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便利で楽しいのに堂々とは走れない乗り物「電動立ち乗り二輪車」に乗って感じたこと

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
「電動立ち乗り二輪車」は便利で楽しい乗り物だが……

不思議な乗り物

先日、面白い乗り物を体験する機会がありました。

踏み台のようなステップの両側に小さな車輪が付いていて、乗ると自動的にバランスをとって進んでくれるマシンです。

「電動立ち乗り二輪車」と言われるジャンルで、代表的なものとしてはセグウェイがありますが、今回乗ったのはもっと小型の気軽なタイプ。セグウェイのようなハンドルなどもなく、ステップの踏み込みと体重移動だけでバランスを取りながら、前進と後進、コーナリングや回転などもできます。

見た目が玩具っぽいので最初はちょっと侮っていたのですが、乗ってみるとけっこう安定していて乗り手の意思に忠実に動いてくれます。

スケートやスケボー、1輪車などをミックスしたような不思議な感覚で、慣れは必要だと思いますがバイクに乗れる人ならきっと1日で乗りこなせるかと。バランス感覚を磨けるスポーツとしても楽しいし、また、近距離での移動手段としても便利かと思いました。

流行の陰で問題も

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ミニセグウェイとも呼ばれるこうした製品が最近はいろいろなメーカーから出ていて、今回のような2輪タイプの他、1輪タイプやスケボーのような横乗りタイプもあり、若者を中心に世界的で流行っていると聞きます。

自分も数年前にロンドンに行ったとき、お土産屋でミニセグウェイに乗った店員が現れたときはビックリしました。ただ、その後たまたまニュースで、こうした乗り物の事故がロンドンで急増していることを知り、複雑な心境になった記憶があります。

つい最近も渋谷の街を歩いていたとき、人混みをかき分けるようにしてミニセグウェイが走り抜けていきました。速度は小走り程度ですがやはり威圧感があり、周囲の人々も冷ややかな目線を送っていました。

本人はただ気分よくミニセグウェイで快適な散歩を楽しんでいただけでしょう。でも、大多数の歩行者とは温度差があります。立場が違うと、気持ちや考え方も変わってしまうという好例ではないでしょうか。

これはバイクと歩行者、クルマ、自転車との関係にも当てはめることができそうです。

規制緩和に壁あり

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つい最近の新聞にも関連する記事が載っていました。日本においてセグウェイは、6年の公道実証実験を経てもなお公道許可が下りないというものです。

ドイツをはじめ他の国ではとっくに公道走行が認められているのに、日本では地球半周分の距離を無事故でこなしてきたにも関わらず、役所からは「安全性を引き続き注視すべし」とのお達しだとか。日本ではとかく規制緩和がカタチだけのものになっているという内容でした。

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もちろん、国ごとに法規や交通事情は異るし、なんでも規制緩和すれば良いというものではないでしょう。ただ、セグウェイの例に限らず、問題を先延ばしにするだけでは解決の糸口はいつまで経っても得られないのでは。

今後もいろいろなモビリティが発明・実用化されていくことでしょう。それぞれの立場で道路を利用する人々の権利や安全を守りながら、交通の利便性を高めつつ多様な移動手段の選択肢を増やしていく。これは一筋縄ではいかない難問です。私にも明確な答えは用意できません。

ただ言えることは、どこかの時点で皆が納得できるルールを決めて実行していかなければならない、ということではないでしょうか。長い目でみたら、日本の経済発展にも関係してくる話かもしれませんね。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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