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緊急事態宣言よりも早く教育は動いた

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 今晩にも、東京や大阪など7都道府県を対象に「緊急事態宣言」を安倍晋三首相が行うことになっている。

 これを受けて学校の休校も、さらに延びることになりそうだ。しかし忘れてはならないのは、新型コロナウイルス感染症が拡大するなかで、国の方針にだけ頼るのではなく、学校設置者である自治体や教育委員会、学校が独自に判断を始めたことである。

「基本的に学校を再開することが望ましい」と萩生田光一文科相が述べたのは、3月31日のことだった。この日までに国内で確認された新型コロナウイルス感染者数は1953例にのぼっている。安倍晋三首相が全国一斉休校の要請を行ったのは2月27日で、その時点での国内での感染者は、186例である。一斉休校要請時の10倍以上にも感染者が増えている状況で、萩生田文科相は学校再開を宣言したことになる。

 その後も感染者数は、かなりの勢いで増えつづけている。あまりの急激さに、「なぜ首相は緊急事態宣言をださないんだ」という疑問の声が高まってもいた。

 そうしたなかで緊急事態宣言がだされることになったわけだが、学校に関する動きはもっと早かった。

 東京都が都立校の休校期間を5月のゴールデンウイーク明けまでの休校延長を決めたのは、4月1日のことだった。東京23区の小中学校や幼稚園でも、新学期が始まる予定だった今月6日を前にして休校期間の延長を決めた。

 しかも、休校期間については「一律」ではない。20の区が都立高校などと同じ来月6日までとしたが、荒川区は小学校が今月12日まで、中学校が今月13日までの休校とした。大田区は、今月24日までの休校を決めている。世田谷区は6日から、生徒を分けて登校させることで密集状態を防ぐ分散授業を予定していたが、急遽、休校延長に切り替えた。

 大阪府も4月3日に、府立校の5月6日までの休校延長を決めている。同じ日に大阪市は、市立の小中学校と幼稚園を8日から19日までの休校・休園を決めた。

 一律ではなく、それぞれの判断による対応がすすんでいるわけだ。これは画期的なことだといっていい。

 そもそも休校は、安倍首相が2月27日に突如、一斉休校を要請したことからはじまった。それを受けて翌日の28日に文部科学事務次官名による「通知」がだされ、これに従ったかたちで全国の学校が休校に突入していった。

 しかし、これに全部の自治体が盲従したわけではなかった。島根県や埼玉県、京都府伊根町や沖縄県石垣市などの自治体が、休校措置をとらなかった。政府や文部科学省(文科省)の指示に従わなかったのだ。上意下達が常態化した日本において、これは注目すべき動きだった。

 緊急事態宣言の前に休校延長を決断する自治体があったことも、教育の場で上意下達が通用しなくなっていることを示している。新型コロナウイルス感染症によって、上意下達が絶対でないことを日本の教育関係者たちは気づいたのかもしれない。教育に必要なのは上意ではなく、現場を理解しての判断でしかない。

 上意を待つ姿勢が無くなったわけでもない。自ら判断せずに、上意を待ってからでなくては動けない自治体関係者や学校関係者が少なくないのも事実である。そのほうが楽だからだ。

 それも、これから徐々に変わっていくかもしれない。自ら判断して動くことの重要性を、忘れてはならない。新型コロナウイルス感染症による教訓として、教育関係者は重く受け止める必要がある。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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