「M-1グランプリ2019」敗者復活戦唯一のアマチュアコンビ「ラランド」とは。
「M-1グランプリ2019」で準決勝進出25組の中で唯一のアマチュアコンビとして注目を集めた男女コンビ「ラランド」。22日の決勝前に行われる敗者復活戦に挑みますが、若手芸人ブレークへの登竜門と言われる日本テレビ「ぐるぐるナインティナイン」の企画「おもしろ荘」(12月31日深夜放送)にも既に出演が決まっています。上智大学お笑いサークル「Sophia Comedy Society」の同期、さーやさん(24)、ニシダさん(25)が2014年にコンビ結成。既存のアマチュアの概念をぶち破るような活躍を見せていますが、その原点は“キラキラしたものへの違和感”だといいます。
アカペラサークルの空気
さーや:出身地も違いますし大学に入って初めて会ったんですけど、学科が同じで顔見知りにはなってたんです。入学して2週間ほど経った頃、何のサークルに入ろうかと考えて「キラキラしたところも見てみたいな」とアカペラサークルの新歓に行ったんです。
そこにニシダもいたんですけど、何と言うんでしょうか、そこで二人とも見事に浮いてたんです(笑)。
ニシダ:二人の違和感はすごかったですね。飲み会に2時間いて「みんな笑ってるけど、オレは笑ってない」という時間がものすごく長かったです(笑)。だからこそ、ここの二人の意気投合は早かったのかなと思います。
さーや:やっぱりね、上智の上の方の人と言いますか…、キラキラした人たちはネアカというか。声からして違いますし、しゃべってても歌が自然に出てきてミュージカルになっちゃうみたいな。ごめんなさい、しっかりとトゲが出ちゃってますね(笑)。
ただ、その新歓での時間があったからこそ、互いの形も最初からしっかりと確認できたんだと思います。
もともと、入学前から上智にお笑いサークルがあることは知っていて、もし入学できたら行ってみたいとは思っていたんです。なので、調べてみると、お笑いサークルの新入生向けライブがあると。「じゃ、そっちを見に行こう」とニシダを誘ったんです。
ニシダ:こっちは二人ともしっくりきまして。
さーや:そのまま入って、コンビを組んだという流れなんです。コンビとして考えると、太ってるし、見た目は大事だし、これはニシダだなと思って。
ニシダ:そういう理由だったの?(笑)
「ラランド」と「ラ・ラ・ランド」
さーや:コンビ名は私が中学・高校の時にも友だちとお笑いコンビを組んだりもしてまして、その時のコンビ名が「アポロン」という星にちなんだ名前だったんです。なので、今回も星関連の名前がないかなと。
そこから考えて、ラランドという天文学者が見つけた星で、そのままラランドという名前がついた星があるということで、そこからコンビ名をつけたんです。ただ、その後に映画の「ラ・ラ・ランド」が大ヒットしちゃいまして。
ニシダ:おじさんにはほぼ確実に「ラ・ラ・ランド」と間違われます。なんといっても、向こうの威力が強烈ですからね。完全にこちらが影響されてつけたみたいになってますけど、時系列としては今お話ししたような流れだったんです。エゴサーチをしても、ほぼ全部向こうに取り込まれた検索結果になりますけど(笑)。
さーや:検索して「オチがイマイチ」みたいなことが書いてあったら「これは、映画のことなのか、私たちのことなのか…」となりますしね(笑)。
ニシダ:あと、これもよく聞かれるんですけど、大学の同期で入って、さーやさんは既に会社員。僕はまだ学生なんで、ここの差は何なのと。
というのは、僕、一回大学を退学してるんですよ。必修の授業を2年連続で落とすと退学になるシステムがあるんですけど、まさにそのパターンになってしまって。
そこから再入学という形で大学に入りなおしまして、今、扱いとしては3年生です。
さーや:同期なんですけど、今、私は広告系の仕事をしてまして、ニシダはまだ学生のまま。なので、仕事終わりにネタ合わせしてても、ニシダはサークルの誰と誰が付き合ってるという話とかをしてて「そうか、まだコイツは大学生なんだ」と(笑)。時間が止まってる感が半端ないなと。
ニシダ:そんな、付き合ってる話ばっかりしてるわけじゃないんだけどなぁ(笑)。
プロとアマ
