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カジノ合法化準備が具体的に始まりそうな気配: 観光立国推進ワーキングチーム 中間とりまとめ

木曽崇国際カジノ研究所・所長

さる5月20日に政府・観光立国推進ワーキングチームから以下のような中間とりまとめが発表されました。以下、公表資料からの引用。

(4)IR

○統合型リゾート(IR)について、IR推進法案の制定の前提となる犯罪防止・治安維持、青少年の健全育成、依存症防止などの観点から問題を生じさせないために必要な制度上の措置の検討を関係府省庁において進める。

出所:http://www.mlit.go.jp/common/000998301.pdf

現在、関連する行政機関の担当閣僚が集まる組織、観光立国推進閣僚会議というが組織されていますが、観光立国推進ワーキングチームはその下部機関として施策検討を行なうチームです。会議は鶴保国土交通副大臣を座長とし、以下のメンバーで構成されています。

坂井国土交通大臣政務官

西村内閣府副大臣

山際内閣府大臣政務官

島尻内閣府大臣政務官

盛山法務大臣政務官

加治屋農林水産副大臣

佐藤経済産業大臣政務官

田中環境副大臣

金高警察庁次長

黒田内閣官房内閣審議官

上村外務省領事局長

合田文部科学省生涯学習政策局長

現在出されているのはあくまで現時点での中間取り纏めですが、今月中の最終案の完成を目指しており、閣議の決定をもって正式に採用されます。これが閣議決定されれば、我が国で正式に「IR導入、すなわちカジノ合法化に向けた準備が始まる」こととなります。安倍総理に非常に近いところから漏れ聞こえてくる話によりますと、総理自身が最近殊に「観光振興」の重要性を強調しはじめているとのお話。これは期待せざるを得ません。

そして、何よりも素晴らしいのが、「IR推進法案の制定の前提となる犯罪防止・治安維持、青少年の健全育成、依存症防止などの観点から問題を生じさせないために必要な制度上の措置の検討を関係府省庁において進める」と、カジノ導入における負の効果に対する施策を先行させるというスタンス。これは、私自身もずっと訴え続けてきたことであり、その思いが届いたのは非常に嬉しく思っているところです。

カジノ誘致の前に「賭博のリスク教育」の拡充を

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/7888073.html

...皆さんは不思議に思ったことはありませんか? 我が国では、喫煙や飲酒のリスクは義務教育で教えるのですが、一方で同じく「大人になってからリスクを理解した上で選択をすべき」ものである賭博(もしくはそれに類するモノ)に関しては、我が国では義務教育上で全く教えられないのです。私は常々、これは完全にオカシイと主張し続けています。...

私が常々申し上げておるのは、貴方が個人的に賭博を好むor好まざるを問わず、我が国にはすでに沢山の賭博およびそれに類するモノが存在しており、それに対するリスクは明確に現存しているということ。

まず我々がやるべきことは、今そこに様々なリスクが存在しているということを認め、それを正確に理解し、対処を講じてゆくことではないでしょうか。この点は、カジノ合法化に賛成だろうが反対だろうが、共産だろうが社民だろうが、基本的にはすべての方々が合意できるものではないかと思っているのです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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