【路上ブロックの危険】悪質な事故の犠牲にならないために
自分の身にも起こり得るアクシデント
今回は残念ながら事故の話です。ご存じの方も多いと思いますが、10月末、大阪市でバイクを運転していた51歳の男性が、路上に置かれたコンクリート製ブロックに衝突して意識不明の重体に陥り、その後亡くなった事件がありました。
事件が起きたのは午前0時頃、大阪の府道で発生。路上に置かれた円柱型のブロック(重さ約16kg)にバイクが乗り上げ転倒。ブロックはポールをさすための土台で普段は近くの歩道上にあったそうです。警察では、何者かが故意にブロックを置いたとみて殺人容疑に切り替えて捜査しているとのこと。故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
犯人は悪戯のつもりか、それとも何かの腹いせなのか。理由はともかく、こうした行為が何の罪もない人の命を奪ってしまうことを想像していなかったのでしょうか。だとすれば、あまりに稚拙であり、自分勝手で無責任極まりない。私自身ひとりのライダーとして、憤懣やるかたない思いです。
ただ、こうしたアクシデントは他人事では済まされず、いつでも自分の身にも起こり得ることを念頭に置いておくべきでしょう。先月もやはり大阪で、乗用車が道路の真ん中に放置されたコンクリートの土台(重さ約50Kg)に接触し電柱に衝突。車に乗っていた2人がケガをする事故がありました。ちょっと調べただけでも同じような事件性ありの事故がたくさん出てきます。警察も取締りを強化しているそうですが、悲しいことに愉快犯、模倣犯が後を絶たないという現実があります。
ではどうしたら、このような悪質なイタズラから身を守れるのでしょうか。
よく、前方のクルマを煽るようにピタっと後ろに張り付いているバイクを見かけますが、これは危なくて見てられません。もし、急にブレーキを踏まれたら、追突するより他に道はありません。でなくとも、もしかしたらクルマの陰に隠れて前方から危険な落下物が迫っているかも。4輪の特に大型車などは落下物があっても跨いでしまうため、後続のバイクの目の前に突然コンクリートブロックが現れることもあり得ます。まずは「そんなことが起こるかも」という認識を持つことが大事でしょう。心構えをしておくこと、常にそういう意識で周囲を見ていくことで、咄嗟の対応にも差が出てくるはずです。
事故回避のために出来ること
次に考えるべきは、どうしたら回避できるかです。交通事故の分析によると、走行速度の2秒分の距離がある場合、事故発生率が低下するというデータがあります。つまり、車間距離を2秒分以上取れば回避できる可能性が高まるということ。40km/hであれば22m、60km/hであれば33mの車間距離が最低限必要ということになります。こうした時間と距離の感覚を常日頃から意識しておくといいでしょう。ちなみに私は、センターラインの白線などを利用しています。白線と間隔を合わせた距離が一般道は10m、高速道路は20mだそうなので目安になると思います。
さらに一歩踏み込んで、もしアクシデントに遭遇してしまったときの回避方法も身に付けておくべきかと。白バイ訓練でも取り入れられている「選択回避制動」というトレーニングがあります。これは、直線を一定速度で走りながら、目の前にある信号に従って右か左かに瞬間的に進路変更するもので、危険回避の技術習得を目的としています。この中には運転技能に必要とされる正確で速やかな「認知・判断・操作」が含まれていて、誰でもトレーニングを重ねれば上達できるスキルです。私の主宰するライディングスクールでも安全マージン向上のためのカリキュラムの一環として取り入れていますが、身に付けておけばいざというときに必ず役立つはずです。
「事故は運だよ」という人もいますが、私は運に命を預けたくはありません。理不尽な事故を許さない毅然とした態度。自分の技量をけっして慢心しない心掛け。必ず生きて帰ってくると誓う決然たる意思。バイクに乗るライダーとしての約束事だと思います。
※原文から著者自身が一部加筆しています。