Yahoo!ニュース

妊娠線の原因と予防法 - 最新の医学研究から分かること

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

妊娠線の原因と予防、治療法

妊娠線は、55%から90%の妊婦さんに発生すると言われています。赤みを帯びた線状の跡が、お腹や太もも、お尻などに現れるのが特徴です。見た目が気になって、落ち込んでしまう人も少なくありません。

そこで今回は、最新の医学研究を元に、妊娠線の原因と予防法、治療法についてお伝えします。

【妊娠線の主な原因は?】

妊娠線の主な原因は、以下の3つだと考えられています。

1. 遺伝的要因

妊娠線ができやすい体質は、遺伝すると言われています。お母さんやおばあちゃんに妊娠線ができていたら、自分もできる可能性が高いです。

2. ホルモンの影響

妊娠中は、女性ホルモンのエストロゲンや男性ホルモンの分泌量が増加します。これにより、皮膚のコラーゲンや弾力繊維の結合組織が緩んでしまうのです。

3. 皮膚の急激な伸張

お腹の皮膚は、赤ちゃんの成長に合わせて急激に伸びていきます。この伸張に皮膚が耐えられなくなると、表皮の破綻から妊娠線ができてしまうのです。

皮膚は外からの刺激から体を守るバリアの役割を果たしています。妊娠線は、皮膚の過伸展によるダメージの表れと言えるでしょう。

【妊娠線の予防法とケア】

残念ながら、妊娠線の予防法は確立されていません。ただし、いくつかのケア方法で、妊娠線のリスクを下げられる可能性があります。

・保湿をしっかりと

皮膚の柔軟性を保つために、保湿は欠かせません。ヒアルロン酸やセラミドなど、保湿成分の入ったクリームやオイルを使いましょう。

・マッサージをする

お腹の皮膚をマッサージすることで、血行が良くなり、皮膚の伸展性が高まります。妊娠線予防に効果的とされるマッサージオイルもあります。

・体重管理をする

妊娠中の急激な体重増加は、妊娠線のリスク因子です。過度の体重増加を避け、適正範囲内に収めるように心がけましょう。

・栄養バランスの取れた食事を

ビタミンCや亜鉛、タンパク質などを十分に取ることで、皮膚の健康を維持できます。バランスの取れた食事を心がけると良いでしょう。

【妊娠線の治療法】

いったんできてしまった妊娠線を完全に消すのは難しいですが、目立たなくする治療法はいくつかあります。

・トレチノイン軟膏

ビタミンA誘導体の一種であるトレチノインを有効成分とする軟膏が処方されます。妊娠線の色調改善や幅の縮小に効果が期待できます。

・レーザー治療

炭酸ガスレーザーやフラクショナルレーザーを照射することで、妊娠線の改善が見込めます。コラーゲンの再生を促進し、皮膚のハリを取り戻す治療法です。

・ダーマペン、ラジオ波治療など

皮膚に微細な針を刺して真皮層にアプローチするダーマペンや、高周波を用いたラジオ波治療も、妊娠線の治療に用いられます。

ただし、妊娠線の治療は保険適用外のため全額自費となります。また、完全に元通りにはならないことを理解しておく必要があります。

もし妊娠線が気になるようであれば、美容を専門とする皮膚科専門医に相談してみると良いでしょう。多くは自費診療になってしまいますが、少しでも目立たなくすることができるはずです。

参考文献:

・Korgavkar K, Wang F. Stretch marks during pregnancy: a review of topical prevention. Br J Dermatol. 2015;172(3):606-615. doi:10.1111/bjd.13426

・Lokhande AJ, Mysore V. Striae Distensae Treatment Review and Update. Indian Dermatol Online J. 2019;10(4):380-395. doi:10.4103/idoj.IDOJ_336_18

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

大塚篤司の最近の記事