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「岡崎慎司は泥臭い選手ですか?」 直撃インタビューで明かした“献身”の意味

元川悦子スポーツジャーナリスト
岡崎の鋭い目線の先にあるのは4度目のW杯だ。(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

 日本代表として2010年南アフリカ・2014年ブラジル・2018年ロシアのワールドカップ(W杯)3大会に出場し、代表通算119試合・50得点という偉大な数字を残してきたFW岡崎慎司(カルタヘナ)。

 クラブでも、マインツ時代のブンデスリーガ1部・2年連続2ケタ得点、レスター時代のプレミアリーグ制覇、ウエスカ時代の日本人初の欧州3大リーグ得点達成と華々しいキャリアを歩んできた。

 しかしながら、彼は「泥臭い」「献身的」といったイメージで見られてきた。そんな自分をどう捉えているのか。本人に直撃した。

「自分を代表に呼べ」と今は言えない

――カルタヘナ移籍から3カ月。あごの骨折も乗り越えて、奮闘を続けています。

「最初はすごく顔が腫れましたけど、今は大丈夫。フェイスガード姿でプレーをしたら『マスクがあった方がいいんじゃない』とみんなに言われました(苦笑)」

――今季のここまでのパフォーマンスは?

「1点というのが悔しい。自分の当初のプランでは、もう7~8点は取ってて、代表にも呼び戻されてるつもりだったんです。これじゃあ『自分を呼べ』とも言えないんで、まずはしっかり活躍して、1部昇格争いに入らないと。今、チームはいい状態だし、貢献はできているんで、個人の成績にもこだわりたいです」

――11月2日には柴崎岳(レガネス)選手との直接対決もありました。

「岳はチームの主力として試合に出てて、他チームの監督やスカウトからも『あいつは、いい選手だ』って言われてる。対戦した時も、あのパフォーマンスなら代表で試合に出るのは当然だと感じた。スペイン1部に上がろうという貪欲さも強い。10月のサウジアラビア戦(ジェッダ)のパスミスでいろいろ言われましたけど、あとは自信を持つしかないのかなと思いますね」

フェイスガード姿が大きな話題になった(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)
フェイスガード姿が大きな話題になった(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

――岡崎選手も代表やクラブではサポート役が多く、「泥臭い」「献身的」というイメージが持たれています。自信を持てずにいた時期があったのではないですか?

「まあ、ここまで来たら、それが個性なのかなと思ってやってますけどね(笑)。『自分がどうしたらいいか』を考えた時、必ずチームがよくなるってことがセットでついてくる。チームと一緒じゃないと個性を引き出してもらえないんで。僕の場合はJリーグにいた頃からそういうスタイルでやってきたから」

――1トップ、2トップ、両サイドとあらゆるポジションをやりました。

「そうですね。ザックさんの代表の時はサイド、ハリルさんの時はトップをやった。つねに周りに救われてきました。だけど、クラブではそうはいかない。『完全に個で何とかしてくれ』って要求に対して証明しないといけないから。そこに全力を尽くしているうちに、チームのためにも戦えて、必要な時にはボールも奪う選手になっていった。それが自分の個性なのかなと思います」

外から見える森保ジャパンの課題

――2013年からのマインツ所属時代は2シーズン連続で2ケタ得点を記録しました。

「当時はトーマス・トゥヘル(現チェルシー監督)のサッカーの中に入れてもらえた感覚がありました。それ以外は『自分で頑張って入った』っていうイメージ。あの時だけは監督が求めるサッカー、求める役割がすごく具体的にあって、1トップだけがいなかった。僕としてはポジション争いに勝つだけでよかったんです。自分を最大限に生かしてもらえたということだと思うし、すごい監督だなと改めて痛感させられます」

――そういう監督に出会えるのは稀です。日本代表の森保一監督は選手の意思を尊重してくれるのでは?

「森保さんは『選手ファースト』と言われるように、日本人監督は意見を聞いてくれる人が多いです。自分が信じた選手を最後まで使うっていう信念を持っているし、義理堅さもある。それもまた監督の1つのスタイルだと思います。当然、信頼される選手はうれしいだろうし、『監督のために』というふうになる。ただ、そのチームの結束が試合で出ないと意味がない。キャプテンの吉田麻也(サンプドリア)は監督と密に話をしていると思いますけど、プレスのかけ方1つにしても、もっと突き詰めていったらいいと感じます」

サムライブルーの一員として笑顔を見せる岡崎を再び見られる時は来るのか(写真:長田洋平/アフロスポーツ)
サムライブルーの一員として笑顔を見せる岡崎を再び見られる時は来るのか(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

