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霊媒師とノルウェー王女「差別」、政治家「変な考え方をしているからだ。批判には耐えなさい」

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
人々は「ロイヤルファミリーに黒人が入ることが嫌」で、批判をするのか?(写真:ロイター/アフロ)

肌の色やセクシュアリティも原因でヘイトを受けていると話した、ノルウェーのマッタ・ルイーセ王女と婚約者のシャーマン(霊媒師)であるデュレク・ベレット氏。

インスタグラムのライブ放送から数日経ち、ノルウェーでは少しずつ議論が起きている。

シャーマンの彼は、ご自身の世界観が批判的な光の下にさらされることには耐えなければいけないでしょう。私には彼の考えはとても奇妙で、根拠に欠けているように聞こえます。

王室の一員になるのであれば、批判的な視線を浴びることは想定しなければいけません。

彼の考えの一部は、私たちが陰謀論として闘ってきたものです。

とはいえ、変わった考えを持つ人に恋をすることは、ノルウェー王室による最悪な出来事とは言い難いですね。私たちの王室は、もっと大きなスキャンダルを巻き起こしてきましたから。

これはプリンセスの選択であり、彼女の幸せを祈っています。

アーナ・ソールバルグ元首相・保守党党首(TV2)

TV2の公式Facebookのページにこの記事が投稿されたコメントを見ると、このような意見が読者から書き込まれている。

  • 「自分を爬虫類だと定義する人に対しては、疑問視する権利もあります。特にノルウェー王室を代表することになるなら」
  • 「放っておいてあげなよ。2人が幸せなのが一番重要じゃない」
  • 「アーナ・ソールバルグや保守党には普段は同意しないけれど、今回は同意」
  • 「どうしてマッタ・ルイーセは、こんなにも知識に欠けた人と結婚するんだろう」
  • 「マッタにはこの男性がお似合いなのでは。2人とも変な意見を持ってるし。とにかく私たちの素晴らしい国王夫妻には火の粉が飛ばないようにしよう」
  • 「私たちはこの2人のために納税しているの?」

野党・進歩党のシルヴィ・リストハウグ党首は、これまで石油・エネルギー大臣、法務・移民大臣などを務めてきた。

ヘイトや殺害脅迫を受けているとしたら、ひどいことです。どのような背景かは関係なく、最も大切なのは互いが愛し合っているということ。

多くの人は(ロイヤルファミリーに黒人が入ることは)問題ないと考えていると思います。市民の多くは肌の色には関心がなく、相手がありのままでいられることを尊重しますから。

ベレットは物議を醸す考え方をしているところもありますが、それは肌の色とは関係ないでしょう。

マッタ・ルイーセは好きな人と結婚していいのです。

がん治療に関する考え方は、議論されて当然です。ベレットは自身の考えが議論されることには、耐えなければ。

シルヴィ・リストハウグ党首 Dagbladet紙 

私個人の印象では、ノルウェーでベレット氏が批判されているのは、スピリチュアルな考えを基盤とする化学や医療などへの持論、若返りができる、爬虫類人であるなどの発言、スピリチュアル商業活動だ。

「死者や天使と交信できる」はプリンセスも同じなので、今更ノルウェーの人は驚愕しない。

一部の考え方が陰謀論との批判に対し、カップルが「黒人差別だ」と返すのは、今に始まったことではない。このすれ違いが、ノルウェーのメディアとベレット氏が対立しやすい背景の一部でもある。

もちろんノルウェーにも人種差別はあり、ベレット氏の肌の色を気にする人もある程度はいるかもしれない。どれほど日常で差別を受けていると当事者が感じているかは別の話だ。

だが、ノルウェーで彼がニュースになりやすい理由は、肌の色が主な原因ではない気がする。

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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