さーや:私の仕事もあったりするので、今のルーティン的なところで言うと、土日や平日の夜にライブ出演をさせてもらったりして、月に10回程度ライブに出ているという感じです。
事務所に入るか入らないか。そこは二人で悩んでもいまして。ただ、お笑いにおけるプロの定義があいまいな部分もあるし、いろいろな形を考えているまさに最中でして。
今は友達がマネージャーみたいなことをやってくれていて、その子が仕事を取ってきてくれたり、スケジュールも管理してくれています。
現状としてはそのパターンでまわってるんですけど、ここからもしグッとお笑いの仕事が増えたりしたら、また違う形を考えないといけないでしょうし。今は会社員としての仕事とお笑いとちょうど同じくらいのバランスになってるんですけど、今後、どっちが軸になるのか。まさに過渡期というか、そんなタイミングだと考えています。
ニシダ:つい先日も、オファーをいただいて「おもしろ荘」の収録があったんですけど、初めてのテレビ収録が「おもしろ荘」。めちゃくちゃ緊張しました。
ネタをやって、その後、トークみたいな流れだったんですけど、ネタは何となく普段通りにできたんです。ただ、トークになった時に視界が“めちゃくちゃ芸能界”で…。もう、ワケ分かんないといいますか。
「ナインティナイン」さんがいらっしゃって、有吉弘行さん、出川哲朗さん。そして、田中圭さんに吉高由里子さん。これが芸能界かという感じでした。
目一杯やる
さーや:この2~3カ月で、ガラッと変わりました。小さい空間で「面白いね」と言っていただいていたのが、一気に広がるというか。「M-1」の3回戦からGYAO!でネタ動画がアップされたくらいから一気に変わりました。
ニシダ:なんと、サインを書いてくださいという声もいただくようになりまして…。サインなんて作ってないので、普通に楷書で名前を書いてたんですけど、言っていただく機会が増えまして、偉そうですけど、サインも作りました(笑)。
あと、それこそ、22日の「M-1」敗者復活戦が、ガッチリとテレビでネタをやらせてもらう最初の機会になります。こんな展開も思ってもみなかったですけど。
さーや:3回戦からはGYAO!にネタ動画がアップされると言われていたので、そこでバズらせなきゃというのは正直ありました。
今回もその延長というか、敗者復活のシステム的に無名コンビが勝ちあがるのは難しいと言われたりもするんですけど、地上波でネタをやる機会なんて本当にありがたいことですから。なので、インパクトは強く残したいという思いは持っています。
2月に初めて単独ライブをやるんですけど、そこが「M-1」などで私たちを知ってくださった方が「『ラランド』って、本当のところ、どれくらいできるんだ」というのを見に来てくださる最初の機会になると思うので、そこはもちろんしっかりやらないといけないなと。
アマチュアだからお笑いの活動も控えめにということではなく、もちろん会社員として働くことでの時間的制約はありますけど、とにかく目一杯やる。その上で、完全にお笑いに軸足を置くのか、また違う形が見えてくるのか。
どちらにしても、まずは来年の上半期はその方向性が見えるような時期になればなと思いますし、なるようにしないといけないなと思っています。
ニシダ:ま、まず僕は大学ですよね…。なんとか卒業できるように頑張らないと。今もこのペースでちゃんと卒業できるかというと、何とも微妙なところもありまして…。前回退学になった必修の科目も今まさに頑張ってやってるんですけど、これも厳しくて。とにかく、必修をとれるよう、僕はそこをまず頑張りたいと思います…。
(撮影・中西正男)
■ラランド
1994年7月2日生まれで山口県出身のニシダと95年12月13日生まれで東京都出身のさーやのコンビ。ともに上智大学1年の時に出会い、コンビを結成。さーやは大学卒業後、広告関係の企業に就職。ニシダは現在も在学中。「M-1グランプリ2019」で準決勝進出25組の中で唯一のアマチュアコンビとして注目を集める。準決勝で敗退するも22日の敗者復活戦に挑み、本選出場を目指す。毎年若手芸人ブレークの場として知られる日本テレビ「ぐるぐるナインティナイン」の年末年始恒例企画「おもしろ荘」(12月31日深夜放送)に出演する。また初の単独ライブ「HIT US!」を来年2月9日に東京・新宿劇場バティオスで開催する。