――吉田・冨安健洋(アーセナル)両選手が組むセンターバックは史上最強と評されますけど、もっと前からボールを奪えればチームは楽です。

「そうです。僕だったらもっと行きたい。サコ(大迫勇也=神戸)がボランチを消しながら見るのもありだけど、伊東純也(ゲンク)がプレスに行って相手がボールを下げるだろうなってタイミングでもっと行っていい。そうすれば、もっと高い位置でボールを奪って早く攻めることができる。もちろん実際にやってる選手にしか分からないことがあるから、僕も代表に入りたいって思います」

――森保ジャパンは選手起用の固定化も問題視されています。

「ザックさんの頃も固定化されていたけど、僕らはクラブで試合に出ていたし、もっと上を目指していたから、そんなに気にならなかった。

 逆にハリルさんの時は若手がいっぱい使われた。井手口(陽介=G大阪)や久保(裕也=シンシナティ)とか伸び盛りの選手がものすごい輝きを放っていたし、ハリルさんも勝利への欲が強かった。いい面もあったとは思うけど、結果的に解任されてしまった。サッカーの監督は何がいいか分からないところが正直、ありますよね…」

――今の岡崎選手はある程度、メンバーが固定化されている森保ジャパンのグループに挑んでいかなければいけないのが実情です。

「ですよね。森保さんがこの先もあんまり変えないという意向なら『俺、希望ねえな』『10%もねえな』と思うこともあります(苦笑)。でもザックさんの頃の遼一(前田=現ジュビロ磐田U-18コーチ)さんや憲剛(中村=川崎FRO)さんも希望を持ってブラジルW杯に向かっていただろうし、そういう気持ちを想像もします。正直、今のままでは選ばれなくてもしょうがないと思うところもあるんで、状況を変えないといけないです」

カルタヘナでここから一気に巻き返してほしい(写真:なかしまだいすけ/アフロ)
カルタヘナでここから一気に巻き返してほしい(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

カタールW杯がサッカー人生の集大成

――同い年の長友選手も貪欲にカタールW杯に向かっていますよ。

「佑都は練習中から声を出して、1人ですごく頑張ってるんやろうなっていう姿が想像つきます(笑)。圭佑(本田=スドゥバ)もそうだけど、『個性が強い』とは3人とも思ってない。『誰が個性強いんやろう』って話をしても、絶対に自分は入れないですからね、あいつらは(苦笑)。

 今の代表のYouTubeを見ると、主力5人くらいで話してる場面が結構出てきますけど、できるだけ全体で共有した方がいいと思います。個性うんぬんは別として、みんなで同じ方向を向くことが大事だし、絶対にもっといいチームになれるはずだから」

――カタールW杯イヤーの2022年、岡崎選手がそこに加われたら最高のシナリオになります。1つ年上のクリスティアーノ・ロナウド(マンU)もポルトガル代表の第一線を走ってますし、年齢は関係ないですよね。

「そうですね。欧州でも永嗣(川島=ストラスブール)さんやハセ(長谷部誠=フランクフルト)さんがトップで戦っていますからね。自分としてもカタールW杯だけは本気で目指したい。そこは自分のサッカー人生の集大成。日本で一番いい選手が出るのが日本代表だと僕は強く思ってます」

 玉田圭司(長崎)、阿部勇樹(浦和)、大久保嘉人(C大阪)という代表の先輩3人が今季限りで引退することを聞いて、岡崎は「寂しいとかはあんまりないです。ただ単に、もう『次の時代』が来ているんだなと感じます。欧州ではジェラードやシャビが監督になってる時代ですからね」と淡々と語った。とはいえ、今の彼自身はまだ完全燃焼したわけではない。目標を果たすまで、燃え尽きるつもりなどないのだ。

 幼少期から憧れ続けたW杯の大舞台にもう一度立ち、世界のトップに真っ向からぶつかる覚悟を持って、野性味あふれる35歳の岡崎は今日も明日もピッチで戦い続けていく…。

■岡崎慎司(おかざき・しんじ)

1986年4月16日生まれ。兵庫県宝塚市出身。滝川第二高校卒業後の2005年に清水エスパルス入団。2011年から欧州のクラブに移籍し、ドイツ1部・シュツットガルト、マインツでプレー。イングランド1部のレスターでは2015-2016シーズンにプレミアリーグ優勝を経験した。現在はスペイン2部のカルタヘナに所属。ワールドカップには2010年南アフリカ、2014年ブラジル、2018年ロシアと3大会連続出場。日本代表国際Aマッチ119試合出場50得点。

スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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