうりょう)
所在地: 神奈川県秦野市
神奈川・丹沢山塊の南麓に東西へ伸びる丘陵地帯。
標高はおおよそ200m強のなだらかな地形。
四季を通じて桜、ヤマユリや紅葉など様々な花と植物が楽しめる家族向けのハイキングコースとして親しまれている。
<ハイキングコース>
小田急線「渋沢」駅を起点に西側の頭高山(ずっこうやま)から東進して震生湖、秦野駅を経由してさらに東の弘法山公園に上がり小田急線「鶴巻温泉」駅に下山するルートです。丹沢山塊の眺め、多様な花などの豊かな森や名水の里でもある秦野の街などに巡り合えます。
■渋沢駅から頭高山まで
「渋沢」駅南口のロータリーからスタートです。今回は秦野市から提供されている「はだのハイキングガイド」のマップをもとに道を歩きます(※本記事末尾にリンク先を貼付)。
ハイキングガイドにしたがって住宅地のなかの舗装道路を縫うように進むと、白山神社の先に頭高山を示す道標があります。ここから本格的な山道の始まりです。
すこし上がっていくとふたたび丹沢の山並みの眺望が出てきます。森の様相も濃くなってきました。このときの季節は秋から冬への変わり目。紅葉の名残を楽しみつつも落葉が進む冬の訪れを感じます。
渋沢丘陵と頭高山の分岐に差しかかりました。いったん頭高山へ道なりに向かいます。しばらく進むと右手に北側の丹沢の山の連なりが左右に大きく開かれており、山座同定のための案内板もあるのでそれを頼りに大山や塔ノ岳などを確かめることができます。「あの時、あの稜線を歩いていたんだなぁー」としばし感慨にふけます。
展望地の先で頭高山への道が二俣に分かれています。左回りは階段状の山頂への直登気味のルート、右回りは緩斜面が続く巻き道です。今回は右手から回り込み黄葉の落葉樹の森のなかを進みました。最後にひと登りするとモミジの紅葉が美しい頭高山の頂上です。
山頂からの眺望も見応えがあります。北にはこれまでと同じく丹沢の山並み。そして南西には箱根外輪山と思われる山並みを目にすることができます。頭高山の山頂は紅葉の名残と眺望を合わせて楽しめる魅力的なビュースポットでした!
■頭高山から震生湖を経て秦野駅まで
頭高山から渋沢丘陵のメインルートへ。鳥居をくぐり階段道を下ります。道は左右に分岐しますが左手が先ほど通過してきた二俣の地点です。さらに渋沢丘陵への分岐まで戻り、道標にしたがって進みます。
すこし登れば丘陵の尾根道です。この先は道標もよく整備されており、小さな分岐がいくつもありますが、基本的に道なりに東へ進んでいきます。また要所要所で北側にこれまでと同様に丹沢山塊の眺望スポットが現れます。
いったん栃窪の住宅地に出て、さらに東へ直進していきまた林の中の山道に入ると今度は右手に相模湾と伊豆大島が見えてきました。さらに正面に秦野の市街地の遠景が現れてくると右手が震生湖への入口です。谷間に下りていくと、紅葉終わり際の森のなかで静かに水をたたえていました。
震生湖からいったん上がり、北上するようにマップを参考にして秦野駅へ。市街地の中に小藤川湧水や”まいまいの泉”などの湧水が点在しています。
丹沢とそのふもとの秦野周辺は名水の里と知られており、市内各所に湧水地、井戸や親水公園などがあります。また環境省による「全国名水百選」にも選定されています。大山の豆腐などはその産物といえるのでしょう。
■秦野駅から弘法山公園の権現山まで
秦野駅を越えると、その先からは弘法山公園を目指すルートとなります。秦野駅北側を流れる水無川を渡り東へ進み県道71号に合流して北へ上がると、目前に弘法山公園の一角・浅間山が目に入ってきます。金目川を渡れば右手に弘法山公園の入口があります。
入口からは一気に浅間山へ向かって急な登りが始まります。ひと頑張りで浅間山に登頂すると、西側には富士山の姿を目にすることができました。浅間山を東へいったん駐車場に下りてさらに権現山を登り返します。
権現山の山頂には展望台が立ち、ここからは遮るものがなく360度の眺望がぐるりと広がっています。富士山をはじめ箱根外輪山、相模湾そしてもちろん丹沢の山脈も一望です。権現山展望台からの眺めは今回のコース上で最大の見所といえるかもしれません。多くの登山者に人気があるのもたしかに肯けます。
