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囲碁国際イベントにファン300人集まる――「ワールド碁フェスティバル」リポート

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
東アジアのスター棋士による公開ペア碁対局(筆者撮影)

 6月30日、兵庫県宝塚市「宝塚ホテル」で「ワールド碁フェスティバル」(主催・関西棋院、共催・宝塚市、兵庫県阪神北県民局)が開催された。

 今回のイベントは大阪で開かれた国際会議G20サミットを記念してのもので、東アジアからスター棋士が数多く日本に訪れ、イベント来場者は300人を超える盛況となった。

話題の仲邑菫初段は公開対局で登場

 午前中のメーンイベントは史上最年少入段の仲邑菫初段(10)が村川大介十段(28)に挑む公開対局。解説者がタイトル獲得数1位の趙治勲名誉名人(63)、聞き手は仲邑初段の叔母にあたる辰己茜三段(36)と人気棋士が一堂に会した。

仲邑菫初段は村川大介十段に定先で善戦したが惜敗となった(筆者撮影)
仲邑菫初段は村川大介十段に定先で善戦したが惜敗となった(筆者撮影)

 新聞・テレビなど当日集まったメディアは仲邑初段が定先(黒番でコミなし)の手合いで惜敗したことを中心に報道していたが、今回のイベントの主眼はこの後に続く国際色豊かな企画である。

ライトなファンでも楽しめる工夫

 なにかにつけて比較されるお隣の将棋界では近年「観る将」と呼ばれるファン層が増えている。レジャー白書によれば2018年の将棋人口は700万人と前年に比べ170万人の急増。盤上以外のさまざまな情報や棋士の意外な側面に注目するなど、ルールはうろ覚えであっても強さに関係なく楽しむことができる工夫を重ねた結果だろう。

 囲碁界でも将棋界の取り組みに刺激を受け、新たなファン層「観る碁」を増やすべく、試行錯誤が続いている。

 野球やサッカーを例にとれば、競技ができなくとも熱烈なファンであることは可能だし、その業界を支える力になれる。

 この日の昼には棋士とファンの懇親パーティーが催された。イベントの観戦チケットとは別に参加費を支払う立食形式だったが会場は超満員。国内外の人気棋士たちも多数参加し、ファンとの記念撮影に応じていた。

 席上、宝塚市ならではの宝塚歌劇団OGによるショーが演じられ、雲雀丘学園筝曲部による演奏も行われた。

宝塚歌劇団OGが演じるショーに囲碁ファンだけでなく各国の棋士も魅了された(筆者撮影)
宝塚歌劇団OGが演じるショーに囲碁ファンだけでなく各国の棋士も魅了された(筆者撮影)

大熱戦となった国際ペア碁対局

 午後のメーンイベントは世界のトップ棋士による公開ペア碁対局。

 チョ・フニョン九段(韓国)と黒嘉嘉七段(台湾)ペアに常昊九段(中国)と吉田美香八段(日本)ペアの対戦。

 解説は坂井秀至八段、聞き手田村千明三段に加え、中国棋院院長も務めた王汝南九段(中国)が随時エピソードや形勢を解説。終局後の感想戦では日本で修業経験のあるチョ九段が流ちょうな日本語で対局中の心理状態などを披露し観客をわかせた。

 このほかにも指導碁や各国棋士が参加のトークショーが催され、会場を訪れたファンは「囲碁三昧」の一日を堪能していた。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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