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藤井聡太棋聖へ挑むのは誰か――第92期ヒューリック杯棋聖戦準決勝、決勝展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
初めてのタイトル防衛戦を迎える藤井聡太棋聖(筆者撮影)

 藤井聡太棋聖(18)への挑戦権を争う第92期ヒューリック杯棋聖戦(産経新聞社主催)はベスト4が出そろい、4月16日東京都渋谷区「将棋会館」で準決勝の渡辺明名人(36)-山崎隆之八段(40)戦が行われる。

 もう一方の準決勝は永瀬拓矢王座(28)-中村太地七段(32)の組み合わせ。

 データを基に挑戦権の行方と戦型を予想してみた。

好調永瀬王座と安定感抜群の渡辺名人が有力

 それぞれの対戦成績と最近10局の勝敗は以下のとおり。

<渡辺名人の対戦成績と最近10局>

対山崎八段 11勝4敗

対永瀬王座 15勝5敗(2千日手)

対中村七段 2勝1敗

最近10局 6勝4敗

<山崎八段の対戦成績と最近10局>

対渡辺名人 4勝11敗

対永瀬王座 2勝6敗

対中村七段 1勝1敗

最近10局 5勝5敗

<永瀬王座の対戦成績と最近10局>

対渡辺名人 5勝15敗(2千日手)

対山崎八段 6勝2敗

対中村七段 3勝3敗

最近10局 9勝1敗

<中村七段の対戦成績と最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

対渡辺名人 1勝2敗

対山崎八段 1勝1敗

対永瀬王座 3勝3敗

最近10局 5勝5敗

 データでは直近9勝1敗の永瀬王座の好調ぶりが際立つ。順位戦でも前年度末にA級昇級を決めたばかりで勢いに乗っている。

 対抗は実績で群を抜く渡辺名人(棋王、王将)。前年度末には王将戦七番勝負で永瀬王座に4勝2敗(1千日手)、棋王戦五番勝負で糸谷哲郎八段に3勝1敗と、防衛戦を並行して戦いながらもカド番に追い込まれることなく三冠を堅守した安定感はさすがだ。

 直接対決の勝敗では他の3人に後れをとっていない中村七段も久々にタイトル挑戦のチャンスと見る。

相居飛車の角換わりと相掛かり中心か

 リーグ戦とは違ってトーナメント戦は1回戦から決勝まで先後は振り駒で決定する。

 渡辺名人-山崎八段戦は渡辺名人先手なら角換わりの可能性が高い。その場合、後手の山崎八段は得意とする力戦模様の駒組みで対抗するだろう。

 山崎八段先手なら相掛かりが本線。ただしこれも定跡型ではなく山崎八段の誘導で力将棋になりそうだ。

 永瀬王座-中村七段戦も居飛車党同士だけに角換わりか相掛かりの展開が予想される。

 この1年の戦型採用率から永瀬王座先手の場合は矢倉の可能性も多少あるが、中村七段先手の場合は後手が変化しない限り角換わり将棋に進むだろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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