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自身と真逆のキツい役が続く大友花恋。『マイルノビッチ』のアマゾネス女も「振り切れば自然にできます」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

『王様のブランチ』で朗らかな笑顔を見せる女優の大友花恋。一方、ドラマでは『おカネの切れ目が恋のはじまり』に『35歳の少女』とキツめな役が続く。Huluオリジナル『マイルノビッチ』でも、ヒロインの恋路に立ち塞がる“アマゾネス女”という役柄だ。普段はかわいらしくて誰からも好かれる彼女が、自身とまるで違うキャラクターにどう挑んでいるのだろう?

役のキャラクターが自分に入ると楽しいです

群馬出身で2012年にデビューした大友花恋。可憐な美少女ぶりが目を引き、映画『君の膵臓をたべたい』で浜辺美波が演じたヒロインの親友役、ドラマ『新米姉妹のふたりごはん』で主演など、数多くの作品に出演してきた。『Seventeen』の専属モデルも務めている。現在21歳。

――大晦日の花恋さんのブログを読んでいて、ジーンと来ました。「私たちは、2020年をよく頑張った!」という。

大友 よく頑張りました。最初の緊急事態宣言の間は人と話すことがほとんどなくて、撮影が再開しても、「こういうお芝居をしたい」という気持ちに中身も外見もついていけてない感じがしたんです。「あれ、こうだっけ?」って、何か浮いているような、すごいもどかしさがありました。

――やりながらカンを取り戻していった感じですか?

大友 そうですね。何とか。自粛明けの最初の作品で松岡茉優さんとご一緒して、「私も自分のお芝居がうまく行ってないと思うことは多いよ。そんなものだよ」と、温かいお言葉をいただいたんです。それもあって、気持ちが切り替えられたように思います。

――今回の『マイルノビッチ』の綾乃もそうですが、ドラマでは朗らかで人当たりのいいご自身と対極のような役が多いですね(笑)。

大友 最近ちょっと続いていますね(笑)。

――『35歳の少女』では橋本愛さんを挑発して取っ組み合いもしました(笑)。自分と近い役と、どちらのほうが演じやすいですか?

大友 やっぱり近い役のほうが、キャラクター以外のところを埋める作業からでいいので、しっくりきます。気持ちの面や、役が置かれている環境に寄り添うことに専念できて。個性が強い役だと、まずキャラクターを自分の中で形作ってから、役の感情に寄り添う形になるので、すごく難しいです。ただ、一度キャラクターが自分の中に入ってしまえば、あとはもう振り切ったままでいけて、楽しいです。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

いつも自信が漲っていることを意識しました

佐藤ざくりの人気マンガを実写ドラマ化した『マイルノビッチ』。地味で冴えない女子高生・木下まいる(桜井日奈子)が、神的メイク術を持つイケメン男子・熊田天佑(神尾楓珠)によって変わっていく。大友が演じる松丸綾乃はまいるの同級生で、かわいくて華があるが、計算高いうえに超強気で意地悪。“アマゾネス女”と呼ばれている。

――綾乃は“狙った男は逃がさない通称アマゾネス女”ということで、強烈ですよね(笑)。

大友 そのキャッチフレーズみたいなものが、綾乃のすべてを物語っています(笑)。最初に監督にお会いしたときも、「綾乃は強くて狙いをつけた獲物は絶対に落とす」とわかりやすく言っていただいて、役と向き合う道しるべになりました。

――アマゾネスぶりはどう出そうと?

大友 すごく考えました。恋愛に関してはなりふり構わない。「こういうふうにすれば男は落とせるわよ」とか「私が先輩を落としちゃうけどいい?」とか、いつも自信が漲っていて、自分を信じていることは意識しました。

――そうすると、口調も自然に強い感じに?

大友 そうなりましたし、声も大きくなりました。学校で高らかに笑いながら去っていくシーンでは、校舎中に響き渡るような声で笑っています(笑)。普段も笑い声はつい大きくなって「ワッハッハ」ということはあっても、「オッホッホ」みたいに笑うことはなくて、役でないとできません。そこはお芝居をする楽しさのひとつだと思いました。

――普段は綾乃みたいにズバズバとモノを言ったりもしませんか?

大友 あまりしないですね。だから「私はこうはできないな」と思いながら、台詞を言っているのが楽しかったです。役になればできるのは、役者冥利につきます。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

マンガのカット割りを芝居に取り入れてます

――『おカネの切れ目が恋のはじまり』で実年齢より5歳上の秘書を演じた際は、秘書検定の本を読んだりしたそうですが、今回は事前に何か準備でやったことは?

