1人あたり名目GDP、韓国にも抜かれる。日本よりも豊かな国に住むのは世界で何億人いるのか?
内閣府の国民経済計算年次推計発表によると、2023年の1人あたり名目GDP(国内総生産)は3万3849ドルだった。経済協力開発機構(OECD)加盟国中22位に後退。韓国の後塵を拝することになった。2023年にミシガン大学に滞在していたときに、韓国の経済学者と話す機会があり、「日本もGDP per capita (1人あたり名目GDP)では韓国に抜かれましたし」というと、次のように答えてくれた。「でも、日本は先進国を長年やってきたので、資本ストックが韓国よりもずっと豊か。特に地方などのインフラ整備状況をみると全然ちがう。日本が先進国であり続けたという証。」と、マクロ経済に疎い筆者に教えてくれた。
とはいえ、国別の順位では、あまり実感がわかない。なぜなら、国によって人口規模がまちまちだからだ。1人当たりGDPが、その国で暮らす人の経済的豊かさなのであれば、「日本よりも豊かな国に暮らす人は何億人いるのだろうか?」のほうが気になる。手近にあったCIAのデータ(1人当たり実質GDP)を使って、それを可視化してみた。
まず、日本の1人当たり実質GDPは4.63万ドルとなっており、世界222の国・地域のなかで日本は51位だ。1人当たり実質GDPの断トツ1位はルクセンブルクである。ただ、その人口が67万人程度の小国なので、上記の問には影響しない。図をみていただければわかるように、2位から10位までは、シンガポール、モナコ、アイルランド、カタール、マカオ、バミューダ、ノルウェー、マン島、スイスと小国が多く、これら上位10の国・地域の人口は合わせて3000万人に満たない。
1万ドル毎に国・地域を区分すると(図を参照)、日本の属する4万ドル以上5万ドル未満の区分には21の国・地域があり、日本以外は主に、サウジアラビア、ニュージーランド、イスラエル、スロベニア、台湾、チェコ、スペイン、リトアニア、ポーランド、プエルトリコ、エストニア、ポルトガル、クロアチア、ハンガリー、ルーマニア、オマーンである。ちなみに、1人当たりGDPのことを英語では、GDP per capita といいます。
このデータで計算すると、日本よりも1人当たり実質GDPの高い国・地域に住む人は、およそ9.9億人となった。高齢化や円安で物資が乏しくなった実感はあるものの、世界人口80億人のなかではまだまだ豊かなのである。
所得格差を測る指標は様々であるが、代表的な指標はジニ係数だ。まず、国・地域を1人当たりGDPが低いほうから並べて、「世界全人口に占める、その国・地域の人口割合」を横軸に、縦軸方向には「世界総GDP合計に占める、その国・地域のGDP割合」をとって原点から積み上げていく。それをプロットしたのがローレンツ曲線(下図参照)である。
もし、所得が完全に均等に分配されて完全平等であるならば、ローレンツ曲線は45度線になる。しかし、所得分布には偏りがあるので、ローレンツ曲線は45度線よりも下側に垂れ下がった曲線となる。所得が相対的に低い国だと、人口を足し上げて横に動いたほどには、縦方向に所得が積み上がらないからだ。逆に、所得が相対的に高い国であれば、人口分だけ右に動いた以上に、所得が積み上がり、その傾きは45度を超える。
45度線とローレンツ曲線の乖離する部分が大きいほど、所得分布は不平等だといえる。ジニ係数とは、この乖離部分の面積を2倍したもので、0~1の値をとる。ジニ係数が大きいほど、所得格差があり所得分布は不平等だといえる。日本国内で、一人一人の所得分布をもとに計算すると、日本国内のジニ係数は0.381。世界で同様の計算をすると、ジニ係数は0.46を超える。日本国内の格差よりも、世界の格差のほうが大きい。世界はまだまだ不平等なのだ。