劉暁波氏の騒動に無言を貫くノルウェー首相にノーベル委員会が苦言、中国との関係悪化を懸念して
劉暁波氏ががん治療のために仮釈放された件で、ノルウェーのソールバルグ首相はノーコメントを貫いている(一例:国営放送局)。コメントはノルウェー外務省に求めるようにと首相は言うが、外務大臣はコメントを避け、外務省も「我々の思いは彼と彼のご家族と共にある」と述べるのみだ。
ノルウェー・ノーベル委員会がノーベル平和賞を劉暁波氏に授与後、ノルウェーと中国との関係は悪化した。
昨年、両国の関係正常化が発表されたが、条件としてノルウェー政府は事実上、「中国の内政事情には口出ししない」ことを受け入れた。
ビジネス相手でもある中国政府を怒らせたくはないノルウェー政府の意向を国民は理解できる。それでも、ノルウェーのメディア、野党、人権団体はノーコメントで通そうとする自分たちの首相に批判的だ。
ノルウェー・ノーベル委員会のベーリット・レイス・アンネシェン委員長は、3日、ノルウェー国営放送局NRKでのラジオ討論で、ノルウェー政府の態度には落胆したと述べた。
「ノルウェーの野党も後から与党を批判したが、その批判のタイミングさえも遅かった。情けない。どの政党が与党であっても、ノルウェーは人権と発言の自由を前提とする国であると願っていた。両国の関係が改善されたことは喜ばしいが、産業への関心が人権問題の標準を揺さぶるようなことはあってはならない。平和賞受賞者や人権活動家を支えるはずのノルウェーのこれまでの伝統が崩された」とNRKで語る。
首相官邸の広報であるフローデ・アンネルシェン氏は、「中国との関係を改善するまでには6年以上かかった。気候、エネルギー、貿易などにおいて、中国との協力は必要不可欠であり、複雑なプロセスであることを忘れてはいけない。中国との根底からの関係改善にはまだまだ道のりは長い」とNRKに回答した。
政府を批判する報道傾向は、ノルウェー各紙でも変わりなく、「驚きはしないが、やはり落胆した」という内容が多い。
ノーベル平和賞の授与式の国ということで、ノルウェーにとっては劉暁波氏は歴史上でも異例の存在となった。劉暁波氏は両国間の外交関係の時限爆弾となり、ノルウェー養殖サーモンは両国間の貿易のシンボルになった。
ノルウェーの野党は政権を批判したが、今年の国政選挙後、もし自分たちが与党となった場合、何かしら異なるアクションをするかどうかは疑問が残る。
最大手アフテンポステン紙のスタンヘッレ編集長は、27日の自社のコメント欄でこう記す。「劉暁波氏は両国の外交政治において特別な意味を持つようになった。彼の戦いに終わりが近いことを示す兆候は多い。しかし、私たちを悩まし続けるべき深刻な問題が残る。中国企業にドアを閉められることを恐れて、本当に誰一人として声を出せなくなってしまったのだろうか」。
別記事「ノーベル平和賞の劉暁波氏、がん治療で仮釈放/ノルウェー現地での反応」
Text:Asaki Abumi