大友 専門的な準備は特にしなくて、その替わり、原作マンガは何度も読み返しました。ドラマと同じシーン、似たシーンは多かったので、「綾乃ちゃんのこの表情をマネしたい」とか「この動きは綾乃ちゃんっぽい」というところは、できるだけお芝居に取り入れるようにしました。

――どういうことを原作から取り入れたんですか?

大友 綾乃ちゃんがまいるに厳しく当たっている中で、初めて「自分はこれだけ努力してきた」というのが滲み出るシーンがあって。そこで綾乃ちゃんはすっぴんの状態から、しゃべっているうちにメイクが完成するんです。メイクし終わってリップをパチンと閉じたり、まいるにビシッと言う瞬間にコスメのフタをカチッと閉めるのが、マンガではカット割りしてあったので、そこはマネして、タイミングを合わせてやりました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

恋愛イベントには憧れしかありません(笑)

――この原作のようなラブコメは馴染みがあるんでしたっけ?

大友 恋愛小説は好きです。でも、最近の少女マンガにはあまり触れていませんでした。だから『マイルノビッチ』を読んで新しい世界と出合えて、面白いなと思いました。

――花恋さんは高校時代はもう仕事もしていましたが、こういう青春な世界は経験しました?

大友 なかったです。だから、恋して告白したりされたり、「文化祭、一緒に回ろう」とか「水族館に行こう」みたいなのは憧れしかありません(笑)。特にこの『マイルノビッチ』は、他の少女マンガ原作の作品以上に、恋愛のイベントごとがいっぱい詰まっている気がします。誕生日、文化祭、遊園地、合コン……。そういうときめきシチュエーションみたいなのが毎話出てくるドラマはなかなかないなと。テンポ感も心地良くて、観ている皆さんは毎回楽しめると思います。

――花恋さんもそういうシーンは、演技とはいえ楽しめましたか?

大友 楽しかったです。文化祭のシーンは待ち時間にみんなで輪投げして遊んだり、遊園地のシーンも空きができると「あれに乗ってきます」って、撮影と関係ないアトラクションに乗ったり、ベビーカステラを買って食べたりしました(笑)。

――1話の合コンのシーンはどうでした?

大友 合コンはしたことがないので、「どういう感じなんだろう? 綾乃ちゃんはどう攻めていくんだろう?」というのは考えました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

シビれるシーンは強烈に見えるように

――綾乃は「合コンは女の戦場」と言ってました。

大友 最初にアタックする成くんを演じている(伊藤)あさひくんは、同じ事務所で同い年で、ずっと一緒にレッスンを受けてきた仲間なんです。だから、あさひくんに対してモテテクを使っている自分に、役とはいえ、すごく違和感があって。カットがかかってから、2人で吹き出してしまう瞬間がありました(笑)。でも、綾乃ちゃんとしては、落とす気マンマンで行きました。

――花恋さんが実際に合コンに行ったら、気になる男子はどう攻めますか?

大友 どうしようかな……。たぶん綾乃ちゃんみたいに積極的には行けないと思うんです。だから、その場の皆さんの役に立つことを考えて、店員さんを良いタイミングで呼びます。グラスが空になりそうなところで「すいません」って呼んで、意識してもらう方向に行くと思います。

――それはそれで、花恋さんらしいですね。1話では、綾乃は「私以外の女がモテるのってムカつくんだよね」と、合コン中に女子トイレでまいるの頭を洗面に押し付けて水を浴びせてます。

大友 なかなかシビれるシーンでした(笑)。そこが綾乃ちゃんの第一印象として、まいるにしばらく色濃く残るので、なるべく強烈に見えるように意識しました。

――それも役に入れば躊躇なく?

大友 なかったです。動きの大きいシーンだったので、日奈子ちゃんと「こういうふうにやろうか」とか「私の力はもっと強いほうがいい?」とかコミュニケーションを取って臨みました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

普段から気持ちを柔軟に動かせるようにしてます

――綾乃が言うことがわかるところもありますか?