■弘法山を越えてゴールの鶴巻温泉駅まで
弘法山公園は桜の名所として有名です。浅間山から権現山の周辺にはソメイヨシノが数多く植栽されていました。春には満開の桜がさぞ見事かと思われます。
次に目指すは弘法山。その間はクヌギやコナラなど落葉広葉樹が多く、道は落ち葉に敷き詰められたように覆われて、冬の訪れを感じさせます。弘法山へ登り詰めれば鐘楼の立つ山頂です。
山頂からは東側に横浜方面の市街地がずっと広がっている景色がよく見通せます。快晴ならば横浜ランドマークタワーも確認できます。また遠くに房総半島らしき姿も見えたのは私の勘違いでしょうか。
弘法山からはいよいよ最終区間です。いったん北に向かって道を下り途中で東側へ道を切り返して森のなかをぐんぐんと進んでいきます。季節は暦の上ではもう冬。2時過ぎですが太陽は西へ大きく傾き始めていました。
東海大学前駅へつながる下山路もありますが、今回はガイドマップにしたがい鶴巻温泉駅に向かいます。東屋の立つ吾妻山を越えれば一気に下山モードにギアが入ります。ひたすら下って東名高速道路の高架下をくぐって市街地を進めば鶴巻温泉駅に到着です。今回はここがゴールです。
渋沢丘陵は市街地の際を歩く標高200m程度の丘陵とは思えぬ豊かな自然に恵まれています。また難所なども少なく、子供から高齢な方でも楽しめる家族で安心して歩けるハイキングコースだなーという印象を受けました。冬に雪山は登らないけれどちょっと山歩きをしたいな~という方には格好の低山縦走登山コースといえるのではないかと感じます。
[行程表]
※標準的タイムによる目安(休憩含まず)
「渋沢」駅→ 渋沢丘陵分岐(60分)→ 頭高山(25分)→ 渋沢丘陵分岐(25分)→ 栃窪(50分)→ 震生湖(50分)→ 秦野駅(50分)→ 弘法山公園入口(20分)→ 権現山展望台(30分)→ 弘法山(15分)→ 吾妻山(55分)→ 「鶴巻温泉」駅(25分)
コースタイム/ 6時間30分程度
標高差/ 280m程度(渋沢駅:160m、頭高山:300m、震生湖:155m、秦野駅:90m、弘法山:235m、吾妻山:125m、鶴巻温泉駅:20m)
[アクセス]
●往路
小田急小田原線「渋沢」駅から徒歩
●帰路
小田急小田原線「鶴巻温泉」駅まで徒歩
<ハイキングコースの補足>
おおむね全道に道標が設置されているので迷うことはほどんどないと思います。
丘陵の山林と市街地や畑などの農地の間を歩くため土の山道と舗装道路が交互に断続するようになっています。
要所に東屋やベンチが設置されており市街地には都市公園も点在しています。
今回のコースを一気通貫せずに秦野駅を中間地点として分割して歩くことも一案かと思われます。
●水場やトイレなど
天然の水場は登山道上にはありません。途中に市街地を通過しますので自動販売機を見つけることができます。
トイレは要所に複数あります。
[難易度・危険個所など]
とくに大きな難所や危険個所などはほとんどありません。
弘法山公園入口から浅間山への登り、権現山への登り返しは長くはないですが急登になります。
●エスケープルート
途中で渋沢駅や東海大学前駅へ下りていくことができる分岐路が複数あります。
[付近の山]
塔ノ岳
鍋割山
大山
大野山
関東ふれあいの道
[コースマップ]
秦野市から今回のハイキングコースのガイドマップが提供されています。
はだのハイキングガイド (秦野市)
<お立ち寄りしたお店>
●木里館
弘法山公園の権現山と弘法山の間にあるジンギスカンのレストラン。
ログハウス風の外観と内装が特徴的です。今回はほかでは目にかかることがあまりない「ラムカツ定食」をいただきました。まるで燻したかのようにちょっと香ばしいラムの風味が際立ちます。これは羊肉がもつ血とパワーゆえでしょうか。インパクト大! ボリュームのあるサラダの付け合わせも嬉しいです。
所在地: 神奈川県秦野市曽屋5896-2
<関連記事>
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<参考リンク>
かながわの山に登りたい (神奈川県)
丹沢大山エリアの登山道通行情報 (神奈川県)
(2024年12月18日 上町嵩広)