イラク、イスラエル、クルド、ロシア
イラク政府がロシアから中古の戦闘機を購入。ロシアの思惑は油田権益の維持なのか?
ロシアの意図は、短期的には石油ではないだろう。自らの中東における主要なプレイヤーとしての役割をアッピールすることだろう。またマリキ政権を強化することは、イスラム過激派のイスラム国を弱めることとなる。このイスラム国がロシアの支援を受けるアサド政権を脅かしている。この面からもロシアの政策には合理性があるだろう。
ところで、マリキ政権にロシア製の航空機を飛ばせるのだろうか。航空機を整備し飛ばすには、それなりの訓練を受けた人材がいる。これはシリアのアサド政権が提供するのだろうか。またスンニー派の地域の爆撃を始めれば、多くの民間人を巻き込む、さらにマリキ政権への憎しみを深めることになるだろう。
イスラエルがクルド人による北部地域の独立支持を表明している。このイスラエルの表明がイラク情勢に与える影響について・・・
イスラエルとイラクのクルド人は長い間にわたり同盟関係を維持してきた。1960年代からイスラエルはクルド人の独立運動を支持してきた。イラクの分裂と弱体化はイスラエルの安全保障を高めるとの発想があるからだ。今回のイスラエルのクルド独立支持は、そうした長い歴史的な文脈から理解されるべきだ。支持はありがたいが、クルド人にとっては、しかしながら、イスラエルの大声での応援は迷惑だろう。なにせ、まだ形式的にはアラブの国イラクの一部なのだから。またクルド人口を抱えるトルコやイランの動向も気にせねばならない。クルド人はイスラエルの静かな支援を期待していよう。
実質的な面でイスラエルがクルド人のためにできることの一つはアメリカを動かすことである。アメリカ議会にはイスラエルの影響力が強い。イラクが分裂しているという事実をアメリカ政府が承認するように、議会を通じて働きかけることである。オバマ政権の言動から判断すると、アメリカはバグダッドの政権にイラク全土の支配を回復させることが可能だと未だに信じているようだ。しかしイラクをクルド、スンニー、シーアの三つの自治地域からなる連邦国家に再編成するほうが現実的な対応であろう。また、そうすればクルド人の自治は、ますます強固になるだろう。
2014年7月1日(火)記