大友 あります。綾乃ちゃんは本当に一生懸命な子なんです。自分に自信を持てるだけの努力を重ねてきているのは、すごく共感しました。手段を選ばなかったりキツすぎるときはあっても、「だって幸せになりたいでしょう?」というのは、みんなの本音でもありますよね。「本当はこうしたいけど、バランスが取れないからしない」ということを、彼女は堂々と言うし、行動に移すんです。その点は尊敬できますし、観ていて痛快じゃないかと思います。

――花恋さんも人知れず努力していることはあるんでしょうね。

大友 このお仕事をさせていただくうえで、いつどんな役が来ても、どんな撮影があっても臨めるように、準備はしておきたいと思っています。演技のことだと、いろいろな人の仕草や表情を見ておいたり、いろいろな作品を観たり。あと、本を読んでいて台詞をちょっと口に出して言ってみたりは、普段からしています。それから、自分の気持ちを柔軟に動かせるように、何もなくても泣いてみたりは定期的にします。

――実際に悲しいことがあったわけでないときに?

大友 想像して、自分の気持ちがどのくらい動くか、お風呂の中でやってみることはあります。

――そういう努力もしているから、自分自身とかけ離れた役も自然に演じられるのでしょうね。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

読書でしかできない衝撃も経験しました

――一方、『王様のブランチ』に出ているときの明るい花恋さんは素なんですか?

大友 『王様のブランチ』では思っていることを自由にお話しさせていただいていて、普段の私以上に素が出ている感じがします。

――ブックコーナーで本の感想を話すときは、すごく的確にポイントを突いている感じがします。相変わらず読書は相当しているんですか?

大友 ドラマの撮影に入ると、なかなか読むことができなくて、最近は一時ほどは読めていません。それでも、読めば自分が今いる場所と違う世界に行けて、すごくリフレッシュできます。

――去年読んだ中では、どんな本が印象的でしたか?

大友 一番印象に残っているのは『日没』です。

――桐野夏生さんのディストピア小説ですね。作家が政府の組織に軟禁されて、“社会に適応した小説”を書くように命じられるという。

大友 『王様のブランチ』で本を紹介させていただくようになってから、私が今まで好きだった作家さんやジャンルを飛び越えて、普段手に取らないような本まで読む機会が増えました。『日没』はその究極で、だからこそ衝撃的でした。

――『ブランチ』では確か「こんなに後味が悪かった本はないけど、すぐまた読みたくなった」と話されてましたね。

大友 本を読んで心がこんなにザラザラすることがあるんだと思いました。逆に言えば、これは本を読まないとできない経験なので、そこが読書の魅力だとも感じました。

――そうした読書経験も、演技に活かされているのかもしれませんね。

大友 そうですね。本の中では「こういうときにこんな感情になった」と細かく綴られているので、台本だけでは掴み切れないところも「この前読んだ小説では、こういうところでこんな思考に陥っていたな」とか、結果的に参考になるときもあります。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

胸キュンシーンは遠くからニヤニヤ見てました(笑)

――『マイルノビッチ』の話に戻ると、撮影の中で悩んだことはありませんでした?

大友 どこまでコメディに振るか、どこまで綾乃ちゃんをキツく見せるか、柔らかさも出すかは、毎回考えていました。でも、監督や日奈子ちゃん、楓珠くんたちと話す時間もたっぷりいただけたので、皆さんと役を詰めていくのが楽しくて、悩むほどではなかったです。

――ラブコメならではの胸キュンもありましたか?

大友 私はどちらかというと、キュンというよりギューッとなるシーンが多かったので(笑)、自分で胸キュンは味わえませんでした。でも、日奈子ちゃんがキュンとするシーンを撮っているのを、遠くから見てニヤニヤしたりはしていました(笑)。

――恋敵的なポジションが続く花恋さんですが、王道ヒロイン役も見てみたいです。

大友 ありがとうございます。今回、見ていて一番憧れたのは、1話の合コンのあとに成くんがまいるの手を取って、「一緒に抜け出そう」と走っていくシーンで、そんなこと、現実の私には来世どころから来来世でもないと思うので(笑)。いろいろな役に出合いたいとは常に思っています。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

Profile

大友花恋(おおとも・かれん)

1999年10月9日生まれ、群馬県出身。

2012年にデビュー。主な出演作は映画『案山子とラケット~亜季と珠子の夏休み~』、『君の膵臓をたべたい』、ドラマ『チア☆ダン』、『いつか、眠りにつく日』、『あなたの番です』、『新米姉妹のふたりごはん』、『おカネの切れ目が恋のはじまり』、『35歳の少女』など。『王様のブランチ』(TBS)に出演中(3週に1回)。『Seventeen』専属モデル。

Huluオリジナル『マイルノビッチ』

2月12日よりHuluで独占配信(全8話)

公式HP https://www.hulu.jp/static/mairunovich/

『マイルノビッチ』より (C)HJホールディングス
『マイルノビッチ』より (C)HJホールディングス

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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