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年末年始の海外旅行では感染症に気をつけよう

忽那賢志感染症専門医
(写真:アフロ)

今年の年末年始は9連休ということもあり、海外旅行を予定している方も多いのではないかと思います。

JTBは2019-2020年の年末年始の海外旅行者は76.2万人と過去最高を予想しています。

海外旅行中に感染症に罹ってしまうと楽しい旅行が台無しになってしまいます。

年末年始に海外に行く前に、気をつけておくべきことを再確認しておきましょう。

必要なワクチンは打ちましたか?

海外で流行している感染症の中にはワクチンで予防できるものがいくつかあります。

特に今年は麻疹・風疹が日本国内でも流行りましたが、これらの感染症は海外からの持ち込みがきっかけで国内の流行に繋がります。

麻疹・風疹に加えておたふく、水痘の4種類は日本国内でも罹りうる感染症です。

海外渡航前に、2回の接種ができているか確認しておきましょう。ご自身がワクチンを接種しているかどうかは、ご自身の母子手帳で確認できます。

麻疹・風疹・おたふく・水痘のワクチン接種(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)
麻疹・風疹・おたふく・水痘のワクチン接種(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)

1週間前後の短期間であっても、破傷風・ジフテリア・百日咳の3種混合ワクチンは接種が勧められます。

最後の接種から10年以上経っていれば接種を検討しましょう。

破傷風のワクチン接種(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)
破傷風のワクチン接種(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)

A型肝炎は熱帯・亜熱帯地域への旅行者の中で罹患する頻度の高い感染症です。海外渡航に関連した感染症のうち、最も効率よくワクチンで予防できる感染症の一つです。

A型肝炎のワクチン接種(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)
A型肝炎のワクチン接種(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)

渡航地域によっては黄熱ワクチンを接種しないと入国できない地域があります。

南米やアフリカに渡航する予定の方は検疫所FORTHの黄熱に関する情報を確認しておきましょう。

黄熱のワクチン接種(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)
黄熱のワクチン接種(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)

その他、渡航地域によっては狂犬病、腸チフス、ダニ脳炎、B型肝炎、髄膜炎菌感染症、日本脳炎、ポリオなどの接種が推奨されることがあります。お近くのトラベルクリニックや感染症科のある医療機関にお問い合わせください。

マラリアの予防はしなくて大丈夫ですか?

マラリアは現在も年間約2億2000万人が感染している危険な感染症です。

蚊に刺されることで感染しますが、抗マラリア薬を飲むことで予防が可能です。

特にアフリカに渡航される方は要注意です!命に関わることのある感染症ですので予防できる疾患はしっかりと予防しましょう。

マラリアの流行地域(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)
マラリアの流行地域(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)

マラリアの予防薬は2種類(マラリア予防薬として承認されていないものを含めば3種類)あります。

渡航期間、予算、持病などに合わせて選びましょう。

マラリア予防薬の種類(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)
マラリア予防薬の種類(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)

また高山病も薬を飲むことによって発症率を下げることができます。

標高の高い地域への渡航を予定している方、特に高山病になったことのある方は予防をご検討ください。

海外旅行中に気をつけること

旅行中にも気をつけるべきことがいくつかあります。

海外渡航に伴う感染症のリスク(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)
海外渡航に伴う感染症のリスク(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)

食べ物に関する注意点

海外、特に途上国では食事にも気をつけましょう。

火が通っていない食べ物は病原体に汚染されていることがあります。

例えばサラダやカットフルーツなどは危険とされます。

屋台に並ぶ食べ物もとても魅力的に見えますが、衛生面で問題があることがあります。

「旅行者下痢症」と呼ばれる感染性胃腸炎は、旅行者が罹るもののうち最も頻度の高い感染症です。

感染してから発症するまでの期間(潜伏期)も短いので旅行中に体調を崩してしまうことになりかねません。

旅行前に安全な食事と危険な食事について確認しておきましょう。

海外で安全な食事と危険な食事(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)
海外で安全な食事と危険な食事(国立国際医療研究センター トラベルクリニックのパンフレットより)

蚊やダニに刺されないように

マラリア以外にも蚊に刺されることで感染する感染症はたくさんあります。代表的なものはデング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、黄熱、日本脳炎などです。

マダニに刺されることでもツツガムシ病やライム病、ダニ脳炎などに罹ることがあります。

これらの感染症を防ぐためには、蚊やダニに刺されないことが大事です。

長袖長ズボンなどで肌の露出をできるだけ避けるようにし、露出した部分には虫よけを塗布するようにしましょう。虫除けはディートまたはイカリジンという成分を含むものが望ましいとされます。

その他、ケガや動物との接触、病人との接触など海外旅行では感染症に罹る危険が日本国内よりも高くなります。

旅行中に交通事故に遭ったり大病に罹ったりして現地の病院に入院して高額な医療費がかかることもあります。

安心して海外旅行をするために、海外旅行保険に入っておくことをお勧めいたします(特に保険会社との利益相反はありません)。

帰国後に体調を崩したら病院を受診し「海外旅行したこと」を伝えよう

帰国後に発熱、下痢、発疹などの症状が出たら病院を受診するようにしましょう。

どの病院を受診して良いか分からないという方は、こちらの日本渡航医学会の帰国後診療医療機関リストをご参考ください。

病院を受診した際に大事なのが「海外旅行したことを医療者に伝えること」です。

海外で感染する感染症には日本では診ることのない感染症もあります。

これらの感染症を診断するためには「海外に行った」という情報が必要になります。

医療者側からも聞くように心がけてはいますが、患者さん側からもぜひ情報提供をお願いします。

※参考資料

国立国際医療研究センター トラベルクリニック お役立ち資料集

厚生労働省検疫所 FORTH

日本渡航医学会 帰国後診療医療機関リスト

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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